表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【1章終了】逃げ癖ハンターは立ち向かう 〜狩人の大精霊に憑依された底辺ハンターは魔物に溢れた現代で無双する〜  作者: 藤枝止木
2章 ハンター、都会へ行く

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/45

第42話 ハンター、塩対応をされる


 シロの撮影会の様相を呈した受章式を終え、俺達は割り当てられた控室に戻った。


「はぁ。式典なんて初めて出たが、こんなに肩が凝るもんだったとは……」


 どっかりとソファに腰を下ろした俺に、トモミンが神妙に頷く。


「うーん。僕もあんな真面目な場所初めてだったから、ちょっと失敗しちゃったなぁ」


「ふふっ。トモミンはいつも通りでしたもんね。私は緊張でガチガチでしたけど……

 --シロ。あなたはちょっと楽しんでましたよね?」


「ワフン?」


 ノルフィナの視線にシロが惚けたようにそっぽを向き、みんなが穏やかに笑う。

 そこで俺のスマホに着信が入った。見ると、相手はお馴染みのあの人だった。


「はい、狩山(かりやま)です」


『あ、もしもし、ハンター支援局の斉藤(さいとう)です。中継で見てたわよぉ、受章式!

 狩山(かりやま)君もトモミンちゃん達も本当に立派になって……! お姉さん、ちょっと泣いちゃたわ!

 うちの支援局にきてたハンターさん達も、中継を見ながら拍手してたわよ!』


 斉藤(さいとう)さんの嬉しげな涙声に自然と顔が綻ぶ。

 ここまで来れたのは、パーティーのみんなはもちろん、覚醒前のG級ハンターだった俺の面倒を見続けてくれた彼女のお陰だ。


「ありがとうございます。斉藤(さいとう)のおかげですよ。本当に……」


「え、斉藤(さいとう)さん? 僕もお話ししたーい!」


 他のみんなからも口々にお礼を言われ、斉藤(さいとう)は本格的に泣いてしまわれた。

 そして彼女との通話が終わると、式典での緊張が完全に解け、控室に弛緩した雰囲気が流れた。


「ふー…… さて、あとは帰るだけだが、明日からどうしようか?

