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【1章終了】逃げ癖ハンターは立ち向かう 〜狩人の大精霊に憑依された底辺ハンターは魔物に溢れた現代で無双する〜  作者: 藤枝止木
2章 ハンター、都会へ行く

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第46話 ハンター、再び偉い人と会う


 その後俺達は、レイ氏のパーティーと一緒に市街地を走り回った。

 途中からダンジョン災害対策局所属のハンター部隊も出動し、魔物はどんどん数を減らしていった。

 しばらくして事態は無事沈静化し、俺達はひとまずスカイツリーの根元にある広場へと戻った。周囲には対策局の部隊と、彼らが避難させた人々もいる。


「全く。これから甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)のダンジョンに向かうところでしたのに、とんだ邪魔が入りましたわぁ」


 レイ氏がぶつぶつと文句を言う。それで街中なのにフル装備だったのか。


「今日はもう、みんなとホテルにしけ込んでしまいましょうかしら…… トモミン、ノルフィナ。あなた達も一緒にどう?」


 自身のパーティーメンバー達を抱き寄せながら、レイ氏がトモミン達に熱っぽい視線を送ってくる。

 やっぱりすげーなこの人。美女を抱き寄せながら、他の美女を口説いてるよ……


「あはは、それはやめとくね! 僕ら休暇の途中だし! ノルフィナちゃん。まだスカイツリー見終わってないよね? 師匠と一緒にもっかい登る?」


「えっと…… いえ、大丈夫です。十分楽しませてもらいましたから、トモミンと交代しますね。あ。でもこの騒ぎだと、今日はもう営業終了かもしれませんね……

 シロと一緒にドッグランという所にも行ってみたかったんですが、それも難しそうです」


「ワフッ!? クゥーン……」


 ノルフィナの言葉に、シロがガックリと項垂れる。俺は彼の頭をわしゃわしゃと撫でた。


「残念だったな…… しかし、確かにこの状況じゃあ観光どころじゃないだろう。近くの支援局に寄って、少し情報を…… ん?」


 今後についてみんなで話していると、対策局の隊員が一人、こちらに近づいてきた。

 頭から足元までを覆う黒っぽい戦闘服に、銃器型の魔杖を装備している。特殊部隊感があって、結構威圧的な見た目だ。

 彼は俺たちの前で立ち止まると、ヘルメットを脱いで敬礼した。


「ご苦労様です。自分はダンジョン災害対策局所属のハンターで、宮内(みやうち)と申します。今回は魔物の駆除にご協力頂き、誠にありがとうございました」


 ヘルメットの下から現れたのは、坊主頭の精悍(せいかん)な男性だった。

 この顔と名前、ダンジョン庁の公式チャンネルで見たことがある。強力な火魔法を操る、対策局所属のS級ハンターだ。

 さっきの戦闘でも、他の隊員が仕留めたストーンボムの自爆を、火魔法による干渉で完全に抑え込んでいた。


「S級ハンターのレイですわぁ。本当に感謝してほしいですわよ。まさかタダ働きじゃないですわよねぇ?」


「レイさん…… あー、同じくS級ハンターのカリヤマです。そちらこそ、お勤めご苦労様でした。しかし、一体なぜこんな街中に魔物が……?」


 そう答える俺達に、宮内さんは首を横に振る。


「原因については現在調査中でして、この場ではなんとも…… ただ本件に関しては、民間のハンターの方々にも協力を仰ぐよう上から指示があった所であります。

 ご高名なお二人には是非お力をお借りしたく、まずはお話だけでも聞いて頂けないでしょうか。都民の安全のため、どうか」


 宮内さんがキビキビとした動作で頭を下げる。しかしその表情からは、当然協力するよな? という圧力が感じられた。

 みんなの方を振り返ると、全員が賛同するように頷いていた。


「了解しました。この状況を解決しないと、観光どころじゃありませんし」


「東京には可愛らしい女の子が沢山いますし、彼女達を守るためにわたくしも一肌脱ぎますわぁ。それで、お話とやらはどこで聞けるんですの?」


「--ご協力に感謝致します。では、こちらへご同行願います」


 観光とか女の子のために快諾した俺達に、宮内(みやうち)さんはやや憮然とした表情で背を向けた。


 そうして俺達が連れてこられたのは、霞ヶ関に建つダンジョン庁の庁舎だった。昨日ぶりの来庁である。

 そのまま大きな会議室に案内されると、中にはすでに多くの人間が座っていた。

 ダンジョン庁のトップである岩崎(いわさき)長官や官僚らしき人々、対策局のハンターに、民間の上級ハンターらしき連中もいる。

 対策局のハンター達を除いて、昨日の受章式で見た顔が殆どだ。そのせいか、シロを連れた俺達への驚きの声は少ない。


