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カラオケにて
「単刀直入に言おう。ボクは殺人鬼だ」
「知ってますよ」
猫の死体を見つけたあの日、私は殺人鬼に出会った。ナイフを向けられて、殺されるんだろうと思っていたら、殺されなかった。よく分からない。
「ボクはね、泣き叫ぶものが好きなんだ。犬でも、玩具でも、なんでもいい。とにかく、叫ぶもの」
「狂ってますね」
気遣いもなく言ってみると、彼はにやにやと笑っていた。なんだこれ、気持ち悪いぞ。
「仕方ないんだよ、これがボクなんだから」
その言葉に、一瞬、身体が反応する。
少し溜まった血。
小さな身体。
動かなくなった、猫。
「お先に失礼します」
いまだに意地の悪い笑みを浮かべる殺人鬼を置いて、私はあの日いた場所へ向かった。
猫があった。ぎりぎり猫と呼べるものが。
「……」
骨が現れている。野良犬にでも、食い散らされたのだろうか。
「……」
ハエが集っている。耳障りな音が聞こえる。
「……」
死臭がする。鼻を刺激する匂い。
私は、何も出来なかった。
術が、ない。
分からない。分からないものが分からない。