第四十七話『雷の剣と雪の砦』
「クリエイスさまのおかげでなんとかおさまりました。 ありがとうございました」
俺たちは王から、約束を取り付けた。
「私もここから追われたら行くところがない。 それに帝国には借りもある......」
そうクリエイスさまは、そう虚空をにらみ言った。
(ともあれ、これでここを奪われる心配はなさそうだ。 今のうちにこの町を発展させよう)
それから数ヵ月たち、様々な産業ができはじめ、他の町と交流が始まった。
「なんとか他の町とも交易できるようになったね」
リシェがそういう。
「ああ、クリエイスさまが経済に詳しいから助かる」
「まあ、まがりにも国王だったからね。 このぐらいの町の規模なら目が届く。 魔巧具もいくつか作った。 これを使ってくれ」
そういうと、クリエイスさまが短剣を渡してくれた。 剣身に宝石が埋め込まれている。
「これは魔巧具ですか?」
「ああ、私が使っていた雷撃を放てる剣だよ。 ナナミは大剣を扱えないだろ」
「ありがとうございます」
「これら魔巧具を皆に渡して戦力を整えよう」
「やはりデュラードは動くと思いますか」
「......多分な。 ここにリルどのを擁するこの町があるんだ。 帝国からすれば、はやく動いてこの国をおとしたいはず、そのうちこの町が大きくなられたら落とせなくなるからな」
「............」
「どうした?」
「前にお話ししたとおり、王契将が気になっているんです」
「......裏切っている者がいるというやつだな。 王契将になるような人物。 何が目的かはわからんが、もし帝国と繋がっているなら厄介だな。 こちらも仲間がほしいが、協会もな」
「ええ、上層部に帝国の関与があるかもしれません」
「少なくともじきに何かが起こる。 その時に対して準備しておこう」
「ですね」
そのクリエイスさまの予想通り、事態が動き出した。
「さ、寒いですね」
厚着をしているルエルが震えている。 無理もない吹雪の止まない豪雪地帯に俺たちはいた。 ここは【ルデアナ】帝国から北にある雪国だ。 俺たちはフィグルスさまの要請でここに来ていた。
「ここにモンスターが襲来しているんだろ」
「ああ、ルデアナから協力の要請があったからな。 モンスターの群れが国境付近に集まっているとな」
シャガがそういう。
「これも帝国か......」
「フィグルスさまはそうお考えだ。 モンスターが統率されたように一国に集まるなんておかしいとな」
「クリエイスさまもそういっていた。 前に人の手が加わったモンスターを見つけた。 あれは高い魔巧技術を使っていると......」
ルエルがそうつぶやく。
「そんな魔巧技術、持ってるのはハルリールか帝国ぐらいだからな」
(ハルリールの技術も帝国に流れている......)
「だけど、こんな雪国に帝国はなんのために侵攻している?」
「......わからんな。 もしかしたらモンスターの実験とかそういうことかもしれん」
「かもしれないな。 早く行こう」
「さ、寒い......」
ルエルの鼻息が白くなっている。
「お待ちしていました! 私はこの砦の隊長【グリマス】と申します」
そう丁寧に鎧姿の男性はいった。
「ええ、ナナミとシャガです。 それでモンスターというのは」
「ええ、こちらに......」
砦の上にのぼり下を見下ろすと、モンスターが砦にとりつき無数にうごめいている。
「なんだ、この数......」
「ええ、急に現れたモンスターがこの砦に集まっているんです。 ただ数が多くて押し返すこともできず、いずれこの砦も突破されかねない状況です」
疲れた声でグリマス隊長はいう。
「どうするナナミ、あの数だとさすがに俺たちだけでは全部はやれないぜ」
「確かに...... 一体一体ならなんとかなるが、シャガ、サンフォイザさまがくるんだろ。 それまで待機しよう」
「ああ、そうだな。 そのとき指示を仰ぐか」
俺たちは合流予定の王契将、サンフォイザさまの到着を待った。
しばらくしてサンフォイザさまが、悠々と歩いてやってきた。
「サンフォイザさま、お久しぶりです」
「おお、お前かナナミ。 それでどうなっている?」
「砦の外はモンスターでひしめいてます」
砦の上で説明する。 サンフォイザさまは下をみてうなづく。
「なるほどな...... 奇妙な現象だ。 前に確か...... 原因はなにかわかったか」
「わかりませんが...... 帝国がモンスターを人為的に改造していることはご存じですか?」
「......モンスターを改造か、奴らならやりかねんな。 それなら目的は禁獣かもしれんな」
「禁獣!?」
「この国にも有名な禁獣がいる。 モンスターの加工が可能ならば、界獣、禁獣も可能だろう」
「それは確かに」
(......この国の禁獣が狙いだったのか)
「ですが、あの数どうします。 フィグルスさまならやれたかもしれませんが」
シャガがそういう。
「フィグルスは帝国の動向に目を光らせてるからな。 俺と違って国もある。 動けはしないからな」
(サンフォイザさまは一人で行動しているらしいからな)
「......俺がやる。 お前らは俺が仕留め損なったやつを狩れ」
「いや、あの数ですよ。 しかも大型ばかり。 いくらサンフォイザさまでも一人では......」
「まあ、見ていろ【バルブロバス】」
空間が軋むとそここら白い巨大なクモが現れた。 そしてサンフォイザさまの背にくっつくと砦の上から、するすると真下に糸を吐き出しおりだした。
「お前は砦の門からでてこい」
「あの中にいくつもりですか!」
「あとから、はやくこいよ」
そういって下へと降りていった。
「行くぞシャガ! ルエルはここに!」
「ああ、ジアルガ!!」
俺たちは下に降りて鉄の扉を開けた。 そこには白い糸が無数に張り巡らされていて、モンスターの死体が山のようにあった。
「これは......」
「あそこだ」
空中に糸で浮いたサンフォイザさまが、周囲に糸を繰り出しそれに触れたモンスターたちが両断されていく。
「あれがサンフォイザさまの王獣か」
「バルブロバスだ。 あの王獣は鋼も切り裂く硬質と切れない軟質の糸を操る」
「それで、こんなにモンスターたちが...... シャガ、俺たちはぬけてくるやつをやるぞ!」
「ああ!」
糸をかわしてぬけてくるモンスターを俺たちは倒していった。




