出逢い
父は多くを語る人ではなかった、そのため母との思い出もほとんど聞くことはなかった。
「父も、私の父もこの指輪で母にプロポーズしたのでしょうか?」
ダーマは思い出し笑いをしながら「もう、大変だったのよ。旅から戻るなり『妖精に出会った!』『彼女の目を見た!魔法にかけられた!』ってね」
叔母の話しではこうだ、1人旅の途中、落馬し動けないでいたところを近くの村の女性に助けられ彼女の綺麗な深い緑色の瞳に恋をしたと
介抱してもらったほんの数日で二人は互いに惹かれあっていった、しかし名もない小さな村の女とそれなりの身分の父が一緒になると言う事は二人が強く望んだとしても周りが許さなかった。
「叔母上、あなたも反対されたのですか?」ピーターはイタズラに聞いた。
「もう…意地悪な質問をするのね!兄さんに似たのかしら!」そう言ってダーマはピーターの肩をピシャリと叩いた。
「最初は反対したわ。仕方がなかったの、彼女は…あなたのお母様は体が弱く…何て言えば良いかしら…」彼女は言葉に迷っていた。
「子供が産めないかもしれないってこと?ですか?」
ダーマは小さくうなずいた。
「でもね、二人の思いは想像以上に強かったわ、そんな二人を見ていると『運命なんだ』と思えて、…まぁ兄さんはハンサムだったから色目使って媚びてくる女たちよりは数万倍素敵な女性だったのよ」
「結局はまわりが根負けして結婚を承諾したの。だって兄さんったら『彼女と結婚出来ないのなら!僕は一生誰とも結婚しません!』って!父も母もこの言葉には慌てていたわ」
自分の知っている父とはイメージが違いすぎていた。
「あなたは愛されていたわ、兄さんとお姉様の宝物なの。私にとっても大事な家族」
そう言うとダーマは「 あなたが心から愛せる人が現れたら、守りたい人が出来たらこの指輪を渡しなさい」とピーターのおでこに優しくキスをした。
それは叔母上の愛であり、同時に父そして母の愛でもあった。
ピーターは思い立ったように「…叔母上、こちらへ来る前美しい森のふもとに街があったのですがご存知でしょうか?」
彼女は少し考えてから「 えぇ、その街なら2、3度行ったことがあるわ。すごく豊かできれいな街よ。たしか立派なお屋敷があって、そこのお嬢様はとても美しいと評判だそうよ、突然どうしたの?」
はやる気持ちを抑え「申し訳ありませんが急用を思い出したので失礼させて頂きます」
呆気に取られるダーマをよそにピーターは帰り支度を始めた。
「あと、重ね重ね申し訳ないのですが、あなたへ渡して欲しいとお預かりしている物があるのですが、鍛冶屋のニックのおばあさんからです」
「まぁ、おばあさんお元気?長い間お会いしてないわね」
「元気ですよ、彼女は村で一番元気です」
二人は顔を見合わせ笑った。
「預かり物って?」
ピーターはカバンからブランケットを取り出すと彼女へ手渡した。
「まぁ!なんて素敵な刺繍なの!それにとても温かそうだわ」
「申し上げにくいのですが…そなブランケットを私に譲って頂けないでしょうか!?」
まだ自分の物になっていない物を『くれ』と言われ始めは困惑していたダーマもブランケットから焚き火と草花の匂いに混じって優しいく香る香油の匂いに気づくと
「持って行きなさい」
とブランケットを手渡した。
女のカンはほんとに鋭いものである。