 すぐにダンジョン攻略を再開してもいいが、宣言した一ヶ月まであと一週間は期間があるんだよなぁ」


 ノルフィナの故郷を助けるため、俺達は家の近所の鉄熊山(てつゆうざん)に出現したゲートを潜り、異世界ユグドラシアへと渡った。

 その際に、俺達は各所へ一ヶ月以上の休暇を宣言していた。ゲートの開通周期は月の満ち欠けに同期しているので、最短でも一ヶ月は地球を留守にする予定だったからだ。

 しかし、ノルフィナの故郷を襲った伝説の魔獣、カオスウルフを仕留めた際、俺は世界間を渡る強力なスキルを得た。

 そのお陰で、予定より少し早めに地球に帰ってくることが出来たのだ。


「あ、だったらその一週間、みんなで思いっきり遊ばない!? 僕達って、スパルタなリーダーのせいでちょっと働きすぎだったと思うんだよねー……?」


 トモミンがニヤニヤと俺に視線を送ってきた。


「うっ。す、すまん…… じゃあ、今から一週間は休暇にしよう。みんな。行きたい場所とかやりたいこととか、何かリクエストはあるか?」


「やたっ! えー、どこがいいかなー? 一週間だと国内だよね? まだちょっと寒いから、沖縄とか!? 逆に北海道にグルメ旅行って手も--」


 トモミンが実に楽しそうな表情であれこれ悩み始めた。

 一方ノルフィナはというと、何かを言いたそうに口を開き、躊躇って閉じるというのを繰り返している。いつものようにちょっと遠慮してしまっているらしい。


「あー、ノルフィナ。君は何かリクエストはあるかい?」


「え…… わ、私ですか……!? でしたら、えっと…… 私、東京観光をしてみたいです……!」


「へ? 東京? あ、そっか。ノルフィナちゃん、千葉を出たのも今回が初めてだもんね」


 トモミンの言葉にノルフィナが力強く頷く。そういえばそうか。

 彼女はユグドラシア出身のネット大好き人間だ。地球の多くの場所を画面越しに見た事はあっても、実際に足を運んだことは無い。

 今回初めて東京に出てきた事で、その巨大な好奇心を大いに刺激されたんだろう。


「はい! ここからでも見えるあの巨大なスカイツリー! 多くのアニメで語られる聖地、秋葉原! 行ってみたいところが沢山あるんです!

 あとは、噂に聞くザギンでシースーというのも体験してみたいです!」


「ワフッ!? ワンワン!」


 ノルフィナが口にした「シースー」という単語に、シロが猛烈に反応した。

 この子、日に日に日本語能力とグルメ度合いが上がっていくなぁ…… ともあれ、楽しそうでなによりだ。

 テンションをぶち上げている二人を見て、俺とトモミンは頷きあった。


「了解だ。なら、今から一週間は東京観光と洒落込もう。トモミン、君、元々東京周辺が活動範囲だろ?

 俺はこのあたりは不案内だから、良ければ色々と教えてくれるか?」


「ふっふっふっ…… もっちろん! トモミン観光にお任せ! あ、でもその前に、ちょっと挨拶だけしたい人が--」


 ゴンゴンゴンッ!


 するとそこで、やたらとでかいノックの音が控室に響いた。


「あ、もしかして……! はいはーい!」


 元気に返事したトモミンが席を立ち、ドアを開けた。その瞬間。


「トモミン! 会いたかったですわぁ!」


 室内に突入してきた何者かが、トモミンを思い切り抱きしめた。


「「……!?」」


 それを見た俺達は思わず腰を浮かせかけたが、相手を抱き返すトモミンを見て座り直した。


「やっぱりレイちゃんだった! 久しぶりー!」


 トモミンの嬉しそうな声。やはり知り合いだったらしい。

 控室に入ってきたのは、ドレス姿の女性だった。長身で、小柄なトモミンをすっぽり包み込むように抱きしめている。

 髪は真っ赤なオールバックで、宝塚女優のような中世的で凛々しい顔立ちだ。

 海外セレブのようなメリハリのあるプロポーションも相まって、こう、華と迫力のある美人という印象を感じる。

 しかしあの顔、どこかで見た気が……


「あぁん! もう、いつまで経ってもお姉ちゃんと呼んでくれないんですもの。でも、こうしてあなたを腕の中に抱けて嬉しいですわ! うふふ……!」


 するとそのレイちゃんと呼ばれた美人は、そのままトモミンの体を撫でまわし始めた。こ、これは……


「ひゃっ……!? もう、レイちゃんのえっち! すーぐ変なところ触るんだから!」


 トモミンがするりと拘束から脱したのを見計らい、俺はおずおずと声をかけた。


「あの、トモミン。そちらの方は……?」


「うん、紹介するね! 友達のレイちゃん! 最近S級になった、すっごいハンターなんだよ! 同時多発ダンジョン暴走でも頑張ってくれたんだって!

 最近忙しくって会えてなかったんだけど、同じ受章式に出るから会えるねって話してたんだー!

 レイちゃん、こっちは前に話したカリヤマ師匠! 師匠もS級になったんだよ!」


 S級ハンターのレイだって……!?

 俺は思わず席を立った。そして改めて彼女の顔を見てようやく思い出した。

 確か本名は姉川礼(あねかわ れい)。『姫百合の騎士』の二つ名を持つ、凄まじい腕前のレイピア使いだ。

 以前見た動画では華美な白銀の鎧を着ていたので、すぐには分からなかった。

 たまにトモミンの話に出てきていた高ランクハンターとは、彼女のことだったらしい。


「は、初めまして。パーティーリーダーのカリヤマです。偉大な先達にお会いできて光栄です、レイさん」


 相手は俺より以前から活躍しているS級ハンターだ。ちょっとした憧れもあり緊張気味に挨拶すると、彼女は目を細めながら俺を見返した。おや……?


