第6章 冒険者始めました
俺たちの『デリュオン』への旅はかなり順調である。
途中『魔獣』に襲われることは多々あるが、基本的に雑魚の部類に入るものばかりなので、一緒に『デリュオン』に向かうために行動している奴らにやらせる。
短槍を使うレイ、片手剣に盾というオーソドックスな戦士の装備で最年長のオルス、ナイフと弓を使う気の強い女の子エメリア、線が細い中級までだが魔法を使うリュート、斧を振るう脳筋なシュツルムの5人である。こいつらはうまく連携を取り合い、苦戦する場面もあったが、大きなけがすることもなく、無事に倒していった。レベルが上がったと喜んでいる姿はかなり和んだ。
それなりに進み、明日には着くというところまで行ったときに俺の『直感』が反応した。
後ろを振り返ると、鈍い灰色のイノシシがいた。
雰囲気からして中々やばそうである。レイにこいつの正体を聞いてみる。
「こ、こいつは『ファクザム』!!」
「なにそれ?」
「森の主とも言われている『魔獣』です!物理攻撃はもちろん、魔法攻撃に対しても耐性のあるんです!!」
「ふ~ん」
俺はナイトを鞘から抜く。正直に言えば、俺はこいつに対してさほど脅威を感じていない。
「ブギャアアアアアアアア!!」
そんな咆哮と共に突っ込んでくる。スキルの『見切り』を発動させる。相手の攻撃軌道が赤い線として見えている。俺はそこから離れればいい。最小限の動きで相手の攻撃をよける。木にぶつかり、それだけで木はへし折れてしまった。絶対当たらないようにせねば。
『ファクザム』は振り返りもう一度突進しようとする。さすがにもう1回攻撃させてやるほど俺も甘くはない。瞬時に横に移動し、蹴り上げる。さすがに重すぎて少ししか持ち上がらず、しかし骨が折れる手ごたえは確かにあった。そしてそのまま叩き切るためにナイトを振り上げ
「こいつの毛皮は高く売れるのでできる限り毛皮は傷付けないように!」
ナイトを峰に持ち替えてから振り下ろした。
断ち切れなかったが、きっちりと手ごたえがあったので確実に殺れた。
そのあとは、毛皮をきっちり剥いだ後、肉をみんなでおいしく食べた。
全員が思わず叫んでしまうほどうまかった。
翌日、俺たちは無事に『デリュオン』に到着した。
「おおおおおお……ッ!」
見渡す限り人人人人人、である。しかも中には獣耳が生えたものやリザードマンや角の生えたものもいた。そういうものは全体の4割ほどである。
まさにファンタジー!『アレストア』に来て本当によかった。
「えっと、エーイチさん?」
「おお、悪い悪い。こんなに人を見るのは初めてなんでな」
「そうだったんですか」
「んじゃ、さっそく冒険者登録しに行こうぜ」
そういって馬車を進ませ、この町では大きい部類に入る建物前で止まる。
俺たちはぞろぞろとその建物の中に入っていく。
入口手前は酒場のようなものになっており、様々な人間がいる。
奥には受付が数か所あり、その隣には文字が書かれた紙が大量に貼ってある。数人がその前に立ち止まり、その紙の中身をじっくりと見ている。
人数が多いので、数人で別れて受付の前に行くことにした。
俺とルシルは猫耳を生やした受付の人の前に立った。
「にゃあ。本日は何のご用でしょう?」
にっこり笑って問いかけてくる。しかし、「にゃあ」はあざとすぎやしないか?まあいいけど。
「俺とこいつの冒険者の登録をしたいんですが」
「ああはいはい。わっかりましたー。しょしょおまちをー♪」
そのまますごい速さで奥に引っ込む。なんというか元気な子だな、と思う。
すぐに猫耳少女は戻ってきた。何やら手のひらよりも少し大きいだけの金属板を持ってきた。
「はいは~い。この機械の中に手を突っ込んでくださ~い。すぐ終わります。にゃあ」
俺とルシルがその金属板の上に手のひらを乗せる。一瞬発光したあと、大きさが変わっていく。
大体人差し指ぐらいの大きさで真っ白な金属板になった。名前も彫られている。
「では、冒険者についてご説明します♪」
冒険者は色ごとに分けられており、下から順に白、黄、橙、赤、緑、青、紫、黒の順である。
功績を上げていくごとに色は上がっていく。ちなみに白から赤までを下位4色、それら以外のものを上位4色と呼ばれている。
