第五十八話『帝都潜入と玉座の影』
「さすがに城は厳重だな......」
登れそうにないぐらい城壁は高く、入り口も巨大な鉄門があり、検閲所が設けられ馬車の列が見えなかなか前に進まない。
「姿を消しても中にはいるのは難しそう......」
「ですね」
「上空をビスティムで見させたが、中も兵士で一杯らしい」
そう偵察にいったティモシーが戻ってきた。
「このまま突破するしかない。 できるだけエトゥロは温存したい。 夜になったらリシェ、シェイネス頼む」
「わかったよ」
「わかりました」
夜まで待ち城壁へと近づくとシェイネスのマジェルクで穴を堀り、地面の下から城壁を越えた。
俺はクリエイスさまから渡された指輪に魔力を込めた。
「魔力を隠蔽する技術があるが、これで乱せばいい。 ルエルどうだ?」
「魔力は感じません」
「それなら召喚士や界獣はいないか...... よし、中央から離れた場所に出よう」
「どうやら誰もいないみたい」
リシェのクリエが小さな穴から先にでて確認したあと、俺たちも地上に出る。 そこは城壁のそばのうらぶれた路地裏だった。
「帝国の都で、この有り様か」
「帝国は軍事に、多額の資金を使ってるから内情は厳しいみたいだな。 国民や貴族、軍人の支持を得るためにも他国を占領して成果をあげなければならないんだろ」
ティモシーは眉をひそめそう言った。
(そのための戦争か。 それなら全世界に戦争を仕掛けたんだ......)
「あそこに城が見えます」
シェイネスがいう方向に巨大な城の先が見えている。
「よし、行こう」
「兵士は多いが住人はいないな」
町を歩くも兵士以外見かけない。
「戒厳令が敷かれて出ることを禁じられているのかも......」
リシェがそう言う。
城に近づく、とても巨大で無機質な城だった。 重武装した兵士たちが周囲を巡回している。
「城の内部からただならぬ魔力を感じます......」
「やはり護衛の召喚士がいるのか。 慎重に中に進もう」
ティモシーのビスティムを上空から安全を確保させ、そこまでエトゥロで転移すると中庭へと出た。
「ここから城内部だ。 気を付けてくれ」
俺たちは城内部へと侵入した。 内部はさすがに豪華な細工の彫刻があちこちにあり、壮麗な内装だった。 しかし所々、修繕が必要なほど痛んでいる箇所もあり、この国の財政の厳しさを物語っていた。
(困窮してでも国の権威を示そうとしてるのか......)
ひざまずく女性とその前に立つ人物の壁画が描かれていた。
「それにしても内部には兵士たちもいない。 侍女や給仕係もいないなんて......」
リシェが言うように、誰とも会ってはいない。 この広さと相まって、それがとても不気味に見えた。
「奥に魔力反応があります」
ルエルの言葉に導かれ進むと、中央に巨大な扉があった。 そこは開いており話し声が聞こえた。 のぞくとそこには玉座の老人とあのメニフィアがいた。
(メニフィアと、あれが皇帝か)
「......進捗は」
そう痩せこけた頬、くぼんだ目の老人は苛立つように靴で床を鳴らした。
「はい、現在、北への侵攻は失敗し、東、西、南の軍も停滞しております」
「くっ! どうなっておる! 侵攻は成功するのではなかったのか! 王契将もこちらに加わらせて、ハルリールを落としたというのに!」
「デュライアさまとデュラードさまの蜂起が失敗に終わり、王契将の消耗とラークエイドの侵略が失敗したことで、王契将が抵抗しております」
そう淡々とメニフィアは答えた。
「くっ...... この偉大なる帝国が、負けるなどあり得ん! 今までどれ程の国を支配したと思っておる! かつてはこの全土すら手中におさめていたのだぞ!
それにあの者はどうした? あやつの言うことに従った結果がこれだ!!」
そう皇帝は苦悩するように両手で頭を抱えた。
(あの者......)
「まあ、そう、焦らないでよ。 計画は順調だよ」
その時、玉座の裏から、姿を現した者を見て俺は戦慄した。
「な、なんで、あの人が......」
それは王契将のイオスさまだった。
「き、貴様! 何が計画だ! やはり全方位に侵攻などやめるべきだった! ゆっくりと一国ずつ倒していれば......」
「そうだね。 それなら帝国はこの世界を支配できたかもしれないね」
「......なんだと...... 貴様がこの計画なら帝国の勝利は、揺るぎないもいったのであろうが!」
怒りのあまり皇帝は立ち上がる。
「このものを引っ捕らえよ!! 何をしておる! みな......」
「ここには君の臣下は誰もいないよ。 このメニフィアが殺したからね」
そう冷たい目を皇帝に向け口元に笑みを浮かべた。
「なにを...... ぐっ」
皇帝が膝をおる。 メニフィアがその腹部を腕で貫いた。
「き、貴様......」
そういうと皇帝は目を見開いて床に倒れた。
「さあ、邪魔者は消えた...... 来なよナナミくん」
そうこちらに向けていった。




