第五十一話『雪解けの町、火種の国境』
「そうでしたか...... 女王としてホワイトアントどのにはお詫びのしようもありません」
そう女王は頭を下げた。 俺たちはホワイトアントを連れ、城へと戻っていた。
「......争いなくばかまわない。 かつてそなたたちの祖と約束したのだ。 この国に争いが起これば、その悲劇を摘み取ってくれと......」
そうホワイトアントは答えた。
「まあ、何はともあれ俺たちの任務は完了だ」
シャガは背伸びをした。 ホワイトアントは国が保護することとなった。 俺たちは国に帰るべく馬車にのっていた。
「ですね。 わざわざ敵対しない界獣を倒さなくてよかったです」
ルエルもほっとしているようだ。
(ただ腑に落ちない。 ホワイトアントを手に入れるために禁獣を離したのか、もしホワイトアントを目覚めさせるためなら、なぜそれを知り得た......)
「そうね。 私もお会いするのが楽しみだわ」
荷台から声がする。
「まさか!?」
荷物の影からメリカ姫が現れた。
「なんで姫さんが!」
「国にはホワイトアントがいてくれるから、私はそとを見て回りたいの。 ナナミ、あなた王契将の町にいるんでしょ。 私より年下で王契将だなんて、見てみたいじゃない」
「おい、どうするんだナナミ? 一度戻るか」
シャガが俺に聞いた。
「もう国境も越えた戻るのは手間だ。 まあ迎えがくるまでならいいんじゃないか」
「そうこなくちゃ!」
「俺はしらないぞ」
あきれたようにシャガがいう。
「えっ! ルデアナのメリカ姫様!?」
リシェたちが驚いている。 俺たちの町に姫をつれてきていた。
「ええ、私がメルカよ。 よろしく!」
そう屈託なく挨拶した。 そしてすぐ楽しそうにみんなと話し始めた
(姫様は、貴族階級の意識がないな。 すぐ誰とでも打ち解けられる)
「すごいわねぇ! こんなに魔巧具で豊かになるのね!」
町を歩きながら姫は興奮している。
「うちの国に導入したいわ! できる?」
「ええ、できますよ」
クリエイスさまがうなづく。
「ホワイトアントの脅威は去りましたよね」
「もともとうちの国は北にあるから寒いの。 この技術なら国を暖められるわ。 みんな喜ぶ」
そう顔をほころばせながら、姫はクリエイスの説明を聞いている。
(交易ができそうだな。 ルデアナには鉱物があるらしいし...... 織物などの技術が高いという)
俺はこれからのこの町のことをぼんやりと考えていた。
そんなおり、ついに危惧していた事態が起こった
「デュラードが独立を宣言し攻めてきた......」
そうラークエイド王は眉間にシワを寄せた。 デュラードは独立を宣言し、武装蜂起し、ラークエイド領土を攻撃し始めたという。
「やはり、そうなりましたか......」
「ナナミどの、リルどの約定の件お願いできますかな」
「ええ、しかし他の領主も呼応していますが」
「そちらは構いませぬ。 あなたからの忠告通り、周囲を監視していたので、対応が可能でした。 多くの領主は降伏しております。 しかしデュラードの軍は魔巧具を持ち、精強でそちらに兵をだすとこの城が落ちます」
そう側近が説明した。
「わかりました。 我々でデュラードを止めます」
「お願い致す」
俺たちはデュラードを止めるべく、国境沿いまで向かった。
「リルを、前線にだすのは......」
「仕方ない。 リルが王契将として指揮を取ってなければ約定を破ることになる」
クリエイスさまがそういうと、リシェもうなづく。
「リルは私たちが必ず守るよ。 ナナミはデュラードを止めて」
「わかった。 必ず止める」
俺とルエル、クリエイスさまは国境でのにらみあう軍を離れて、デュラードを止めるべく動いていた。
「クリエイスさま、デュラードは軍を指揮していないようですね」
「ああ、もしデュラードが落ちればカリスマだけで成りたってるデュラード軍は瓦解するからな。 おそらく城にこもっている」
「つまり、デュラードさえ捕らえられれば......」
「マスター! 魔力の反応が......」
「どこだルエル!」
「後ろから」
「後ろ...... まさか、メリカ姫ですか」
木々の間からメリカ姫が顔をだした。
「なぜついてきたのですか! 危険すぎますよ!」
「ナナミには国を救ってもらった恩があるからね。 私の力ならかなり役に立つわよ」
「無茶な......」
「ナナミ、ここは同行してもらおう。 帰すのも危険だし、彼女の能力は稀有なものだ」
「さすがクリエイスさまね!」
にっこり笑いながらメリカ姫は近づいてきた。




