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母の教え

使い込まれた剣の柄はエマの小さな手によく馴染んでおり、そこにはランドール家の紋章と彼女が好きな草花が装飾されていた。


それはエマの宝物。

母親のケイティがエマの誕生日にプレゼントしたものだった。


「母親が娘に剣を贈るなんて!」

さぞや周りの人々は驚いた事だろう。

普通母親から娘に贈るプレゼントと言えばレースの美しいドレスや流行の靴と決まっていたからだ。


しかし彼女は違った。

彼女は、ケイティは少し変わっていた。


「エマよく聞いて。女だからって男の人に頼ってばかりいてはダメ。イザと言う時には自分の身くらいは守れるようになりなさい」

そう言って彼女は剣を手渡した。


剣だけではない、彼女は自分の持っている知識や技をすべてエマに教えた。


そして最後にいつもこう言った

「この知識や経験はすべてあなたの財産になるの。誰にも奪われる事のない財産よ。素敵でしょ」


彼女は母として、1人の人間として、生きてる間は誰にでも訪れる困難の数々を可愛い娘のエマが、強く乗り越えていけるようにと願っての事だった。


母親譲りの負けん気と好奇心、父親に似た身の軽さと勘の鋭さを兼ね備えたエマの剣の上達はめまぐるしいものであった。


今ではその辺の男達がかなわないほどの腕前である。


そんな思い出の詰まった剣を握りしめエマは森を歩き続けた。


そして小さな湖近くの少しひらけた場所へ着くと空を見上げコートを脱いだ。


《夜明けまではまだまだ時間があるな…》


近くの木へコートを掛け大きく深呼吸をしたあと剣を握り直し目を閉じた。


今夜は月が細く森にほとんど光が届かない、そんな夜はかすかな物音と物の気配が頼り。


静かだと思ってる森も目をつぶり耳を澄ませば聞こえてくる。

動物や草木の、そして大地の息づかいが。


そんな彼等の眠りの邪魔にならないよう今夜は不意に落ちてくる木の葉を剣の相手に選んだ。



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