第四十九話『雪嵐の姫と銀狼の牙』
「お前たちのおかげであのオーバーロードシルクワームを倒せた」
そうサンフォイザさまが礼をいった。 オーバーロードシルクワームが死んだことで、他のモンスターも散り散りになっていった。
「ええ、まさか羽化するとは思いませんでしたね」
「ああ、俺が見た時もイモムシだったからな...... お前たちがいなければさすがにやばかったぜ」
そうサンフォイザさまは笑顔で答えた。
(この人が本当に裏切っているのか。 わからない......)
「あのモンスターは魔力結晶はなかったですね」
馬車の中でルエルがそういった。 俺たちはルデアナ女王から城へ招かれていた。 サンフォイザさまは面倒だといって帰っていった。
「では帝国の関与はなかったということか」
シャガがほっとしたようにいう。
「......そうとは限らない。 前も帝国かはわからないが、禁獣を転移させたやつもいた」
そういいながら、ゼグドのことを思い出す。
「なら帝国の関与も否定できないな」
「ですがお二人は、この国の危機は救いました。 その事は事実なので胸を張りましょう!」
ルエルは鼻を鳴らし、胸を張った。
「まあ、そうだな!」
それにあわせてシャガも簡単にいった。
(シャガもお調子者だな)
「おっ! ついたぜ」
シャガはルエルとはしゃいでいった。
城にはいる、雪のように白いその城は美しかった。 王の間に通された俺たちは白い髪の女王の前で膝まずいた。
「そなたたちがナナミどの、シャガどのか。 私はこの国の女王、【ビルディオラ】。 此度の一件、そなたたちのおかげで我が国は救われた。 感謝しよう」
そう女王が礼をいう。
「ええ、ですが、サンフォイザさまがあの禁獣を倒しました。 我々はその手伝いをしたまでです」
「聞いておる。 しかしそのサンフォイザどのが、そなたらの功績を高く評価しておったとも聞いている」
そう女王は微笑んだ。 しかしすぐ真顔になり、困惑した表情を浮かべた。
「なにか......」
「ふむ、そなたらに助けられたので、申し上げにくいのだが、もうひとつ頼みごとをしてもよろしいか。 もちろん報奨はとらそう」
(報奨......)
「なにかようなんですか?」
シャガが聞くと、女王は眉間にシワを寄せ語り出した。
「ああ、この国に禁獣がおることはしっておるな」
「ええ」
「その禁獣はかつて、我が祖先が話して封じた。 その封印が解けかかっておるのだ。 あの者がよみがえればこの国が危ぶまれる...... 我が娘が勝手に向かっている。 止めてほしいのだ」
(禁獣を姫様が)
「お止めすればよろしいのですね」
「ああ、禁獣は悪ではない。 倒してはならぬ。 兵士も向かわせておるが、あの子が言うことを聞くとは思えない。 すまないが力ずくでここまで引きずってでもつれてきてほしい」
(姫様を連れ戻す...... か。 この国とも懇意にしておいたほうがいいか。 それに親として子供が心配なのはわかる......)
「わかりました。 私たちが連れ戻します」
「あの子は西の遺跡に向かった。 行く道は険しい。 今からなら追い付けるはず...... 頼みましたぞ」
そう女王から頼まれた。
「おいおい、姫様の子守りかよ」
「そうぼやくなよ。 女王が困ってるのはわかるだろう」
「そうですよ」
「わかったよ。 やるよ」
俺たちはその【メリカ】姫を連れ戻しに西にある遺跡へと向かった。
「かなり吹雪いているな。 姫様は大丈夫なのか」
シャガがそういう。 吹雪の中、俺たちは姫様を探して山道を進む。 兵士たちは吹雪で動けず止まっていた。 吹雪が強い中では遭難の可能性があるため、彼らをとどまらせて俺たちは先に進んだ。
「ああ、俺たちはエトゥロで飛びながら移動しているが、姫様は歩きだろう。 どこかに倒れてないか。 調べながら行かないと」
「その姫様は召喚士らしいな」
そうシャガがいった。
「ルエル感知できるか......」
「吹雪なので集中力が保てなくて......」
「まあ、確かにこの吹雪で集中できないな...... エフェネも無理だな」
「なんなのよ! この吹雪!!」
吹雪で音もかき消される中、大きな声が響き渡る。 近づくと白い髪の少女が地面を踏みながら怒っている。
「まさかあれか......」
「こんな山奥にいるんだから、だろうな」
「ずいぶん元気なお姫様ですね......」
あっけにとられていた俺たちに姫様は気づいた。
「あんたたちだれ!? まさかお母様からの追手! 帰らないからね!」
「いえ、帰っていただきます」
「いや! 私は禁獣を封印するんだから! あいつのせいでこの国は吹雪がやまないのよ!」
「わがままいうな。 力づくでも構わないと、いわれてんだよ」
そうシャガが近づくと、姫様はニヤリと笑う。
「私を止められるとでも...... 【クターニャ】」
姫様が呼ぶと、空間が歪み銀の狼が現れた。
「狼...... ジアルガ!!」
シャガが呼ぶと、ジアルガは雪をかき分け銀の狼をつかもうとする。
「遅いわよ!! クターニャ、遊んでおあげ!」
銀狼は雪を沈むことなく跳ね飛びながら、ジアルガの腕に噛みつき投げ飛ばした。
「なっ!!?」
(この雪の上を沈まないのか...... なんの能力だ。 氷や雪...... 違うな。 それにかなりの重さのあるジアルガを簡単に投げ飛ばした)
「くそっ!! なんだ! ジアルガ! 跳んで地面を叩け!」
ジアルガは跳んで地面を叩いた。 その衝撃で銀狼は大量の雪に飲まれた。
(うまい...... なに!?)
雪に飲まれたと思ったが、雪は狼を飲み込まず、音もなくそのまま落ちた。
(なんだ!? 今のは...... 沈むこともなく、ただ落ちた)
「そんなものは無駄よ!」
狼が飛ぶとジアルガを踏みつけた。
ドオンッ!!
衝撃音がとどろくとジアルガが地面にめり込んでいる。
「ジアルガ! 戻れ!」
(あのジアルガを地面に...... なるほど、そういう力か)
「どうするよ? あの姫さん、けっこうやりやがる」
シャガがいった。
「ああ、俺がやる」
「はぁ? 見たでしょ。 あんたたちじゃ私を止めるなんて無理ね」
そう姫様は笑った。