ギルドに来る依頼はこの階級と同じに分けられている。
そして冒険者は自分の色より一つ下か同じ色のものしか受けられない。
これは下位の冒険者を救うための処置だという。まあそりゃそうか。自分より上の人がそいつの実力より下のものを受けられたら、下位の冒険者は何もできなくなる。
冒険者はそのギルドの系列の店で冒険者のライセンス(さっきの金属板)を見せれば、商品を安くすることができる。ただし、ライセンスを悪用した場合、それの永久剥奪という厳しい罰が待っている。
「これくらいですかにゃあ」
「成程なるほど、よくわかりました」
「あっ、そうにゃ。明日はこのギルドの訓練場に来てくれにゃ。新人に対する訓練があるんだ。これ、絶対参加だからね」
「はいはい」
その日は系列の宿泊施設に行き、ぐっすりと寝た。
翌日。言われたとおり、ギルドに行く。俺の後ろにはレイとルシルがいる。ちなみに他の奴らがいないのは、彼らに一緒にパ-ティーとしてやっていかないかと聞いてみたところ、レイを除く4人は俺と一緒には行かないといったからだ。まあそういうんだから仕方ない。俺は基本去る者は追わず、来る者は拒まずだからだ。訓練場は受付のさらに奥にあった。
訓練場に入る前に装備をすべて外される。そして運動がしやすい服を支給される。
行くと既にほかの冒険者たちがいた。和やかに談笑している。混じって話をしてみ
「せいれーーーーーーーーーーーーつ!!!」
凄まじい声が訓練場に響く。
とっさに整列してしまう。
のっしのっしとこっちに近づいてくる男性。威圧感半端ねえ!レイはすでにその威圧感でノックアウト状態だ。心臓の悪い奴は死んでしまうかもしれん。
「いいか!お前らは今は何の役にも立たない屑だ!それをわざわざ使えるように鍛え上げるのだ!大きな声で感謝しろ!!」
「「「あ、ありがとうございます」」」
「声がちいさーーーーーーーーーーーーーーい!!!」
「「「あっありがとうございます!!」」」
凄まじいしごきが始まった。ランニングから始まったのだが、少しでも遅れると鉄拳をプレゼントされた。まあ、俺とルシルはそんなプレゼントもらわなかったのだが。
その後、筋トレやストレッチし、実戦形式の訓練をした。
1番手は俺だった。
「本気でかかってこい!」
「……いいんですか?」
「ああ、遠慮はいらん!」
ぶっちゃけると、俺はナイトを装備しなくても『闇の支配者』や『歴戦の戦士達の技』を使える。
いたずら心が芽生えこの教官を叩きのめしてしまおうと決めた。
「では……行きます!」
身体能力はスキルと称号によって格段に強化されている。一気に近づき、木刀を振り下ろす。直撃コースだ。しかもまだ反応していない。確実にやれる。が、
「ふん」
カアン!そんな音と共に木刀がはじかれる。
「「「は?」」」
これは全員の声とかぶった。なんせ視認することすら難しい一撃を簡単にはじいて見せた。
俺はそのまま連撃を叩き込んでくが、すべて避けられるか、弾かれた。
距離を取るために思いっきり後方に離れ、そして『闇の支配者』を使い『闇の投槍』を3つほど展開。右腕を振ると、一斉に飛んでいく。
「ほお。面白い技を使うな」
教官は飛んできたものを軽々と躱わした。
俺、絶句。瞬時に近づき木刀を振り上げる教官。
とっさに木刀を上に掲げる。
「あまいわあ!!」
それの軌道は面から胴に代わり、俺の体を打ち据える。
意識が飛びかけるが、踏みとどまり、必死に意識をつなぎとめる。
「よくもったな!ほめてやろう!」
「そっ、りゃあ、どうも!」
俺はこの後動けなくなるまで模擬戦をさせられた。
ちなみに教官はルシルとも互角にやって勝利した。すごすぎるだろ……。
「お前は見所があるな!また明日もしごいてやろう!」
そんな声を聴きながら、泊まっている宿に戻り、ご飯を食べ、シャワーを浴びた後、ベットの上に寝転ぶ。体力が全く余っていない。本当にやばい。これがあと6日あるのかお思うと更に憂鬱になる。
本当は武具屋に行ってみたかったのだが、そんな体力は残されていなかった。
これがひと段落ついたら行こうと思う。
次回、武器屋に行ってみます
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