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【1章終了】逃げ癖ハンターは立ち向かう 〜狩人の大精霊に憑依された底辺ハンターは魔物に溢れた現代で無双する〜  作者: 藤枝止木
2章 ハンター、都会へ行く

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第48話 ハンター、山奥のダンジョンに潜る(2)


 未発見のA級ダンジョンに潜って一週間が経過した。

 俺達はとある方法でダンジョンを最短経路で踏破し、広大なボス部屋に到達していた。


「グォォォォンッ……」


 ドズゥンッ!


 そして激闘の果て、体高数十mの巨体を誇るボスが、地響きをあげて地面に倒れ伏した。

 このダンジョンのボスは異形のトレントで、バオバブの木のような見た目をしていた。

 極端に太い幹の最上部には枝が密集していて、それをA級相当の膂力と速度で打ち下ろしてくる強敵だった。

 結構魔物に詳しいはずの俺が種族名を知らなかったので、おそらくは新種だろう。


「ふぅ……」


 ボスの巨体が、僅かに発光しながら空気に溶けるように消えていく。

 その様子に俺が残心を解くと、一緒にボスの猛攻を捌いてくれていたトモミンとシロがその場にヘタリ込んだ。


「つっ…… 疲れたー! タフ過ぎだよ、もー……!」


「ヘッ、ヘッ、ヘッ…… ワフーン……」


”お疲れ様! ナイスファイト!”

”なんつーか、下手な怪獣映画より現実離れした戦いだったな…… 結構デカ目のビルくらいはある巨大トレントを、ちっぽけな人間が圧倒しちまうんだもん”

”結局三十分くらい戦ってたのか? カリヤマ師匠達が強いのはいつもの事として、トレント側の耐久力も凄かった”

”切ったり抉ったりした側から再生してたもんね”


 スマートグラスに、ボス戦の配信を見ていた視聴者のコメントが流れる。

 彼らの言うとおり、今回のボス、仮称バオバブトレントはかなり厄介な敵だった。

 攻撃能力もさることながら、いくら枝を切ったり幹を抉っても瞬時に再生してしまう圧倒的タフネスを有していたのだ。

 初見のせいで対処法が分からず、試しにノルフィナに火魔法を使ってもらったりもしたのだけれど……


”トレントなのに火も効かねーんだもんな”

”あの時のノルフィナちゃんの慌て顔…… めっちゃよかった……”

”なんか、業が深い奴がいるな……”

”その後すぐに冷却戦法に変えて、それがドンピシャではまってて流石だった”


「わわっ…… ありがとうございます。頑張りました……!」


 視聴者のコメントにノルフィナがはにかむように笑い、それによってさらにコメントが加速する。

 今回のボスは火耐性か何かを持っていたらしく、火魔法は殆ど効果が見られなかった。

 ノルフィナはそこで機転を効かせ、トレントの巨体に冷凍魔法を浴びせた。

 結果、奴の再生能力と運動能力は目に見えて低下し、こうして短時間で討伐する事に成功したのだ。


「ノルフィナ、本当に助かったよ。君がいなかったら、討伐に何時間かかっていたか分からない」


「え、えへへ…… お役に立てて良かったです!」


 ノルフィナが僅かに頬を染めて笑う。その笑みを向けられた俺に、コメント欄から怨嗟の声が飛んでくるが、いつもの事なのでスルーした。


「さて、次はダンジョン核だな。サクッと回収して、地上に戻ろう」


「「おー!」」


 ボス部屋の奥の石壁には、メロンほどの大きさの魔石が埋まっていた。これがこのダンジョンの核だ。

 これを破壊、もしくは取り除くと、暫くした後にこのダンジョンは消滅する。

 俺はその大きな魔石を、傷つけないよう慎重に刀でくりぬいた。


 管理されたダンジョンに対してこれをするのは重罪だが、今回はダンジョン長から破壊許可が出ている。

 大粒の魔石であるダンジョン核は非常に価値が高く、多分今回の捜索依頼の報酬よりも高値で売れるはずだ。

 そうして核の回収を終えると、コメントの流れも大分落ち着いてきた。


”あとは地上に戻るだけやな。今回、スムーズ過ぎてRTAみたいやったわ”

”確かに。てか、一週間でA級ダンジョンを踏破って早過ぎじゃね?”

