「」
猫が死んでいた。
「……」
私はなにもしなかった。
なにも感じなかった。
そのあと、自分がなにをしたのかよく覚えていない。
「おはよっす」
「おー」
学校にて。
隣の席にいる男子に適当な返事をすると、彼はすぐに話しかけてきた。
「なあ、このあたりに連続殺人犯がいるってよ」
「連続……ああ、あれか」
最近は各地で事件が起こっているため、彼の言う「殺人犯」を理解するのに少しかかってしまった。
「こえーよなぁ。ま、気にしなければいいだけか」
俺、陸上部だしなっ。
ニカッと笑って言う彼を置いて、私は教科書を読んだ。
「夜は危ないですよ、お嬢さん」
「お嬢さんと言われる程、か弱くないんです」
アイスが欲しいと思ってコンビニを目指していたら、目の前に人が現れた。私より背が高い。肩幅が広い。結構大柄のようだ。そして右手には、ぎらりと光るナイフ。
「申し訳ないけど、死んでくれるかな」
「どうぞお好きに」
運動は苦手だ。どう見ても、勝ち目がない。ここは抗わないほうがいいだろう。醜いのは、嫌いだ。潔いほうがいい。好きな体勢で死なせてくれるかもしれない。
思い浮かぶことは、どうでもいいことばかり。私は兄が嫌いじゃないのに、ちっとも兄のことが考えられない。走馬灯も、なにもない。
「……つまらないな」
「はあ?」
「やめておこう。君はつまらない。つまらなさすぎる。殺してくれと頼んでくるやつのほうがよっぽどいい」
ボクのことは、他言しないでね。
私は彼の言葉を最後まで聴くことなく、コンビニへ向かった。
どうでもいいのにな。どうにでも、なってくれ。