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【1章終了】逃げ癖ハンターは立ち向かう 〜狩人の大精霊に憑依された底辺ハンターは魔物に溢れた現代で無双する〜  作者: 藤枝止木
1章 ハンター、大精霊に気に入られる

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第13話 ハンター、弟子の地雷を踏む


 ウィングタイガーを無事討伐した俺達は、最短距離で地上へ帰還し、その足で支援局を訪れた。

 すると、配信を見ていたらしいハンター達と、斉藤(さいとう)さんを始めとした職員達から拍手で出迎えられた


「本当に無事でよかった……! 狩山(かりやま)君、流石はC級昇級の最速記録保持者ね!

 そしてトモミンちゃん! 実力差のある相手にあの立ち振る舞い…… 試験は文句なしに合格よ! はいこれ!」


 斉藤(さいとう)さんからD級の認識票を受け取ったトモミンは、とびきりの笑顔でそれを掲げた。


「や、やったーー!! 斉藤(さいとう)さんありがとう! みて師匠! みんなも見て見てー! D級だぁー!」


”おめでと〜!”

”これでトモミンも一人前じゃな。じゃがハンターの道は長く険しい。これに満足せずに精進するんじゃぞ”

”↑いや、誰だよw”

”その枠はすでに狩山(かりやま)師匠で埋まってるぜ”

”そうだぞ。束縛系師匠の狩山(かりやま)氏がもういるぞ”

”あの場面、ちょっとドキッとしちゃった……”

”猛獣は鎖で繋いでおかないとなぁ(キリッ)”

”師匠、俺より強いやつに会いに行く系の人だったの?”


「いや、あれはできれば忘れて欲しいんだが……」


 コメント欄の妙なノリに、俺は思わずドローンカメラから顔を逸らしてしまった。

 確かにあの時の俺は少しおかしかった。強敵相手にテンションが上がってしまったんだろうけど、思い返すと恥ずかしい。


「あはは! なんかあの時の師匠、ワイルドだったよねー!」


「わ、忘れてくれったら……! えっと、斉藤(さいとう)さん。あのダンジョンで異常等級個体が出るのって、結構(まれ)なんですよね?」


「ええ。異常等級個体が発生しにくいからこそ、試験会場として良く利用されるんですもの。

 --例の山の件も含めて、最近、ダンジョン関連の妙な事件が増えている気がするわ。管理局には逐一知らせてるから、すでに調べてくれていると思うけど…… 君はなぜかそういう事件に遭いやすいみたいだから、気をつけてね……?」


 後半は小声で忠告してくれた斉藤(さいとう)さんに、俺は小さく頷いた。やっぱり結構なイレギュラーだったらしい。

 それはそうとして、今回は色々と反省点が多いダンジョン攻略だった。師匠として、弟子の心身をしっかり守って行かなければ。


「よしトモミン。早速カレーでも食いに行くか? 支援局の周りならいくつか店を知ってるぞ」


「うーん…… そっちも今度連れてって欲しいけど、今は師匠の熊カレーがいいな!」


「ふふっ、そっか。じゃあ帰るか」






 トモミンが無事D級に昇級してから一週間が経過した。約束通り、俺達師弟はゆっくりと休暇を過ごしていた。

 トモミンは一日休んだら完全復活したらしく、以降は配信したり友人と遊びに行ったりと、とても活動的に過ごしている。さすが人気配信者。バイタリティが凄い。


 一方俺はダンジョンにも行かず、自宅でひたすら魔法や魔物の研究をしていた。ウィングタイガーと戦ったことで、狩猟欲が結構満たされた気がする。

 しかし、トモミンから譲渡してもらった土地、熊野郎にちなんで鉄熊山(てつゆうざん)と名付けて山には毎朝行っていた。


 本来の鉄熊山(てつゆうざん)は、弱い魔物が少数いるだけの場所だ。稼げないので、俺以外にほとんどハンターが来ない不人気スポットである。

 そんな鉄熊山(てつゆうざん)でも、放っておくと魔物で溢れてしまうので、俺が間引かないといけないのだ。

 それで今朝も間引きに出かけたのだけれど、今日は珍しくトモミンも付いて来てくれた。


「ふぁ〜…… ねんむ〜、さんむ〜…… 師匠、毎朝こんなことしてるのー?」


 彼女はあくびを噛み殺しながらそう言った。ジャージに上着を羽織っただけのラフな格好で、肩にはモーニングスターを担いでいる。

 俺も似たような格好をしている。スウェットにダウン、そして片手にナイフだ。うん、結構な不審者コンビだな。


「魔物が増えすぎて、市街地に逃げでもしたら問題だからな。場合によっては地権者の責任になってしまうし」


 鉄熊山(てつゆうざん)のように極小ダンジョンしか発生しない土地では、地権者が魔物を閉じ込める柵を設置し、さらに支援局に依頼を出して魔物を定期的に間引く必要がある。

 補助金は出るそうだがそれでも結構大変らしい。多分前の地権者も、ここを早く手放したかったんじゃないだろうか……


 一方で、利益が出そうなダンジョンは国が地権者から接収し、ダンジョン管理局が管理する。利益の一部は地権者に入るので、いいダンジョンが出た土地の地権者はウハウハなのだ。

