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第五十六話『吹雪の奇襲と影の一撃』

 俺たちは北にあるデクレアへ向かった。


 国境では帝国軍らしきものがいたが、激しい吹雪にあい侵攻できずにいた。


「これは......」


 リシェのクリエで透明になった俺たちはなんとかデクレアにはいる。



「よく来てくれました王契将、リルどの。 それにナナミどのたち」


 女王が感謝しながら迎えてくれた。


「今はどのような状況ですか」


「ええ、かなり戦力差がありますが、ホワイトアントどのが吹雪によって国境線にいる帝国軍を足止めしてくれています」


「あの吹雪はホワイトアントが起こしていたの?」


 メリカ姫が驚くように言った。


「帝国軍が界獣やモンスターを使い、軍を作っていることが許せないと......」


「それなら、時間が稼げますね」


 ルエルがほっとした顔をしている。


「だが、時間稼ぎだな。 早くここを済ませないと、ラークエイドも危険だ。 クリエイスさま、ティモシー、シェイネスがいるとはいえ、帝国はそちらにも兵を進めているはずだ」


「そうだね。 早くここを守りきって戻りましょう」


「......とはいえ、界獣やモンスターの混成軍で、吹雪で押さえるのがやっとの兵力差、押し返すことができません」


 女王が困惑の表情を浮かべた。


「相手の将は?」


「【ラングエル】という帝国の将軍です。 国境に陣取っています」


「界獣やモンスターは魔巧技術で操作されている可能性がある。 それなら将軍を落とせば勝機はあるか...... ただ」


 俺はリルを見た。


(リルの影に入ると魔力は使えなくなる。 魔巧具を飲み込めば勝機はあるが......)

 

「私、行くよ...... この戦争は終わらせたい」


 そうリルははっきりとその意思を示した。


「そうだな...... 私たちが将軍を落とします。 なんとか前線の維持はおねがいします」


「わかりました。 メリカ、あなたも加わりなさい」


「ええ、もちろん」


 その母子の言葉には王族としての覚悟があった。



「それでナナミどうするの?」


 リシェは不安げに聞いた。 次の日、俺たちは前線の砦にきていた。 そばにはホワイトアントがいる。


「ああ、界獣やモンスターは数が多すぎて細かな指示はできないと思う。 だから前線において兵士は後方の陣にいる。 界獣やモンスターと兵士を分断して魔巧具を狙う。 そのためにはホワイトアントとリルのリヴェイラの力が必要だ」


「それはかまわない...... どうすればいい」


 ホワイトアントが聞いた。


「視界を奪えるほどの吹雪をだせるか?」


「ああ、しかし、あまり長くは使えぬぞ」


「かまわない。 俺たちがあの軍の中に入れればいい」


「......わかった」


 ホワイトアントの吹雪は白く細かくなり視界を奪う。


「リシェ姿を消してくれ、メリカ姫は俺たちを重くして、吹雪の中を歩けるように」


「ええ」


「わかったわ」


 俺たちは吹雪の中、砦を出て軍へと近づき、視界を奪われた界獣たちのそばをすり抜けていく。 


「ルエル、頼む」


「はい!」


 ルエルの魔力感知で視界の悪い中歩く、みんなにはロープで体を縛っている。


(やつらは魔巧具をつかっているから、魔力を探知できる)


「この先に多くの魔力の力を感じます」


 ルエルがいった。


(敵陣だな)


「クアト」


 衝撃で陣にある柵を吹き飛ばした。


「なんだ!?」


 兵士が吹き飛んだ音で混乱している。


「ザッファ......」


 ザッファの風によりより吹雪の勢いが増した。


「吹雪か......」


「なにごとだ......」


 大柄な軍服の男が巨大な槍を持ってテントより現れた。


「ラングエル将軍! 吹雪により陣の柵が破壊されました」


「すぐ補修しろ。 界獣やモンスターが暴走したらここが崩壊する。 しかし、この吹雪...... ホワイトアントか。 だがいずれ力尽きる......」


 ラングエル将軍はそういう。


(界獣やモンスターが暴走する...... やはりなにか魔巧具で制御しているのか。 それを見つけられれば......)


「ルエル、魔力を探ってくれ。 これだけの界獣たちを操るには強い魔力があるはず」


「ええ、今探知していますが...... この吹雪の魔力で探知が難しいんです」


「そこをなんとか頼む」


 ラングエル将軍は周囲を確認している素振りを見せた。


「どうされました?」


 地面を丹念に見ている。


「軍靴ではない小さな足跡...... 何者かが侵入している! 全兵構えろ!」


 兵士たちが魔巧具らしい武器を構えた。


(なっ! ばれた!)


「クターニャ!!」


 雪を走り離れたメリカ姫の姿が現れた。


「ぐはっ!」


 兵士たちが雪に埋まりもがいている。 将軍は槍を地面につき差しすぐ出てくる。

 

「お前はメリカ姫だな...... 国のために特攻とは健気なことをする」


 巨大な槍をもちラングエル将軍はにやついた。


「うるさいわね。 さっさときなさい......」


(メリカ姫は囮になってくれた。 早く魔巧具を探さないと......)


 俺もエフェネを使い飛ばすが、見つけられない。


(巨大な魔力を魔巧具で隠蔽してるのか...... そんな力を持つ界獣が前にもいた。 ここでリルの力を使うか...... いやリルの精神的にそのチャンスは一回だ。 絶対にはずせない)


「くっ......」


 将軍の槍さばきにメリカ姫は苦戦している。 


「なにをしている貴様たち! さっさと出ろ!」


 埋まってもがく兵士たちに発破をかける。 


(このまま兵士たちが出てくると、メリカが危険だ! 仕方ない)


「シェリー! クアト! ザッファ!! ギュラ!!!」


 俺は姿を現して兵士たちを倒した。


「やはりまだいたか...... しかも複数の界獣を使う」


 少し吹雪が弱まり、この異変に気づいた兵士たちが集まり周囲を囲んだ。


(限界か...... ただ吹雪が弱まって、ルエル探知がしやすくなったはず...... ここは時間を稼ぐ)


「はぁぁ!!!」


 将軍の槍が炎を吹き出した。 それをなんとかかわす。 メリカも兵士たちと交戦している。


「くっ...... ここだ! シェリー!!」


 ギリギリ槍をかわし、懐にシェリーをはなった。 将軍はそれを弾いた。


「なっ!!」


「この軍服も魔巧具だ。 そのような攻撃では貫けん!」


 炎槍を腕で受ける。 熱と衝撃で吹き飛ばされた。


「ぐわっ!!」


(この力! なにも使わなくても強い......)


 槍を突きつけられた。 その時、ルエルが飛び出し将軍にぶつかる。


「ルエル!!」


「見つけました!! あのテントの真下です!」


「このブタが!!」


「ミリエラ!!」


 槍をミリエラが凍らした。


「なっ!? 槍が! まだいたのか!」


「リル! テントの真下から影に飲み込め!!」


「うん! リヴェイラ!!」


 リヴェイラが影からテントを飲み込むと空に飛んだ。


「みんな走れ! エトゥロ!!」


 俺たちは鏡に入り込む。 陣が見える丘に飛んだ。 土煙のなか界獣やモンスターが陣を飲み込んでいくのが見えた。





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