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第五十話『冬の王と静寂の対話』

 銀狼がこちらに向かってくる。 


「クアト!!」


 クアトの衝撃波が銀狼を押し止める。


「くっ! 飛び越えなさい!」


 銀狼が飛び上がる。


「ザッファ!!」


 ザッファが現れ、その体を風となり銀狼ごと姫を吹き飛ばした。


「きゃあああ!!」


 銀狼はその姿を消した。



「なにすんのよ! 離しなさいよ!」


 縄をかけると、姫様はじたばたと足をバタつかせていた。


「よく捕まえられたな。 あんなすごい力を持っていたのに」


 シャガが首を捻る。


「ああ、あの銀狼は重さを操っていたんだ」


「......なるほど、だから雪でもつぶれなかったし、雪の上も跳び跳ねられたのですね」


 ルエルが首をふりながらいう。


「それでジアルガも地面に埋めたのか...... 確かにおまえのクアトやザッファの衝撃波や風ならやれるな」


「卑怯もの!! 正々堂々勝負しなさいよね!」


 姫は悪態をついている。


「姫様、女王さまが心配しています。 我々と帰りましょう」


「いや!! この国はどんどん寒くなってるの! このままだと、民の生活もなりたたなくなるわ!」


「それが禁獣のせいなんですか?」


「......そう。 封印が弱まってるの」 

 

 そう悲しげに目を伏せた。


(姫なりに国を思っているのか...... しかし危険すぎる)


「兵士たちが合流するまで待機だな」


「待ってください...... なにかとてつもない魔力がきます」


 そうルエルが山向こうを見て真剣な顔でいうと、地響きを起こして何かがこちらに向けて迫ってくる。


「嘘でしょ...... あいつが、【ホワイトアント】がもう封印が解けた......」


 姫様のその声は震えていた。


「シャガ...... 姫様の拘束を解いてくれ」


「ああ...... 逃げられそうか」 


「......無理だな」


 俺たちは構える。 その巨大な黒い影が雪ごしにみえる。 それは巨大な蟻だった。


「こいつが、ホワイトアント」


「ええ、雪を操る【冬の王】よ」


「......人か、我を再び封じるつもりか...... いや、もうあの者は死しておるはず...... 人は脆弱なものだな」


 そうホワイトアントは静かな声で答えた。


「ホワイトアント、すまないが再び眠りについてくれないか」


「......それでどうなるというのだ。 人の世がよくなるとでもいうのか」


「あんたのせいで、雪におおわれた私の国は滅ぶのよ! クターニャ!!」


 現れた銀狼は咆哮すると、地面を駆けて、ホワイトアントに飛びかかった。


 ドオンッ!!


 大きな音をたてその蟻に乗ったが、蟻はものともせずその場にいる。


「嘘でしょ...... 最大の重さで乗ったはず。 それで無傷だなんて......」


 姫様は言葉を失っている。


「やめてください姫! ホワイトアントと話をしましょう!」


「......無駄なこと、お前たちは争いをやめられない。 雪に飲まれ静かに死すべき、それがお前たちの幸せ」


 そういうと口から凍えるほどの息を吹き出した。


「くっ......」


「仕方ない! やるぞ! ジアルガ!!」


 シャガはジアルガをだす。 ジアルガはその腕で蟻の顔を殴る。 蟻はぐらつくがすぐさま脚で踏み潰そうとした。


(ジアルガでもぐらつかせるぐらいか、表皮がかなり固い! シェリーでも貫けないな)


「クターニャ! 行きなさい!」


「待ってください姫!」


「なによ!」


(二人の界獣は強いが、あの表皮を破れるとは思えない)


「姫! かつてホワイトアントはどうやって封印したのですか!」


「どうやってって...... 祖先が、話して説得したときいたけど......」


(説得......)


「どう説得したのですか?」


「その当時、国々が争っていて、ホワイトアントがでてきた。 それをかつての王が戦いを治めることを条件に封印したって......」


「そうか...... シャガやめろ!」


「なんだ!?」


「ホワイトアント、あなたは戦いを好まず、戦争を止めるために封印された、そうだろう?」


「......そうだ。 我ら界獣はこの世界に来たかっただけだ。 だが、この世界は争いに満ちていた。 人間たちの戦争が、憎悪や悪意が界獣をモンスターと変える。 それをやめさせたかったが、今をもって争いがなくならぬ」


「そうだな...... 人は争っている。 しかし止めようともしているんだ」


「だが、この国で争い、かなりのモンスターの魔力を感じた。 それゆえ我は目覚めた」


(あの禁獣か)


「あれはオーバーロードシルクワームという禁獣がどこかからこの国に呼び寄せられ、その力でモンスターが現れたんだ」


「この国に争いはないと言うのか......」


「今は帝国という国が、その戦争を主導している。 他の国々は比較的平和だ。 

モンスターの魔力を感じるか」


「......確かに、モンスターの魔力はあまり感じない」


 そのホワイトアントの目から敵意がおさまるのと同時に吹雪が少しずつ弱まってきた。

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