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環境が大事!

作者: 月森香苗
掲載日:2026/09/09

全体的にほのぼの。転生、ざまぁ要素あり。

 シュテファンは第一王子であり、十歳の頃から正式に筆頭側近と護衛の近衛騎士を宛てがわれていた。

 筆頭側近は二十歳上、近衛騎士は十歳上でどちらも王族の傍に控えるのに相応しいと見込まれた人物達で、シュテファンは絶対的な信頼を寄せていた。

 騎士のレガロはシュテファンも憧れるほど体格が良く剣の腕も良く、鍛錬の時間にレガロが手合わせをしているのを見ると興奮したものだ。

 豪快な立ち回りは迫力があるし、剣が使えない場所では体術が重要で、何人もの騎士を放り投げる姿に喜びすぎてシュテファンが熱を出したこともあった。

 筆頭側近のヨハネスはレガロとは逆に体格としては痩せている方だが、最低限の護身術を修めている。その上彼の武器は口であり、政務や外交の助言や貴族との交渉を行うのが側近だと分からせてきた。

 諫言に関しても不敬を恐れず間違いを正す姿はシュテファンが師として尊敬する程だった。



 シュテファンの婚約者であるジュリエッタは転生者であった。とはいえ、彼女はゲームをしたことは無いし、小説も文学こそ読むがライトノベルのようなものを読んだことはなかった。漫画は少年漫画が多かったので、異世界転生は理解しても、乙女ゲームの世界とかそんなのは分からなかった。

 それが良かったのか、異世界だなぁ。と漠然と思いながら世界に馴染んで育ったジュリエッタは筆頭侯爵家の娘としてシュテファンの婚約者となり、良い関係を築いていた。

 シュテファンやジュリエッタよりは年下の子供を持つヨハネスは、二人の仲が拗れないように調整するのも役目だったが、穏やかな性質の二人は性格も話も合うようで円満な関係を維持していた。

 ジュリエッタは前世の何となくの記憶を持っていたので精神的に少しだけ大人びていたのも良かったのだろう。

 いかにレガロが素晴らしい騎士なのかを熱心に語るシュテファンに「まあ、素敵です。わたしもその訓練がみたいですわ」とおっとり返す余裕があった。

 この年頃の令嬢なら、自分の話を聞いてくれないことに不満を抱いたり、騎士など野蛮とか言いかねなかったが、ジュリエッタは話を聞き同調した上で、シュテファンと同じものが見たいと言った。

 無理をしているわけではなく、自然にそうするのでシュテファンは大喜びで予定を立てることになる。


(殿下は可愛いわね)


 シュテファンの子犬のような可愛らしさをジュリエッタはとことん愛でていた。

 勿論、シュテファンがしてはならないことをした時はしっかりと注意をしたが、闇雲に怒るだけでは反発されることをジュリエッタはよく知っていた。

 まずは心配したことを告げる。その上で何が駄目だったのかを柔らかく伝えるのだ。罪悪感を刺激しながら。

 頭ごなしに怒るよりもそちらの方がしっかりと効果があった。



 大人二人と内面が大人の婚約者のお陰で、シュテファンは少しばかり素直で可愛いところがあるものの、王族としての自覚をしっかりと抱いた王子として成長した。

 多少の悪意を経験しないでいては危ないからと、何度か貴族の悪意にも触れてきたシュテファンは、かなり立派に育ったと言える。

 なので、貴族との交流を深めるために通う学園で、わけの分からない男爵家の令嬢が体当たりしてきそうになったとか、移動先に度々現れるとか、馴れ馴れしく話しかけようとしてくることに対して不信感を抱いた。

 レガロには護衛強化を、ヨハネスには男爵家の内情の調査と警告を頼み、ジュリエッタにはそばにいて離れてはだめだよ、なんて堂々と隣にいてもらえるようにしたのだ。

 シュテファンは婚約者のジュリエッタが大好きだ。

 第二の父のように尊敬出来るヨハネス、兄のように逞しく格好良いレガロ、可愛くて綺麗で聡明で優しく、それでいて芯のあるジュリエッタのお陰で第一王子として、いずれは王太子、国王に相応しくあるよう頑張ろうと思えたのだ。