”早過ぎなんてもんじゃない。マッピングもされてないA級ダンジョンの攻略なんて、まずボス部屋に辿り着くまでに一ヶ月以上はかかる”

”だよね。でもトモミン達、殆ど最短ルートで攻略してた感じだったよね? まるでボス部屋への道が分かってたみたい”


 視聴者の指摘に、一瞬ぎくりと体がこわばる。

 実は今回、時間が無かったので少しズルさせてもらったのだ。

 A級ダンジョンともなると、その深さは百階層に迫り、各階層も広大だ。

 そこで俺は、自分のいる階層全体に影の手(シャドウハンド)を伸ばし、文字通り手探りで下層への階段の位置を探り当てたのだ。

 それをひたすら繰り返す事で、今回の超短期間踏破を実現したのである。


”絶対探知系のスキルを使ってるだろ。でも、誰のだ?”

”先導してたのはカリヤマ氏だったよな? 全く迷い無く進んでたし”

”でもカリヤマ師匠のスキルって、大別すると身体強化と地魔法だろ? 地魔法系統の探知魔法ならあり得る、のか……?”

”その辺にしとこうぜ。あんまりハンターの手の内を探るもんじゃないよ”

”そーそー。本人が開示してないんだから、なんか事情があんだろ”


「みんな…… その、気遣い助かる」


 議論を収め始めた視聴者に、俺はドローンカメラ越しにぺこりと頭を下げた。

 俺のスキル、特にカオスウルフ由来のものは、バレるとちょっと面倒なことになるのだ。


 未発見の上級ダンジョンのマッピングに駆り出されたり、アイテムボックススキルを期待され、長期間探索の荷物持ち役にされたり…… 依頼の殺到が予想される。

 民間からの依頼は断れるだろうが、相手が国の場合はそうもいかない場合がある。

 ダンジョン攻略自体は好きだが、自由が制限されそうだし、何よりパーティーのみんなの迷惑になりかねない。


「ワフ……? ワンワン!」


「ん? シロ、どうした?」


 そこでシロが声を上げた。彼の声に振り返ると、ボスの巨体があったあたりに、大きめの魔石と、ドロップ品らしきものを発見した。

 拾い上げると、それはラグビーボールのような形をした茶色い木の実だった。


「これは…… バオバブトレントの木の実か……! みんな、ちょっと来てくれ!」


 初見の魔物食材にテンション高く声を上げると、みんなが何だかニコニコシアがら寄ってくる。な、何だよ。その微笑ましそうな表情は……

 気恥ずかしさを誤魔化すように木の実を割り、中の白っぽい果肉を口の中に放り込む。

 すると、果肉は舌の上でほろほろと崩れ、甘酸っぱい味わいが口の中いっぱいに広がった。


「これは…… 果実とは思えない不思議な食感だが、結構いけるな……! 毒も無さそうだ。みんなも食べてみてくれ!」


「どれどれー? もぐもぐ…… わ、ほんとだ! ラムネみたい! おもしろーい!」


「んむっ、しゅっぱい……! でも、美味しいですね!」


「ワフーン……!」


『--クスクスッ…… 火ニ強クナルヨ……』


 果肉を食べたみんなの感想に続き、狩人の大精霊かりゅうどのだいせいれいの声が脳内に響いた。

 どうやら奴の強力な火耐性を獲得できたらしい。また一つスキルを得た事に、俺は小さく頬を歪めた。


「お。師匠、もしかしていい事あった?」


「ん? ふふっ、まぁな。地上に戻ったら話すよ」


 ニコニコと問いかけてくるトモミンに笑い返し、俺達はボス部屋を後にした。


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