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第五話『魔力の限界と界獣の絆』

「おお! このカードにお金が入ってるのか!」


 協会に戻ると、受付嬢から銀色の薄い金属のカードをもらった。 その中央には小さな青い宝石が埋め込まれている。


「ええ、魔巧具ですね。 そのカードに情報が記憶されるようです」


「よし、さっそく食事と宿だ!」


 町を歩き食事処で夕食をとる。


「さて、一服したし、今後どうするかだが......」


「帰るために召喚士を探されるのでしょう?」


「ああ、でも受付嬢は召喚士は知っているが、異世界から人を召喚するほどの力を持つものは知らないといっていたぞ」


「ええ、私も知りませんね。 ですが、誰かがあなたを召喚したのは間違いありません。 かなりの力を持つものでしょうね。 あなたがこの界隈で有名になれば、向こうとの接点も持てるのかもしれませんよ」


「ふむ、そうだな。 じゃあとりあえず仕事をして金を手に入れるか」


「今はそうするしかありませんね」


 俺たちは宿に泊まった。


 

 朝から岩山をのぼっていた。 


「ファ......、眠いな。 なんか夢を見たから寝不足だ......」


「どんな夢ですか」


 ルエルが聞いたので思い出そうとすると、よく覚えていない。 ただ誰かが死ぬ夢だったような気がする。 朝起きたら汗でびっしょりだった。


「まあ悪夢は吉兆といいます。 良いことが起こる前兆かもしれません」


「そうかな...... えらくリアルな感じがしたんだが...... おっ! ここが依頼のモンスターのいる山か。 すごい報酬だから、倒せばかなりの資産になるな」


「ええ、しかしかなりの強さらしいです。 まあこの道は迂回路で人のとおりは少ないですが、討伐対象らしいですね」


「でも、そんなに界獣ってモンスターになるのか」

 

「強く願えばそれだけそこに存在の力、魔力がたまります。 こっちに来たいものがそこに集まり、無理やり出てきてしまうんです」


「それほど向こうにはこっちの世界は魅力的なんだな」


「ええ、世界というより肉体を持つのは夢ですからね。 それにモンスターになるのはその魔力の質に問題があるんです」


「質?」


「ええ、願いにはいい願いも悪い願いもあるでしょう? ポジティブなものではなくネガティブな願いは、界獣に強い影響を与えます」


「つまりネガティブな魔力がモンスター化させてしまうってことか?」


「そうです。 人の世界は戦争や貧困などネガティブな魔力の方が多くなると、界獣は影響をうけ、攻撃性や凶暴性をもつモンスターと化してしまうのです。 もちろんポジティブな魔力で生まれる界獣もいますけどね」


「なるほど。 世界の影響も大きいのか。 ということはこの世界は今あまりいい世界ではないってことだな」


「......残念ながら、多くの戦争があり、特に【グラスファード帝国】が他の国を支配すべく行動しているようですしね」


(帝国か...... まあ、今の俺には関係ないか)


「魔力を感じます......」   


 ルエルが立ち止まる。


「どこだ? なにもいないぞ」


 警戒しながら周囲を見回すが、どこにも姿が見えない。


「確かに近くにいるのですが......」


 不思議そうにルエルはいった。


「ここのモンスター【ロックトード】だっけ? 確か岩のカエルだったよな」


「ええ、固い皮膚をもつカエルだと聞いていますよ」


 その時、地面が動いた。


「なんだ!? まさか!!」


 その瞬間周囲に壁がせりあがると暗闇に包まれた。 


「うおっ!!」 


「わあああああっ!!」


 一瞬、浮遊感を感じると落下して地面に落ちた。 


「くっ...... これは、シェリー」


 シェリーを呼ぶと灯りがついた。 そこは壁が真っ赤で時々脈打っていた。


「これってまさか...... 口の中か」


「みたいですね。 どうやら我々はモンスターの上を歩いていたようです」


「しかも落とされたな。 上がみえん。 空気も薄いな」


「ええ...... ん? 水滴、痛っ」


 ルエルが痛がっている。 その体から煙のようなものがあがっていた。 上から落ちてくる水滴によるもののようだ。


「まずい!! これ胃液か! 溶かされてるぞ!!」 


「ひぇぇ!!」


「シェリー!! 壁を撃ち抜けるか!!」


 シェリーは光となって壁にぶつかるが、跳ね返った。


「ダメか! このままだ溶かされる、すまない帰ってくれ」


 シェリーは消えていった。


「クアト、ギュラ!!」


 クアトとギュラを呼び出して壁を攻撃させるが、壁はびくともしない。


「ダメか...... 帰ってくれ」


 叩くと固い岩のようだった。


「何か他の界獣を呼ぶしかないですね」


「みたいだが、シェリーですら貫けないんだ。 一体なにをイメージしたらいいんだ」


「確かに...... この壁を貫けるものは難しそうです。 イタタっ!!」


「あまり悠長にしてられないな。 このままだとすぐに溶かされてしまう」


(ここから出られる力を持つもの! 頼む! 俺の声に答えてくれ!!)


 その時視界が歪む。 頭をハンマーで殴られたような衝撃がある。


「な、なんだ......」


「このままだと危険です! どうやらかなりの強さの界獣が来ようとしてます! お止めください! 魔力がなくなるとあなたも消えますよ!」


「い、いや......このままだと、どっちにしても死ぬ...... こい!!」


「しかたない!!」


 ルエルが俺の足にさわると、少しだけ痛みが和らぐ。


 その時、空間が歪み、目の前に大きな丸い黒い鏡のようなものが現れた。


「......トゥエロ」


「トゥエロ......」


 黒い部分から風がはいってきた。 


「ルエル! 行くぞ!」


 覚悟を決めルエルを抱いて黒い鏡に飛び込むと、そこは山だった。 後ろに巨大な岩山がある。 それはカエルのようだった。


「これは、あいつはロックトードか。 まさか外に転移したのか......」

 

 その時、ルエルがぐったりしてるのがわかった。


「おいルエル!!」


 ルエルを揺さぶるも反応がない。 目を閉じ、呼吸も浅いようだ。


「おい、しっかりしろ! 死んだら丸焼きにして食うぞ!」


 俺はルエルを抱きしめ、山道を逃げた。


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