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【1章終了】逃げ癖ハンターは立ち向かう 〜狩人の大精霊に憑依された底辺ハンターは魔物に溢れた現代で無双する〜  作者: 藤枝止木
1章 ハンター、大精霊に気に入られる

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第26話 ハンター、暴走ダンジョンを鎮める(3)


 ジャッ!


 金属操作魔法により伸長した刀身が、クェイクティラノの肩口に迫る。

 奴の全身は岩石の甲殻に覆われている。さっきダガーでその破片を迎撃した感じだと、鋼鉄を超える硬度を持っている事も分かった。

 だが俺の斬撃はスチールゴーレムをも両断した。幾ら硬くても甲殻の厚さはせいぜい数センチメートル。切れない訳がない……!


 バガンッ!


 しかし、その予想は突然響いた轟音と共に裏切られた。刀が触れる直前、奴の甲殻が爆発したように弾け飛んだのだ。


「なっ……!?」


 破片と爆風により斬撃の刃筋はぶれ、剣圧も大きく削がれてしまった。結果、俺の刀は奴を両断するどころか、その甲殻を浅く傷つけるに止まった。

 慌てて刀を引き戻すと、爆ぜた部分の甲殻は見る見る内に補修されてしまった。まるで戦車の爆発反応装甲、リアクティブアーマーだ。しかも再生機能付きの……!


「クェイクティラノがこんな技を使うのなんて聞いた事ないぞ……! こいつ、もしかして強化種なのか……!?」


 俺が上級ハンターのダンジョン配信などから得た知識では、こいつの攻撃手段は大地を揺るがす振動波と尻尾による石礫(いしつぶて)、それからあの大顎による噛みつきだ。

 そして、防御手段である岩石の甲殻はただただ頑丈なだけで、あんなハイテクな機能は無かったはず……!

 想定外の事に戸惑う俺を、敵は待ってくれない。


「ゴアッ!」


 ズガンッ!


 奴は再び大地を踏み締め、あの強力な振動波を放ってきた。


「チッ……!」


 咄嗟に跳んでそれをやり過ごすと、奴は中空に居る俺に向かって尾を振り抜き、再び石礫(いしつぶて)を放ってきた。

 振動波で地上の敵を殲滅し、強力な石礫(いしつぶて)で空中の敵を撃ち落とす。これが奴の必殺戦法なのだ。

 俺は迫り来る散弾に刀を構えながら、トモミン達の方への流れ弾にダガーの群れを向かわせた。


 ガガガガガッ!


 刀で散弾を弾き切って着地し、チラリと後方を伺うと、円盤に乗ったみんなも無事だった。


「よかった、あっちも防げたか…… けど、こんなのいつまでも続けていられないぞ……!」


 トモミンの出血は続いているはずだし、ノルフィナの風の防御障壁もいつまで持つか分からない。早急に決着を付ける必要がある。

 --俺の初撃は奴のリアクティブアーマーに防がれてしまった。しかし、あのアーマーの再生機能は無限だろうか?

 いや、そんな訳は無い。奴にも魔力切れという限界はあるはずだ。


「なら、裸になるまで剥いてやるまでだ……! おぉっ!」


 相手の魔力を削り切る。そう決めた俺は、(けぶ)るような速度で刀を振るった。


 バガガガガァン!


 袈裟斬り、水平斬り、突き…… 奴に放ったあらゆる方向からの攻撃は、その(ことごと)くがリアクティブアーマーによって防がれてしまった。

 奴は反撃とばかりに衝撃波と石礫(いしつぶて)を放ってきたが、俺はそれを(かわ)しながらひたすらに刀を振い続けた。

 そして十数分後……


「はぁ、はぁ、はぁ…… どうした、もう品切れか……!?」


「ゴ、ゴルルルルッ……!」


 息が切れるほどの全力戦闘の結果、クェイクティラノの甲殻は再生限界を超え、奴は丸裸の状態になっていた。


”すっ…… すげぇー! 完全にひん剥いちまった!”

”流石狩山(かりやま)工房! 服を作るのも脱がせるのも上手い!”

”端的な状況説明:息を荒げた狩山(かりやま)氏が魔物を無理やり全裸にした”

”語弊がありすぎるwww”


 優勢な状況にコメント欄も息を吹き返し、ふざける余裕が出てきたようだ。しかし、めちゃくちゃ誤解を招きそうなコメントがあるな……


「好き勝手地団駄踏みやがって……! 終わりだ! 迷惑トカゲ野郎!」


 トドメを刺すべく、俺は地を蹴ってさらに間合いを詰めた。

 しかしその時、ジリジリと怯えるように後ろに下がっていた奴が、ニヤリと(わら)った気がした。

 背中をぞくりとした嫌な感覚が駆け抜ける。そしてそれを裏付けるように、奴が俺に向けて大口を開けた。

 なんだ……? この間合いじゃ奴の噛みつきは絶対に届かないのに…… まさか……!?


『キョォォォォッ!!』


 そのまさかだった。奴の喉奥から発されたのは、空気を震わせるブレス。これまでの重低音の咆吼とはまるで違った、超高音の域の咆吼だった。


「がっ……!?」


 まるで強力な指向性の音響兵器。耐え難い爆音に晒された俺は、強烈な頭痛と吐き気、そして体中の痛みに膝を突いてしまった。

 こいつ、振動させられるのは大地だけじゃなかったのか……!

 まともに動けない状況でなんとか顔を上げると、激しくブレる視界の中で、奴の馬鹿でかい顔が迫って来ていた。最後はあの大顎でトドメを刺すすつもりらしい。


 必死にブレスから逃れようとするも、俺の体の動きは亀のように遅かった。

 大口を開けた奴が間近に迫り、覚醒以来忘れていた死の恐怖が俺の心中に広がる。

 同時に、これまでの出来事が走馬灯のように思い起こされた。三十年も生きているのに、脳裏に浮かぶのは出会って数ヶ月のみんなの顔だった。

 トモミン、ノルフィナ、シロ…… ここで死ぬわけには……!


 ガィンッ!


「グォッ!?」


 その時、突然飛来した何かがクェイクティラノの頭部に直撃した。

 音響ブレスが止み、自由になった俺の視界にその何かが映った。あれは…… モーニングスター!?

 驚愕と共にみんなの方を振り返ると、投擲後の姿勢の彼女が円盤の上に立っていた。


「トモミン!?」


「師匠! やっちゃえ!」


 彼女の声に向き直ると、クェイクティラノの顔が至近距離にあった。


「グォォォォッ!!」「おっ…… おぉぉぉぉっ!!」


 ザンッ!


 その大顎が俺を噛み砕く直前、俺の刀が奴の極太の首を切り飛ばした。

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