 シュテファンには同じ年頃の貴族家の子息が友人として紹介され、学園に入学する前から交流をしていた。

 しかし、彼らは揃いも揃って男爵家の令嬢を持て囃し、剰えシュテファンに近付けようとした。

 王制で身分は切っても切り離せない。

 例えどんな身分のものでも人として侮辱してはならないが、それはそれとして、身分の違いにより対応を変えるのは当たり前である。

 王族のシュテファンと侯爵家の令嬢であり未来の王族となるべくして研鑽を積んでいるジュリエッタはただの貴族とは異なる。

 彼らが男爵家の令嬢とどのような関係になろうともそれは彼らの責任だが、シュテファンに近付けることは違う。


「殿下はよく学ばれておりますね」

「ヨハネスの厳しい授業のおかげだよ。やはり信頼出来る大人の側近は大事だね」

「陛下もお若い頃は我々の師である方にそれは厳しく扱かれておりましたよ」

「父上も同じなんだね」


 王族のみが使える特別なサロンで休息を取っていたシュテファンは、穏やかに微笑むジュリエッタに声を掛けた。


「ジュリエッタは何か困っていることはない?」

「今のところは大丈夫ですわ。一部の方を除いて少しずつ統制が取れ始めておりますの。流石に父の政敵のお家の方は難しいのと……後は、例の男爵家のご令嬢ですわね」

「ああ、彼女か……ヨハネス。どうすれば良いと思う?」


 家には警告をしたのだが、態度が改善されることはない。

 これ以上、悪化すれば最悪処罰しなければならなくなるのだが、本人が理解していないのが一番の問題だろう。

 すっかりと骨抜きにされた令息達はとっくに側近候補どころか友人ですらない。彼らの家には通達がなされているので、後は家でどうにかすれば良い。

 新たなる候補は学園を卒業している、もしくは卒業間近で男爵家の令嬢と関わりのない者で探している。

 年上に囲まれていたシュテファンに同年代の令息とは相性があまり良くなかったのかもしれない。



 男爵家の令嬢と彼女に骨抜きになった令息達は退学した。

 彼女の言動は理解しがたく、「オトメゲーム」「コウリャクタイショウ」「ヒロイン」など未知の言葉を叫んでいたけれど、二度と会うことはないだろう。

 シュテファンへの執着が行き過ぎており、遂にはわけの分からない薬をシュテファンに掛けようとした。

 ジュリエッタが身を挺してシュテファンを抱き締め、更にその二人を守るように立ち塞がったレガロのお陰でシュテファンは無事だったが、王子に危害を加えようとしたことは事実である。

 即刻取り押さえられた令嬢。そしてそんな令嬢を近付けるために彼女を囲って姿を見えにくくさせて接近を許した令息達が許されるはずもない。

 全員が貴族籍を剥奪され、それぞれ罪を償う為に労役が課せられた。

 特に男爵家の令嬢だった娘は、海に浮かぶ島にある収容所に送られた。海賊ですら避ける島で、脱出は不可能。

 仮に筏を作ったとしても獰猛な大型魚類が生息している海だ。

 脱獄しようと思うものがいない孤島の収容施設に送られた娘がいつまで生きていたのかは調査官の記録にしか残っていない。


「これで落ち着いて学業と人脈作りが出来るね」

「ええ。もうわたくしがお傍にいなくても大丈夫ですわね?」

「えっ!? え、いや。その、ジュリエッタは私も一緒なのはいやなの?」

「そんなわけありませんわ。殿下のお傍にいることはわたくしの喜びですもの。ご迷惑でなければこれからもご一緒したいですわ」

「そうして!」


 にぱーっと笑うシュテファンの愛らしさに癒されるジュリエッタ。そんな二人を微笑ましく見つめるヨハネスとレガロ。

 この国では、王族を同年代の子供だけで囲ませるようなことはない。必ず年長の側近と実力ある護衛騎士を置き、王族を諫め、導く役目を担わせる。それがこの国の王族教育だった。


 シュテファンは恵まれている環境に感謝しながら、愛しい婚約者、尊敬出来る側近、頼りなる護衛騎士と共に穏やかな日々を過ごしていく。

よくある乙女ゲーム的な世界観だと、側近候補が同い年だけど、ちゃんとした側近は?ごえいは?となってたのです。

この話では、同年代の側近候補は筆頭側近のヨハネスに扱かれることになります。

ナイナイされた子息達は扱かれる前に脱落しました。

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― 新着の感想 ―
護衛が護衛の仕事してないヤツとか婚約者に護衛がついてないとか割と意味不明なの多いよねえ
婚約者ちゃんは男爵令嬢の言葉を聞いて「あ、これやっぱりゲームなんだ」っと密かに思ったよね。 島流しされた男爵令嬢もきっと「これ悪役令嬢が幸せになるパターンだったかぁー!」って今頃分かったはずw
推定ピンク髪女は親も連座で公開処刑でいいような。 魔法の惚れ薬とかいう課金アイテムだろうけど、王族に害を与えようと行動した訳だしね。
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