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【1章終了】逃げ癖ハンターは立ち向かう 〜狩人の大精霊に憑依された底辺ハンターは魔物に溢れた現代で無双する〜  作者: 藤枝止木
1章 ハンター、大精霊に気に入られる

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第25話 ハンター、暴走ダンジョンを鎮める(2)


「あ…… あぁ……!」


 とてつもなく悲痛で、深い悔恨に塗れた声が聞こえた。

 そしてすぐに、それが自分の口から出たものだと気づいた。

 俺は一瞬でトモミンの元へ駆け寄り、血まみれの彼女を慎重に抱き起こした。


「トモミン……! おい、トモミン!」


「--ぅ……」


 必死に呼びかけると、ぐったりと目を瞑った彼女がわずかに(うめ)き声を上げた。


「生き、てる…… けど……!」


 一瞬の安堵の後、身が凍るような絶望感が襲ってきた。

 彼女の出血はそこまで酷くないけど、きっと体内はズタズタに破壊されているはずだ。意識が無い事を考えると脳にまでダメージが……

 どうする…… どうすればいい……!?


 ポーションはもう使い切ってしまった。この場で彼女を治療する方法は無い。直ぐに地上に連れて行って治療を受けてもらう必要がある。

 けれど、この状態のトモミンを安静かつ迅速に運ぶのは、凶暴化した魔物が溢れる今のダンジョンでは困難だろう。

 なら、やはり先にダンジョン暴走を止めなければ……!


 --いや、トモミンが負傷したのは俺が判断を誤ったからだ。俺はもう自分を信用できない。

 それに…… 最初にダンジョン暴走を止めようと提案した時、俺は心のどこかで期待していたんじゃないか?

 ダンジョン暴走により強化されたボスを狩れる事を…… みんなの安全より、自分の欲を優先していたんじゃないか……?


「--はぁっ…… はぁっ…… はぁっ……!」


 俺のくだらない欲望のせいでトモミンが死ぬ。彼女との騒々しくも楽しい生活が終わる。

 それを想像した瞬間、強烈な恐怖に奥歯がガタガタと鳴り、思考が空転し始めた。

 どうする、どうすれば。ただその言葉だけが頭の中をぐるぐると回り--


 バシッ!


 そこで誰かが俺の横っ面を引っ叩き、俺は現実に引き戻された。

 叩いてくれたのはノルフィナだった。彼女は腕を振り抜いた姿勢のまま、目に涙を溜め声を荒げた。


「カリヤマさん、落ち込んでる場合じゃありません! 貴方がしっかりしてくれないと、トモミンはこのまま死ぬんですよ!?」


「ワン! ワオン!」


「ノルフィナ、シロ……」


 呆然と二人の名前を呼ぶ。そうだ。反省も謝罪も、後でいくらでもできる。まずはここを切り抜けないと……!

 その時、視界の端でクェイクティラノが尻尾を振りかぶったのが見えた。あのモーションは……!?


「ゴアッ!」


 ブンッ!


 (けぶ)るような速度で振り抜かれた奴の尻尾から、岩石の甲殻が剥がれ飛んだ。

 大小の岩塊が散弾のようにこちらに殺到してくる。俺は咄嗟にコートを跳ね上げた。


千刃乱舞(ブレイズ・ストーム)!』


 ギュォッ……! ガガガガガガァン!


 コートの下から飛び出したダガーの群れが、奴の散弾の大部分を迎撃した。

 だが不味い。破片や細かい散弾までは……!


烈風結界(ヴィンド・ヴェグル)!』


 ゴォッ!


 そこへノルフィナが風の防御障壁を発動させ、細かな岩塊を全て吹き散らしてくれた。


「ノルフィナ……! 助かった! そして、すまない。動揺して戦闘中に敵から目を離すなんて……!」


「い、いえ、こちらこそ叩いてしまってすみません…… それより、どうします……!?」


「--やはり、あいつを倒してダンジョン暴走を止めるしか無いだろう。でないとトモミンを安全に地上まで運べない。その、この状況を招いた俺への信用はもう無いと思うが……」


「分かりました。それで行きましょう」


「ワンワン!」


 不安げに方針を口にした俺に、二人は疑う事なく大きく頷いてくれた。

 なんだか泣きそうになりながら、俺は彼女達に頭を下げた。


「ありがとう……!」


「--ゴルルルルッ……」


 一方、必殺の攻撃が二つとも防がれたせいか、クェイクティラノは警戒した様子で俺達を睨んでいた。

 俺は奴から目を離さず、ダガーの何本かを金属操作魔法で合体、変形させ、直径二メートル程の薄い円盤を生成した。

 その浮遊する円盤にトモミンをそっと横たえ、ノルフィナとシロに向き直る。


「二人とも、トモミンと一緒にこれに乗ってくれ。奴の振動波は強力だが、地面に触れてさえいなければ喰らわないはずだ。

 問題は奴の石礫(いしつぶて)だが…… さっきと同じ要領で防げるだろう。デカイのは俺がダガーで撃ち落とすから、細かいのはノルフィナ、君に頼みたい。

 シロ。君はトモミンが落ちてしまわないように支えてい欲しい。俺は…… 奴を仕留める」


「了解です。ご武運を!」


「ワフッ!」


 二人が円盤に乗り込んだのを見届け、俺はクェイクティラノの元へ走った。

 スマートグラスの端に流れるコメント欄をチラリと見ると、大荒れだった。


”今来た。トモミン死んじゃったのか……!?”

”いや、生きてるけど意識不明の重症。今はトモミンを安全に地上に連れていため、ダンジョン暴走を止めようとしてる所。でもそのためには……”

”あのティラノサウルスを倒さないといけないんだよなよな……? いくら狩山(かりやま)師匠でも、ソロでA級の化け物をやれんのか……!?”

”トモミンしっかりして!”

”やっぱり無茶だったんだ! ボス階層に降りずに、直ぐに地上に引き返せば良かったんだよ!”

”そんなの結果論だろ! 良いから狩山(かりやま)氏を応援しとけ!”

狩山(かりやま)、トモミンが死んだらお前のせいだ。俺は絶対お前を許さない”


「--ああ…… もしそんな事になったら、俺だって自分を許せないさ……!」


狩山(かりやま)君! そのダンジョンの入り口には、すでにハンター達と医療班を向かわせているわ! だから……!』


「ええ……! トモミンと一緒に、全員で必ず生きて戻ります!」


 ドローンカメラから聞こえた斉藤(さいとう)さんの声に応えながら、俺は腰元から刀を抜き放った。

 俺とクェイクティラノとの距離が縮まり、お互いの視線が交錯する。


「グォォォォォッ!!」「おぉぉぉぉっ!!」


 俺と奴は、同じタイミングで咆吼を上げていた。

 そして間合いに入った瞬間、俺は大上段に構えた刀を振り下ろした。


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