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第五十九話『イオスの理想、ルエルの正体』

「......どういうとこですか...... うっ......」


 俺はイオスの目の前にでた。 その瞬間何か違和感を感じた。


(......なんだこれは...... 今一瞬、同じような事が見えたあの人 リシェやみんなが殺される映像が)


「見た通りだよ」


 イオスは平然と当たり前のように答えた。


「......あなたが、裏切り者だったんですか」


「裏切り者...... はははっ、最初から裏切ってないさ。 ぼくの目的が最初からそうだっただけだ」

 

「王契将がこのようなことをするなんて! なぜ王獣が従っているのです!」


 ルエルがそう吠えた。


「王獣は別に善なる存在ではないよ。 僕たちと同じ主観を持つ生物さ」


「......だけど、とても強い想いがなければ従わないはず」


 リシェの言葉にイオスはうなづく。


「ああ、とても強い想いさ...... ぼくはね、生まれてから周囲がとても愚かに見えた。 だってそうだろ。 金や権力や腕力、そんなものを欲しがって右往左往する人間など愚かとしか思えない」


「............」


「それはなにも持たざるからさ...... 弱くて情けない、だからそれを覆い隠すために力を欲する。 覆い隠すもなにも、そんなものを望むことが弱いと周囲に見せているようなものなのにね」


 そうバカにしたように笑う。


「それでこんなことを......」


 シェイネスが悲しげにそういった。


「そうとても強い想いを持っていたこの世界への不満、だから幼いときからこの未来を見通す【アジャクレシエタ】がぼくのもとに来た」


 そういうとメニフィアが姿を変え蝶の姿になり、イオスの背中についた。


「メニフィアがアジャクレシエタだったのか。 デュラードや皇帝を」


「操ったわけではないよ。 みんながしたいことをぼくの計画に組み込んだだけ......」 


「なんでそんなこと!!」

 

 ティモシーがそういう。


「さっきもいっただろう。 この世界はつまらない。 人も何もかも...... だから最初は神獣を呼び寄せようとした。 この世界に戦乱をおこし、界獣たちを多く殺せば再び現れると思ってね。 だが、君が現れた......」

 

 そういってイオスは俺の目を見据えた。


「俺が......」


「とても、興味深かった! そう未来さえ見通す力を得たぼくが唯一見ることができない未来をもつ君という存在がね!」


 そう歓喜とも悲しみとれるような歪な顔をイオスは見せた。


「......そんなことで戦争なんて、リルを危険にさらすなんて! シェリー!!」


 みんなが一斉に攻撃を加える。 イオスは空を飛び上がり、空中に浮遊する。 


「ふふっ」


 だが、なぜか攻撃は当たらない。 


「なんだ!? 攻撃が当たらない。 アジャクレシエタで飛んでるから...... いや、まさか!!!


「そうさ、アジャクレシエタがそばにいると、ぼくには未来が見通せる。 いかなる攻撃、行動も先に見える」


(それなら......)


「クアト、ザッファ!!」


「無駄だよ!」


 そう言うと、イオスは懐からだした短剣を抜いてそれを振るう。 衝撃波が放たれ俺たちは壁へと叩きつけられた。


「ぐはっ!!」


(なんだこの威力...... 一撃で界獣が帰ってしまった)


「これは、ハルリールと帝国の技術で作った魔巧具だ。 魔星石つきのね。 君の持ってるものとはレベルが違う。 それに君の未来も近くなら見れる。 そうここに倒れた君の姿も......」


 そういって剣を振るうと衝撃波が俺たちを吹き飛ばす。


「がっ!」


 リシェたちもなすすべなく倒れている。


(だ、だめだ...... 未来を見れるなんて対応の手段がない......)


「さあ、覆してくれよ。 この下らない決まった未来を!」


(俺はいい! みんなを!)


 そう願った瞬間、真っ黒い世界にいた。


「ここは...... まさか」


 黒い光が集まり黒いルエルが現れた。 ただいつもの威圧的なその顔は悲しみをたたえていた。


「ルエル......」


「......再び問おうナナミ、諦めよ」


「なんで問うんだ...... 諦めよ...... ダメだ! 俺が諦めたらみんな死ぬ! イオスを止めないとあいつのために世界が、リルも巻き込まれる! すまない力をかしてくれ! 俺の命をお前にやるから!」


 そう懇願する。 静かに聞いていたルエルは口を開いた。


「仮にあやつを倒しても、人の世界は争いが続く。 さすればお前の家族がその命を散らすやもしれぬ」


「だが今、俺は生きている! 生きていればこの世界に平和だって」


「それは無理だ...... かつて、神皇もその理想を抱き、絶望のうちに死した」


「神皇のことをなぜ......」


 その時、城に描かれた壁画のことが不意に思い出した。


「まさか、ルエルお前が神獣なのか......」


 そういうとルエルは目を伏せた。


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