 そうでないダンジョン、例えばこの山で見つかったD級ダンジョンなんかは、B級の異常等級個体が出てくる危険なダンジョンとして破壊されてしまう。

 ここの今の地権者は俺なので、不労所得がパァになった形だ。

 しかしそれは、俺が熊野郎のダンジョンが消えた件を隠蔽したせいなので、自業自得なのだ……


「え…… そ、そーなの……!? もしかして、山あげたの迷惑だった……?」


 トモミンは、人差し指同士をツンツンさせながら上目遣いで俺を見た。


「いや、そんな事ないさ。ただただ有り難かったし、嬉しかったよ。この山を気に入っているのは本当だし。

 毎朝の間引きも、自分の庭を散歩するようなもので苦じゃないしな。

 それに、ここはトモミンと出会った思い出の場所だ。自分で持っておけるならそれが一番だよ」


「……! そ、そっか。なら、よかったよ…… ま、まぁ? 僕ってプレゼントのセンスがいいって良く褒められるしぃ? もっと褒めてくれてもいいんだよ!?」


「ははっ、本当にいいセンスしてるよ。ありがとな」


「え、えへへ……」


 寒いせいだろうか。彼女は頬を(あからめ)ながらドヤ顔から照れ顔へと表情を変えた。この子の表情は本当にコロコロ変わる。見ていて全く飽きない。

 出会ってまだ一ヶ月だけど、俺は彼女と過ごす日々をとても楽しく感じている。人と話すのが苦痛で仕方なかった以前の俺からしたら、考えられないことだ。

 --だから、この質問を彼女にするのははっきり言って怖い。でも彼女のためにも、これを聞かないわけにはいかない。


「なぁトモミン。君は一人前と呼ばれるD級のハンターに成ったわけだが…… これからどうしたい?」


「へ……? どうって、えっと、今後もすんごいハンターになれるように頑張りたいけど……」


「そ、そうか……」


 びびって曖昧に聞いてしまったら、ふわっとした答えが返ってきた。そりゃそうか。俺は足を止めて彼女に向き直った。


「えっと、何というか…… 君は、今後も俺の弟子を続けたいか……?」


「えっ。 --どういうこと?」


「一週間前のD級ダンジョン攻略…… あの時の俺は良くなかった。鍛える事に集中しすぎて、君のメンタルに配慮できていなかった。

 それにボス戦。ボス階層の異常に気づいていたのに、襲撃があるまで撤退を判断できなかった。

 俺は師匠として未熟だ。君も一人前になった事だし、もし師事する人間を変えたいと言うなら--」


「やだ!!」


 悲鳴のような声に、俺は言葉を止めた。トモミンは目に涙を溜めて俺を睨んでいる。

 や、やばい……! 何かとんでもない地雷を踏んでしまったらしい。


「なんで…… 何でそんな事言うの……!? ダンジョンでわがままを言ったから、僕の事嫌いになっちゃったの……? 僕の前から、居なくなっちゃうの……!?」


 悲痛な声と共に彼女が俺に詰め寄る。突然強い感情を向けられ、背中が一瞬で冷や汗に濡れた。


「ち、違うんだ……! ただ、もっと良い師匠に師事した方が君のためになると思っただけで…… 俺が君を嫌うわけないだろう……!?」


「だったらそんな事言わないで! 師匠以外に、僕の師匠はいないんだから!」


「……! そうか…… すまない、変な事を聞いてしまった。なら、その…… これからもよろしく頼む」


「うん……! 勿論だよ! 僕と師匠はこれからも、何があってもずーーーっと、一緒なんだから……」


「お、おう……」


 トモミンの表情は、いつの間にか穏やかな笑みに戻っていた。

 なのに、どうしてだろう。この妙な寒気は……? もう少し着込んでくればよかった。


 --キュゥーン、キュゥーン……


「ん……?」


 その時。『超聴覚』のスキルで強化された俺の耳が、この山では聞いたことのない鳴き声を捉えた。


「あれ。師匠、どーしたの?」


「なにか、子犬の鳴き声みたいのが聞こえたんだ。この山は、そんな声を出す動物も魔物も居ないはずなんだけど……」


「こ、子犬……!? だったら助けに行かなきゃ! 魔物に襲われたら大変だよ!」


「あ、ああ。そうだな。こっちだ。ちょうど熊野郎が居た、消えたダンジョンのあたりだよ。

 念の為警戒しながら行こう。特殊な鳴き声で獲物を釣るタイプの魔物かもしれない」


「りょーかい!」


 俺達は揃って武器を構えると、遭遇する魔物を蹴散らしながら鳴き声の元へ急いだ。


「「……!?」」


 そしてその場所に到着した瞬間、揃って息を呑んだ。

 木々の疎な開けた場所、消えたダンジョンのあたりに、神々しいほどに真っ白な毛並みの子犬がいた。

 ただし、その大きさがおかしかった。顔つきは確かに子犬なのに、その体格はすでに大型犬ほどもあったのだ。


「キュゥーン…… --ワフッ!? グルッ、グルルルルッ……!」


 俺たちに気づいた子犬(?)がこちらに向き直り、牙を剥いて唸り出した。

 この子犬の存在も驚きだったけど、俺達の視線は、子犬が背後に庇う人物に釘付けになっていた。

 地面にうつ伏せに倒れ伏すその女性は、このへんではまず見ない輝くような金髪で、ローブを着込んだ魔導士然とした格好をしている。

 そしてその長い髪から覗く耳は、まるで笹穂(ささぼ)のように尖っていたのだ。


「エルフ……!?」


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