「ごめんね」
猫が死んでいた。
犬が死んでいた。
鳥が死んでいた。
猿が死んでいた。
猪が死んでいた。
「久しぶり、律子だけど。覚えてる?」
「どちらさまでしょうか」
「ひどいなあ、あたしの知ってるあんたはもっとひどいはずなのに」
「……」
「現状報告。新しい学校で、ちゃんとやってるよ。友達ができた。成績は良好。ふふ、さすがあたしといったところかな。ダイエットも成功してる。さっすが!」
「嘘だね」
「なんで?」
「見栄を張ろうとしても、意味ないよ。律子があまり人に理解されないことを知ってる。律子の成績が最下位だったこともしってる。ダイエットしようとして続かないことも知ってる」
「もう、いやだなあ。何のこと?」
「おやすみ」
「あ、ちょっと!」
「……私は、普段通りの律子が好きだったんだけどな」
「え、ちょ、××、」
彼女の言葉を遮った。女声の続きを紡いだのは、繰り返される電子音。
殺人鬼がいた。
「おー、いたいた、お嬢さん」
「どうも」
丸坊主だった。かなりのイメージチェンジを目の当たりにしながらも、ちゃんと返事をするあたり、私はけっこう人間として出来ているのかもしれない。いや、返事をしたからこそ、人間じゃないのか。
「ふむふむ、てってれてれてれてー☆どーん。お嬢さんは、人形から人間へ進化しました!」
ふざけていた。素早くUターンし、早歩きどころか走って逃げると、その後ろを丸坊主が追いかけていた。
「ちょっとー、逃げなくてもいいじゃないかー。君はもう、人間なんだよー」
通行者が、何だそれと思いながら、殺人鬼を見ていた。
「ちーす」
「おー」
隣の席の男子に返事をして、鞄の中身を整理する。
「お前ってさぁ、もっと怖いイメージがあったわ」
「ふーん。君ってさぁ、もっとチャラいイメージがあったね」
「くそう、この敗北感」
ボーっと窓の外を見ていると、男子が席を立った。椅子によって、音が響く。そこでようやく、この教室に私たち以外、誰もいないことを再確認した。
「俺と付き合ってください」
「何かの悪い冗談かな」
「分かってて言うのかよ」
でも、そういうところ優しいよな。
男子はそう呟いて、悲しそうに笑ってから教室を出て行った。
殺人鬼がいた。
「もうストーカーみたいなことしないでください」
「おっと、ボクには彼女がいるんだよ」
「まじかよ」
ファミリーレストランでジュースを注文し、殺人鬼と適当に話す。
「で、何ですか」
「うん、昇格おめでとう」
「は?」
「人形矢印人間」
「敢えて矢印って言うところがメンドクサイな」
「当たり前だろ、分かってやってるんだから」
殺人鬼は腕を伸ばし、机に影をつくりながら人差し指を私の額にあてた。丁寧に整えられた爪が少々痛い。
「ボクは、朝の君を見ていたんだ」
その言葉に、私は思いっきり顔を歪めた。
「趣味悪いですね」
「ふふん、わざと見たんじゃないもんね」
「言い方きもいです」
「まさか、死骸を全て埋めるとは思わなかったよ」
「……」
「ほら、」
人間に、レベルアップ。
私の心はゲームか、と突っ込みそうになった。
中途半端でごめんなさい。短くてごめんなさい。謝る事しかできない。
この連載は、「私」の心の変化をあらわしています。そのため、こんな形でしか終わることが出来ません。他にも方法はあるのでしょうが、このほうが、心の変化がわかり易いと思いました。
ありがとうございました。