 最後だったらしい俺達が席につくと、岩崎(いわさき)長官が席を立って会議室の中を見渡した。

 ざわついていた室内が、彼の静かな存在感に静まり返る。


「皆様、ダンジョン庁長官の岩崎です。まずは先ほどの突如発生した魔物への対処にご協力頂き、誠に--」


「前置きはいいですから、本題を話して下さらない? 急いでいるのでしょう?」


 長官の言葉をレイ氏が遮る。彼女、どうやらかなりせっかちらしい。宮内(みやうち)さんがレイ氏を睨むが、本人はどこ吹く風の様子だ。


「ははは、そうですね。では率直に。皆様には、先ほど隅田川沿岸で暴れ回った魔物について、その出所の調査などをお願いしたいのです」


 ざわり。岩崎(いわさき)長官の言葉にハンター達がざわめく。協力するのはやぶさかではないが、調査か……

 全員の疑問を代表するように、一人のハンターが手を上げた。


「あの魔物が湧いてきた未発見ダンジョンを探せって事だろうが…… 場所の目星くらいはついてんだよな? 捜索範囲が東京周辺全域とかだったら無理だぜ?」


「ええ、勿論。現段階では、件のダンジョンは甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)の何処かにあると目されています。

 実は、過去にも同様の事象が確認されているのです。周囲にダンジョンの無い都市部の河川から、いきなり魔物が現れるという事件が。

 その事件の原因は、上流に発生した未発見ダンジョンでした。そこから湧き出した魔物が、川を下って都市部に流れ着いたのです」


 長官の説明に、別のハンターが納得したように頷く。


「なるほど…… 隅田川を上流へ辿っていくと、S級を含む数多のダンジョンを抱える甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)に辿り着きます。

 あそこでは日々ダンジョンが発生していますから、何処かに未発見のものがあってもおかしくはないですね」


「はい、我々対策局も同様の見解です。しかし、魔物による再度の襲撃に備えるため、対策局のハンター達は都内に残しておく必要があります。

 そこで皆様には、甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)の河川流域における未発見ダンジョンの捜索と、必要に応じた討伐をお願いしたいのです。

 あのレベルの魔物が溢れて来ている点から、件のダンジョンはすでにS級ダンジョンに育っている可能性もあります。

 大変危険な依頼となりますが、都民の安全のため、どうかご助力頂きたく……」


 長官が深々と頭を下げる。なるほど、甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)か…… 俺はパーティーメンバーのみんなに問いかけた。


「どう思う? 俺は受けてもいいと思うが……」


「カリヤマさんも乗り気のようですし、私も賛成です! 魔物に故郷を脅かされるのは悲しいですから……」


「僕も賛成! あと師匠、ちょっと顔がニヤけてるよ? 甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)のダンジョンに行けるのが楽しみなんでしょー?」


「ワフフン」


 全員が見透かしたような笑みを浮かべながら俺を見る。そ、そんなに分かりやすかっただろうか……?

 俺は誤魔化すように彼女達から顔を逸らすと、長官に向かって手を上げた。


「都民の安全のためです。その依頼、受けましょう」


 俺に続き、レイ氏が声を上げる。


「うーん…… 依頼料はいかほどですの?」


「ハンター等級に応じた日当を出させて頂きます。S級の場合は…… どうかこの程度でご勘弁を」


 長官が指で示したのは、S級ハンターへの依頼としても結構美味しい額だった。それを見てレイ氏がにんまりと笑う。


「うふふ、よろしくってよぉ。わたくし達も受けますわぁ」


 彼女を皮切りに、その場にいた上級ハンター達も全員調査への参加を表明した。


「皆様…… ご協力、誠にありがとうございます」


 岩崎(いわさき)長官はほっと息を吐くと、再び俺たちに向かって深く頭を下げた。

 だが、なんだ……? 頭を下げる直前、彼の顔には、何かに耐えるような苦悩の表情が浮かんでいるように見えた。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 苦悩の表情、ねぇ…。もしかして人身御供にされそうになってる? いや流石に優秀な人間を使い潰す訳は……いや国なんて普通にそういう悪企みはやらかすか?(疑心暗鬼 それでは今日はこの…
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