第四話『香ばしい界獣と狼討伐』
「おい、ルエルどこにいく。 早く依頼をこなしてお金をえないとなにも食えん。 このままだとお前が夕飯になるぞ」
ルエルにつれられ人のいない町外れにきた。
「シェリーだけだと心もとないので、他の界獣を呼ぶ訓練をしておきましょう」
「確かに...... でも前は必死だったし、うまく行くかな。 不安になってきた」
「大丈夫、界獣たちはこっちの世界に来たがってますから、呼び掛ければ答えてくれるものはいますよ」
「来たがっている? そういやなんで界獣は召喚に応じているんだ?」」
「界獣は肉体を持たない意識だけの存在。 ゆえに具現化は夢のような経験なのです。 望めば来るのはそういうことです」
「なるほど。 よし、ならやってみるか。 シェリー!!」
空間が歪むと光の小鳥が現れ手のひらに乗った。
「きてくれた!」
「ええ、シェリーを呼び出すことは可能のようです」
「少し疲れるな。 魔力を消費してるからか」
「そうです。 複数呼ぶのは今はやめた方がいいですね。 動けなくなりますから、一度帰ってもらってください」
ルエルのいうとおりにシェリーに帰ってもらう。
「さて、他のを呼んでみるか。 確かイメージを思い描いて呼ぶんだったよな」
「そうですが、必要な能力のものを呼び出さねばなりません。 それにくれぐれも変な姿をイメージするのはやめてくださいよ。 本人が傷つきますからね!」
そのルエルの言葉にはとげがある。
(まだ気にしてるのか。 とりあえず、集中して戦いに必要な界獣を呼ぶか...... えっと)
「俺の声が届く界獣よ。 来てくれ」
そう声に出して強く念じた。
すると目の前の空間が歪み、地面に小さな赤いとかげのようなものが現れた。
「なんかきた!」
「どういう能力なんでしょう?」
ルエルがとかげを覗き込むと、赤いとかげは、突然炎を吹き出した。
「ぎゃああああ!!!」
「ルエルが燃えた!!」
ルエルが炎に包まれると、地面を転がり炎を消している。
「なるほど、炎を放つのか。 名前は」
「ギュラ......」
「ギュラか。 また頼むよ」
俺がそう声をかけると、ギュラは消えた。
「よし、行くか!」
「よしいくか...... じゃないでしょう! 私が炎に包まれていたでしょうが! なんでスルーしてるんですか!」
ルエルが香ばしい香りをさせながら、地面をどしどし踏みつけている。
「ルエルは界獣なんだろう? 死にはしないから平気じゃないのか」
「いくら無意識の存在といえど、こっちで肉体を失えば、向こうではかなりの期間、動けなくなるんですよ!」
「そうなのか...... なら気を付けないとな。 さあいくぞ」
「......もう。 あと背後からお腹をならしながら歩くのはやめてください」
こっちをチラチラ警戒しながら歩くルエルがいった。
「仕方ないだろう。 香ばしい、いい匂いがするんだから」
「ここがそのモンスターのいるという場所か」
そこは森のなかだった。 いくつかの木が切られ、斧なども切り株に刺さったままになっていた。
「ええ、木こりたちがここでモンスターに襲われたようですね」
「それを討伐か...... でもこんな森だとギュラは使えないな。 シェリーで対応するしかないな」
「木々に燃え移って延焼してしまいますからね」
(他のか...... ルエルの話だと、特性は界獣が持っているものしか使えないから、シェリーが使えない場合、モンスターが来てから呼び出すものを考えないと......)
そう思案していると、茂みが大きく動く。
「来ますよ...... かなり大きい魔力です」
ルエルが緊張した声でつぶやく。
「確か依頼は【グレーウルフ】とかいう狼か」
「グオオオオッ!!」
そう茂みから何が飛び出した。 それは巨大な灰色の毛並みの狼だった。
「なっ! どこが狼だ! ライオンだろ!!」
「うらやましい!!」
ルエルが声をあげた。
「そんなこと言ってる場合か!!」
狼は唸り声をあげこちらに迫る。
「でかっ! はやっ!」
「早く界獣を!」
「わかった! シェリーを呼ぶから時間をかせぐのに、ルエルはかまれていてくれ!」
「いやですよ!! 時間をかせぐどころか丸のみでしょう!」
俺たちは先を競って逃げた。 左右の茂みも動き、そこにも狼が走っていた。
「嘘だろ! 三体もいやがる! シェリーを呼んでも一体しか無理だろ!!」
「は、早く、追い付かれる!」
(他のを呼ぶしかない!! こいこい! 何でもいい! 界獣よ!!)
「こい!!!」
俺が必死に念じると、目の前の空間が歪み、ペンギンのような二足歩行の鳥があらわれた。
「何か違う!!」
「こんなペンギンみたいなの呼んでどうするんですか!」
「知るか! 呼んだらきたんだ! 頼む! 助けてくれ!!」
「クアト......」
そうペンギンは答えた。
「クアッーーーッ!」
クアトは口から声を発すると、振動が後方へと放たれた。 周囲の木々が大きく震える。
「ギャウッ!!」
狼たちは怯み、その場にとどまる。
「どうやら衝撃波のようなものを発しているようです!!」
「よし! 今のうちにシェリー!!」
俺はシェリーを呼び出した。
光となったシェリーが狼の胸元を貫き、灰色の巨体が地面に崩れ落ちた。 残りの二体も、光の軌跡に貫かれ倒れていった。




