第五十四話『ビジュラカードの召喚と影の逆転』
ハリベイルさまの死去は各国に伝わると、兵を集め始めたという話が伝わる。
「まずいな...... 各国が動揺しているみたいだ」
「帝国がいなくても、もとより各国は領土や資源で対立がある。 どこかが先走って兵を増やしたことで疑心暗鬼になって、ドミノ式に兵力を増やし始めたのだろう」
クリエイスさまがそういうと、メリカ姫もうなづく。
「ええ、他の国に対してだけじゃない。 国の中にも対立はある...... 内戦も起こるかもしれない。 私の国も......」
深刻な顔をしてメリカ姫がいう。
(そんなことになればホワイトアントがどういう動きをするかわからないからな。 それは心配だろう。 ハリベイルさまを倒した者は、これが目的だったのか...... 王契将を狙っているのか)
その後、フィグルスさまからリルへ召集の要請がきた。
「皆よくきてくれた」
フィグルスさまがそう言う、場には王契将が集まっている。 俺はリルのお付きとして同行を許可されていた。
「さすがにハリベイルが倒れたのだからね。 集まらざるを得ないよ」
イオスさまがそう言うと、シェルディオさまがうなづく。
「そうね。 ガルグルムを狙ったやつかもしれない。 それなら私たちも狙われると考えるのが妥当」
「固まって返り討ちにでもするのか。 こっちからうって出ればいいだろうが」
「サンフォイザ、どこにいるかわからないものを討ちようがないでしょう」
静かにデュライアさまが言う。
「そうだ。 何者か分かれば対策もとれるが、どこにいるかもわからない者を個別に探しても狙われるだけだ。 これ以上、王契将を失うわけにもいかん」
フィグルスさまが眉をひそめた。
「ええ、もう各国の緊張も限界に達する。 かろうじて私たちの存在がそれを抑えているけど、何かで暴発すれば一気に各地で戦争が起きるわ」
(シェルディオさまの言う通りだ。 ラークエイドも俺たちに協力を要請してきている。 このまま長くは持たない...... 気になるのはハリベイルさまは帝国と手を結んでいたはず...... なぜ彼が狙われた)
「フィグルス、何か手はあるのかよ」
サンフォイザさまがそう問う。
「今回、私たちを呼んだのは私ではなく、デュライアだ」
デュライアさまに皆の視線が向いた。
「......ええ、私があなたたちを集めた」
デュライアさまが静かにそういって立ち上がる。 空気が押されるような圧迫感が起こる。
(なんだ!?)
「すごい魔力の高まりを感じます!」
ルエルがそう言うと同時に、デュライアさまの周りの空気が震える。
「なんだ!?」
「デュライア!!」
「......あなたたちはここで葬る...... 【ビジュラカード】」
そうデュライアさまがいうと、空間が歪みねじ曲げると黒い鏡ができ、その中から巨大な長い鎌を持った巨漢の男が現れた。
「バカな!!」
「あれはギラルドか!!」
「ではまさか、デュライアが二人を!!」
「グランメイル!!」
「アジャクレシエタ!」
「イルティーナ!!」
「バルブロバス!!」
全員が王獣をだした。
「リルを守れ!!」
俺が界獣たちをだす。
フィグルスさまが巨大な鎧の姿となり巨漢の男──ギラルドに向かう。
「【リングレイアス】」
ギラルドがそう言うと、地面からタコのような吸盤のついた触手が出て、その場の全員の体を拘束した。
「くっ! なんだこれは! 柔らかすぎて俺の糸でも切れない!」
サンフォイザさまがそう言った。
「ちっ! 私のイルティーナで切ろうとすると体も切れてしまう! 私が押さえるからお前たちは拘束を解け!」
シェルディオさまが水で触手を切り裂きギラルドと戦っている。
「くそ! リシェのミリエラなら凍らせられるのに!」
(炎で...... いや、体も燃える。 風できれるか!)
ザッファの風でも触手は切れなかった。
「ダメか!! 柔軟だから強度もある! なんとか!」
(リルだけでも逃がさないと...... リル)
「リル! 界獣をだせるか! 影の中に俺たちか、触手を飲み込んでくれ!」
「わかった! リヴェイラ!」
地面の影から巨大なエイが空中に跳んだ。 そして口を開けると触手を飲み込んだ。
「拘束が解けた」
「......厄介な。 ビジュラカード」
デュライアがそう呼ぶと黒い鏡からハリベイルさまが現れた。
「あれはハリベイルさま!?」
「......ランズアーガ」
黒いクラゲが現れると、体が地面に押し付けられる。 その重力の中、それを押しのけフィグルスさまはハリベイルさまにつかみかかった。
(フィグルスさまこの中で動けるのか! それにあの鏡の能力はコピーか!! それに転移、ガルグルムさまの遺体が消えたのは転移させられたからか!)
「サンフォイザさま! エトゥロ!」
「任せろ! バルブロバス」
サンフォイザさまの前にエトゥロをだし、サンフォイザさまがその中に糸を放つと空中から糸が出てデュライアを切りつけた。
「きゃあああ!!」
デュライアは倒れ糸に拘束される。
「よし! シェリー!!」
光となったシェリーは空中に拘束されたデュライアを貫いた。 デュライアがぐったりうなだれるとギラルド、ハリベイルさまは、泥のように崩れていった。




