消えるその瞬間まで
推しがいる、私の心の糧、私の心の潤い。
一時期は解散騒動もあったけれど、今ではすっかり仲のいいグループになっている。
ネットニュースを見ると、推しのグループが記者会見をするという、解散騒動は鎮火したばかりだから、他になにか不祥事があったんだろうか?
でもどんな事があっても、私は推しを推すことを辞めれない。
初めて推しに出会ったのは、とあるショッピングモールのイベント特設ステージだった、推しはキラキラしていて人生に投げやりになっていた私は、一瞬で心を奪われた。
曲を聴いてもっと好きになった。
それからは推しに夢中だ、もし推しがいなかったら生きていけないだろう。
生き甲斐なんだから。
ライブの日私は声が枯れるほど叫んだ、こんなに夢中になれるグループを作ってくれて、支えてくれたみんなに感謝しかない。
ライブが終わってしばらくの間は、毎日のように気分が良かったけれど、また推しの供給が足りなくなってきた。
次のライブ予定はしばらくない、ずっとイヤホンをして曲を聴くことにした。
仕事中はばれないように、片耳イヤホンだ、特に気に行っているのはライブバージョン。
推しに会えた日を思い出せるから幸せになれる。
推しの記者会見が始まる。
並んだメンバーの一番端に私の推しがいた。
他のメンバーはみんな鼻水を垂らして泣いている。
メンバーの人が高速道路で事故に遭って亡くなったという。
息を飲んでメンバーを数える
あれ?全員いるのはなんで?
推しも泣いている。
けれど全員ちゃんとそこにいる。
結局よく分からない会見だった。
暫くして、夜の音楽番組が放送された
あの人が薄れている、いつも私の推しといちばん仲良くしていたジローというメンバーだ。
私はうちの推しじゃなくて良かったな、と安心した、そんなこと他のファンには絶対言えないけど。
ある日推し活仲間で会うことになった、亡くなったメンバーの事でずっと泣いている、ご飯も喉を通らないと。
たしかに彼女の目は腫れぼったく、泣いたばかりの目をしていた。
私もジローが同じ目に遭ったら、耐えられないどころではないなと感じた。
人メンバーのかけたグループがテレビに出ている、ジローと仲のいい……あれ?名前はなんだったっけ?
そう感じた瞬間彼の姿がまた一段と薄まった、何故かジローもテレビ越しにほんの少し薄く見える、ジローには何も起こっていないはずなのに。
そうしている間にもジローはどんどん薄くなっていく。
私は慌ててテレビに手を差し伸べた、差し伸べた手は薄れている。
なぜ?なぜ?
そのうちどんどん消えていく。
ジローも消えていく。
ああ、私はあっちに行ってもジローを推せるんだ。
一瞬現実に引き戻される。
きいっ。
強い衝撃が走る。
不自然な方向を向いた友達の頭が、額ごとハンドルに押し付けられていた。
クラクションは押されたまま、耳をつんざくように鳴り続けている。
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