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第五十五話『ギラルドの理想と王契将の分岐』

「なんとか拘束できたか......」


 デュライアを拘束してフィグルスさまは一息をついた。 


「まさかデュライアが裏切っていたとはね」


 イオスさまが座り込み微笑んだ。


「しかし、ギラルドはデュライアの能力だったのか。 やはりやつは死んでいた」


 シェルディオさまが考え込むようにつぶやくと、サンフォイザさまが腕を組む。


「ああ、しかもデュライアまで失うと、各国の動きが気になるぜ」


「うむ、このままだと自制がいつまで続くか......」


 その時、部屋にシャガが入ってくる。


「これは一体!?」


「おせえぞ! こんだけ暴れてんのに! なにしてやがった!」

 

 サンフォイザさまがそう一喝した。


「なぜか外に音が聞こえなくて...... それより、大変です! 帝国が侵攻を始めました!」


「なっ!! このタイミングで!」


(やはり、ここで王契将を弱らせるか、削るつもりだったのか......)


「くっ...... シャガ、それでどこを攻めている!」


「それが、どうやら全方位へと兵を進めているようです......」


「全方位!? そんなことは帝国の兵力といえど、自殺行為!」


「いえ、どうやら界獣、モンスターなど入り交じった軍だとか......」


「界獣、モンスターやはり何か魔巧技術を使っているのか...... 我らも出る! 皆用意させろ!」


 フィグルスさまはそう指示する。


「......無駄です。 もう」


 目が覚めたらしい拘束されたデュライアが部屋の隅で言った。


「無駄とはどういうことだ」


 そうシェルディオさまが問いかける。


「......この世界は終わります。 界獣、モンスター、人、全てが無に帰すのです」


「どういうことか説明してくれるかな......」


 イオスさまの問いに、デュライアは笑みを浮かべた。


「無意識の世界に皆帰るのです。 この争いと憎しみの覆う地獄から、皆がひとつとなる世界へと......」


「そのために帝国と手を組んだのか!」


 サンフォイザさまが語気を強めた。


「ええ、私たちがいくら調整しようとも、この世界から醜い争いは消えません。 ただ無為に延命させるだけ...... いつかはこの世界を自らの手で滅ぼすことになるでしょう」


「だから滅べというのか......」


「そうです。 秩序をいくら構築しても、愚かな為政者は己が欲で争いを繰り返す。 悲しみと憎しみだけが残るならば、元のひとつに戻るべきでしょう」


「全ての為政者がそうではなかろう......」


「そんなやつにかまってる暇はねぇ! 俺は行くぜ!」


 そうサンフォイザさまが背を向けた。


「......かつてギラルドさまを討って、自らの保身に走った為政者たちを、助けに行くとでも」


 そうデュライアは薄くせせら笑う。


「なんだと...... そりゃどういうことだ」


「私たちがまだ王契将ではない時代、ギラルドさまは各国に協定を作るように進言しました」


「従えようと国を滅ぼしたのだろう」


「違います...... それは独裁により民を虐げていた国だけ。 独裁を続けたい国の王たちは時の王契将にギラルドさま討伐を依頼した。 あのガルグルムも......」


「それで討たれたか......」


「ギラルドさまは、同じく私たち戦災孤児が生まれないように、世界をひとつにしようとしていた......」


 そう言ってデュライアは唇をかんだ。


「ギラルドがどんな理想を持ってたかは知らねえが、国を滅ぼしたのは事実だろ! 俺たちはこの世界を守る! 俺は西にいく!」


 そういってサンフォイザさまは部屋を出た。


「うむ、貴様に理由があれど、我らが目指すものはこの世界を、民を守ることだ。 私は東に行く」


 そうシェルディオさまはマントを翻して、その場を去った。


「デュライアよ。 その復讐心こそ争いの本質だ。 そなたは結局、その独裁者たちとなにも変わらぬ。 奴らとて苦しい幼少期があったかもしれぬのに、己が欲に飲まれたのはそなたなのだ」


 そうフィグルスさまに言われ、デュライアは床を見ている。


「......ナナミ私は南に向かう。 北はリルたちとそなたが行ってくれ」


「わかりました......」


 俺たちは北へと向かうことにした。

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