第五十三話『王契将の死と揺れる国々』
「ナナミどの、リルどののおかげでデュラードの反乱は制圧できました。 感謝しております」
そうラークエイド王は礼を述べた。
「それにより、リルどのの町、その周辺は領地として認め、国として認可します」
そう側近が書状をリルに渡す。
「ありがとうございます」
リルは受けとるとそう礼を述べた。
(ちゃんと対応できてる...... あんなに人見知りだったのに)
その成長に少し感動する。 リルは侵攻しようと動く敵軍に対し、界獣リヴェイラを使って影の中に閉じ込めたという。
「今後とも我が国とよき関係をつづけられることを願います」
「こちらこそ、お願いします」
毅然とした態度でリルは王の言葉を受けた。
「それにしても、あっさりラークエイド王は領地を認めたね。 私はもっとなにか制約を結ぼうとしてくるのかと思った」
そう、ティモシーがいう。
「友好的な独立国家としておくほうが利点があるんだろう。 リルは王契将で今回の戦いで民からの信頼もある。 敵対しない方がいい、しかも帝国と戦うにはその戦力が欲しい。 もし不満があるなか併合などしようものなら、裏切りを招くかもしれないからな」
クリエイスさまがいうと、なるほどとティモシーはうなづいた。
「それより......」
クリエイスさまは沈黙した。
(そう、今の問題はハリベイルさまが帝国と繋がっていたことだ。 フィグルスさまに手紙で伝えたが、どうすればいいか)
俺は曇る空を見て不安に襲われていた。
「手紙は読んだ......」
考え込むようにフィグルスさまは話した。 俺はフィグルスさまに会いに来ていた。
「あれは確かかナナミ......」
静かにそう問う。
「本人か断定はできませんが、少なくともルエルがいうにはかなりの魔力を持つもののようです。 それこそ王契将クラスの......」
「......まさか、ハリベイルさまが」
「信じられねえが......」
ミルニークとシャガが言葉を失っている。
「ハリベイルは効率や合理性を重んじる男。 不正に手を染めるなどあり得ぬが、もし帝国に与するのがその信念にあうならば、そのようなこともするかもしれぬ」
「帝国による平定を望んでいると......」
「あり得なくはない。 このままだと帝国による他国への侵攻はいつか起こる事象。 そうなるならば、より被害の少ない方に荷担する可能性はなくはなかろう」
「しかし、王契将を捕らえられませんよ。 フィグルスさま」
「ああ、王契将を捕らえるならば、最悪二人以上の王契将は必要だろうな。 イオス、デュライアは戦闘むきではない。 リルはまだ力に覚醒してすぐだ。 ならばサンフォイザ、シェルディオのどちらかの説得が必要だが、確たる証拠がなければ動くまい」
「証拠...... しかし、ルデアナとデュラードの二つが失敗している今、すぐには動かないのでは......」
ミルニークはそうフィグルスさまに答えた。
「いや、戦争中にデュラードのもとから離れた理由がわからん。 それほどデュラードが重要ならば守りきるだろう」
「確かに、ラークエイドを南から攻めて、帝国と呼応すればラークエイドを落とせたかもしれない。 それをしない理由......」
(他の国との戦争のために、なるだけ被害を出さずに戦争を終わらせたかった。 いや、ここまで力を貸しておいて切り捨てるのは無駄が多すぎる)
その後、町に帰ると急報が届いた。
それはハリベイルさまの死を伝えるものだった。
「まさか、ハリベイルさまが......」
「ええ、ハリベイルさまの【ミレンダ】国は滅ぼされたらしいよ」
そうリシェは言った。
「一体誰が......」
「どうも、一人の召喚士のようだ」
クリエイスさまがいった。
「国を滅ぼし、王契将を倒せるものですか......」
イズはリルの隣で不安そうな顔をしている。
「まさか、ギラルド......」
そうメイマールさんが口にだすと、シェイネスは立ち上がった。
「待てよ」
「しかし......」
「まだギラルドかはわからない。 しかも相手は王契将を倒せるもの。 一人でいっても命を失うだけだ」
「............」
シェイネスは震える拳を握り、唇を噛んでいる。
「シェイネス......」
リルはそうつぶやく。
「ここは、もう少し情報を得てからだ」
「そうだな。 王契将の死去で各国に動揺が広がる。 少なくともリルが国を得たことがかなり抑止力になるだろう」
クリエイスさまがいった。
(なにが起こっている。 ハリベイルさまは帝国に手を貸していたんじゃないのか......)
わけがわからぬまま、俺たちは事態の推移を見守ることにした。