「ええ。よろしくね、カリヤマさん。ところであなた、トモミンと随分仲がよろしいようですわねぇ……

 でも、もしもわたくしのトモミンにおかしな真似をしたら…… その体が蜂の巣になりましてよ?」


 ビリッ……


 同時に飛んでくる殺気。この感じ…… 受章式で感じた気配は彼女だったのか……

 しかし、トモミンにおかしな真似をしてたのはあんただろ……


「あー…… その、気をつけます」


「ふん、分かればよろしいんですわ。あら…… そちらのあなたは……!?」


 レイ氏に視線を向けられ、ノルフィナが慌てて席から立つ。


「あ、はい……! 魔法使いのノルフィナと申します。よろしくお願いします」


「ええ、よろしくお願いしますわ! ノルフィナ…… あなた、やっぱりいいですわねぇ!」


 俺の時とはまるで違う反応を見せたレイ氏は、一瞬でノルフィナの前に移動し、彼女の頬にそっと触れた。


「あぁ…… トモミンの配信で見かけた時から思っていましたけれど、なんて美しいのかしら……!

 ねぇあなた。トモミンと一緒にわたくしのパーティーに来ない? たっぷりと可愛がってあげましてよ……?」


「え……!? あ、あの、その…… ご、ごめんなさいぃ……!」


 キスするような距離感で迫るレイ氏に、ノルフィナが赤面しながら俺の後ろへ逃げてくる。

 うーん…… やっぱりあの話は本当だったのか。

 レイ氏自身も公言しているらしいのだけれど、この人は女性が好きらしい。

 彼女のパーティー、『姫百合騎士団』の構成員も全員女性なので、かなり真実味のある話だ。


「ちょっとレイちゃん! 僕のノルフィナちゃんに手ぇ出さないでよね!」


「あら、ごめん遊ばせ。うふふ……」


「もー、可愛い女の子を見たらすーぐ口説いちゃうんだから…… あ、この子はシロね! とっても賢いんだよ! シロ、ご挨拶して!」


「ワオン!」


 トモミンの言葉にシロが歩み出て、レイ氏の前でぺこりとお辞儀した。

 普通ならあら可愛いと撫でたりしそうなものだけれど、レイ氏の反応は違った。


「あらご丁寧に。うーん…… でもあなた、きっとオスよね? 悪いですけれど、それ以上近寄らないで下さる?」


「ワフッ!? ク、クゥーン……」


 そんなふうに扱われたのは初めてだったのだろう。シロはしょんぼりとした様子で逃げ帰り、俺の後ろでノルフィナと合流した。

 なんか、すげーなこの人。なんでシロの性別が分かったんだ……?


「レイちゃん、相変わらず男の子に冷たいねー…… あ、ねぇねぇ。銀座で美味しいお寿司屋さんとかって知ってる?

 みんなで行こうかって話してたんだけど、シロも一緒に入れてくれそうなお店って心当たりがなくってさー」


「ペット可の美味しいお寿司屋さん……? ああ、あそこなら大丈夫そうですわね。

 このお姉ちゃんに任せなさい! 連れてってあげますわぁ! ノルフィナと…… 仕方ありませんから、そちらの男性二人も付いてきなさいな」


「ほんと!? ありがとー!」


 レイ氏はトモミンの肩を抱くと、そのまま颯爽と控室から出て行ってしまった。


「--な、なんというか…… 王族のような方でしたね」


「ああ…… あのくらい正直に生きられたら、爽快だろうな」


「ワフーン……」


 残された俺達はしばし顔を見合わせた後、レイ氏とトモミンの後を追った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