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【1章終了】逃げ癖ハンターは立ち向かう 〜狩人の大精霊に憑依された底辺ハンターは魔物に溢れた現代で無双する〜  作者: 藤枝止木
1章 ハンター、大精霊に気に入られる

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第35話 ハンター、ボーナスタイムに突入する


 地球とは違い、この世界ではその辺の森に魔物が住んでいたりする。

 俺達が向かったのはそんな魔物の領域の一つ。城塞都市ノルザルボルグの東にある森だ。

 ちなみに、シャドウウルフ達が退却したのは都市を挟んだ反対側。西の森の方だ。

 森に入って耳を澄ませると、アルミラージから獲得した俺の『超聴覚』が魔物の群れを捕捉した。


「--捉えた。この感じ、大型の四足獣の群れだな…… こっちだ。静かに付いてきてくれ」


「りょーかい……! 抜き足差し足だね……!」


 後続のトモミン達が俺の言葉に頷く。

 そのまま足音を殺して森を進んでいくと、木立の向こう側に巨大な影がいくつも見え始めた。

 目を凝らすとそれは、巨大な四本の牙を生やした猪型の魔物だった。木々がまばらな開けた場所で、数十頭が日光浴をしながら微睡んでいる。

 俺達はさらに距離を詰めて頷きあい、戦闘を開始した。


『--氷山結界(イース・ヴェグル)!』


 ビキキッ……!


 先制の一撃を放ったのはノルフィナ。魔物達の周囲をぐるりと囲むように氷の壁が生成され、群れは一瞬にして逃げ場を失った。

 気づいた魔物達が即座に立ち上がろうとするが、寝起きのためかその動きは鈍い。


千刃乱舞(ブレイズ・ストーム)!』


「「プギィィィィッ!?」」


 そこへ俺が放ったダガーの群れが殺到し、魔物達の脳天を撃ち抜いていく。


「よっしゃあっ! シロ、行くよ!」


「ガゥッ!」


 最後にトモミンとシロが群れへ突撃し、俺が打ち漏らした個体を次々に仕留めていく。

 時間にしておよそ十秒。全ての魔物が倒れ伏し、森は静かになった。


「よし、みんなおつかれさま! 一旦都市へ戻ろう」


「「おー!」」


 俺は金属操作魔法でダガーを円盤状に変形させると、それらの上に一体数百kgはある猪を乗せ、そのまま城塞都市へと運び込んだ。

 これを何度か繰り返す事で、俺達は合計数tもの魔物肉を調達する事に成功した。






『では皆! 憑代(よりしろ)殿と天上の神々に感謝を捧げ、この素晴らしき(かて)を頂こう!』


『『ウォォォォッ!!』』


 場所は領主の城館の中庭。リースヒルド侯爵の音頭に、その場に集まった騎士や兵士、冒険者達が歓声をあげた。

 やつれた顔の彼らは、庭の至る所で直火にかけられている肉串へと殺到すると、目に涙を浮かべながらそれを頬張った。

 その様子を目にし、俺はほっと安堵の息を吐いた。


『よし。BBQパーティーは大好評みたいだな』


 俺が侯爵に提案したのは、今夜予想される襲撃の前に士気を高めるため、都市全体でBBQパーティーをしようというものだった。

 都市の兵士や冒険者は怪我や疲労で動けない人も多かったので、肉の調達は俺達で行った。

 その後は都市のみんなに下処理を手伝ってもらい、こうして宴の開催に漕ぎつけたのだ。

 現在この都市には数万人が居るが、肉はその全員が満腹になるほどの量を確保した。

 城館の外からも楽しげな声が聞こえてくるので、都市にいる全員が肉串を楽しんでくれているはずだ。


『皆さん、とてもお腹を空かせていた様子でしたからね…… あ、ヴァリル、エルティ、こっちにおいで!』


 ノルフィナが手招きすると、肉串を両手に持った子供達が楽しそうに走ってきた。

 彼女の弟さんと妹さんだ。ノルフィナのご家族という事で、城館中庭でのパーティーに招いたのだ。

 ちょっと離れた所には彼女のご両親もいて、楽しげに笑う侯爵と緊張気味に話し込んでいる。


『ねーちゃん! これ、すげーうめーよ!』


『おいしー!』


 満面の笑みでうまいうまいという二人。ノルフィナは慈愛の笑みを浮かべながら、彼らの頭を優しく撫でた。


『うふふ、よかったね。ほら、カリヤマさんにお礼を言って?』


『うん! カリヤマお兄ちゃんありがとー!』


『あーがとー!』


『ああ、いっぱい食べるんだぞ。串の先に気をつけてな』


『『はーい!』』


 二人は元気に返事をすると、走って両親の元へと戻って行った。


『んふふ……! ノルフィナちゃんの弟くん達、やっぱりかわいいね!』


『ああ。特に、俺をおじさんと呼ばない辺りが最高だ』


『うっ…… し、師匠。僕がおじさんて呼んだことまだ怒ってるの……?』


『はは、冗談だよ。ほら、トモミンもいっぱい食べな』


『も、もー! シロ、師匠の分まで食べちゃおう!』


「ワン!」


 トモミンがヤケクソ気味に肉串に喰らい付き、シロも串から外した肉をハフハフと食べ始める。火傷に気をつけろよ?


『ふふっ。カリヤマさん、私たちも頂きましょうか』


『ああ。さて、こっちの魔物はどんな味なのか……!』


 ノルフィナに大きく頷き返すと、俺は焼き台からこんがり焼けた肉串を一本手に取った。

 串には様々な魔物の肉と、申し訳程度の野菜が刺さっている。

 それにガブリと喰らい付き、串から引き抜いて咀嚼する。


『……! こいつはうまいな……!』


 香ばしい肉の香りと香味野菜の香りが鼻に抜け、牛、豚、鳥…… 様々な肉の食感や味わいが口内を満たした。

 もう一口、さらにもう一口食べると、また違う肉の香りや味が押し寄せてくる。

 何種類もの魔物の肉がごちゃ混ぜに刺さっているので、一口ごとに新鮮な美味しさがある……! これは結構新しい食べ方を発見したかもしれない。

 チラリと周りの様子を見ると、他のみんなも肉串を夢中で貪っていた。


『--クスッ、クスクスクスクスッ……!』


 すると俺の脳内に、狩人(かりゅうど)の大精霊の楽しげな声が連続で響いた。

 そう、これがBBQパーティーを企画したもう一つの理由だ。


 この世界では様々な魔物の肉が気軽に手に入る。魔物の肉を喰ってその力を得られる俺にとって、まさにボーナスステージなのだ。

 声の直後、体の奥から新しい力が次々に湧き上がってくる。

 五感が鋭敏になり、肉体の様々な能力が強化され、今日仕留めた魔物のスキルが自分の血肉になったのが直感できた。

 己が格段に強化された感覚に、俺は一人頬を歪めた。


『出来ることやった。あとは…… 獲物を待つばかりだ』


 肉串を楽しむ人々の喧騒の中、西の空は徐々にオレンジ色に染まっていった。

 そして、夜が来た。


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