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Sランクたちの懇親会

 メディアリアと徒党を組むことをギルドへ申請しに行った。

 ギルドの所有する特殊な契約魔法が、徒党を組んだ者たちの獲得経験値を均等に分散させる。

 その魔法はギルドが独占しており、冒険者の世界では“力の証明”と同じくらい重い意味を持っていた。

 もちろん、悪用する者も多い。

 無知なギフテッドを言葉巧みに誘い、経験値だけを吸い取る寄生のような輩も珍しくない。

 だが、それも含めて自己責任――この世界の冷たい常識だった。

 だからこそ、横のつながりは強くなる事は必然なのかも知れない。誰と組むか、誰と組まないか。それが冒険者の生死を左右する。

 ――ところ変わって、ここは冒険者ギルドSランク専用ラウンジ。

 豪奢な調度品と静かな魔灯が並ぶ空間で、Sランク冒険者たちの懇親会が開かれていた。

 その静寂を破るように、一人の少女が声を張り上げていた。

 自称・天才美少女魔道士、ロザリア・レンベルクである。

ロザリア「私は反対!! 大反対!! なんであのドロボーが、メディアと組むの!? ギルドはなぜ止めないの!! 信じられないわ!!」

アルトリーズ「私達がどうこういう権利はないでしょう」

 アルトリーズ・カストゥースが淡々と返す。

 白髪の器量良しで、雷魔法のスペシャリストだった。

 金吾も初心者の頃から講義に通っていた、数少ない“普通に接してくれる”講師だった。特段仲が良いとも悪いとも呼べない間柄で、金吾にとってはありがたい存在でもあった。

メリティア「そうですぅ……それに彼女は、ちゃんと考えて行動できる子じゃないですか!」

 メリティア・ピューリットはそうたしなめる。錬金術のスペシャリストとして、こちらも金吾がよく受講している講師だった。

ヨルク「まあ、寄生虫が新しい宿主を見つけた……それだけですが、気分の良い話ではありませんね」

 ヨルク・カッセル。レンジャーのSランクで、魔獣生態の講師。

 その声音には、露骨な軽蔑が滲んでいた。

ロザリア「やっと私の賛同者が現れてほっとした!! やつは寄生虫なの!! それを駆除することは私達の使命と言っていいんじゃないかしら?」

レイモン「お前の贔屓のやつをか? 俺達は仲良しこよしで冒険者をやっているわけじゃない。勝手に俺達の義務にするなよ」

 レイモン・プレープスは戦士のSランク冒険者で、剣槍斧と多彩な兵法を講義していた。

ロザリア「なによ!! 将来有望な子が食いつぶされるってところなのよ!! それを助けることの何がいけないの!?」

アルトリーズ「それを含めて、自己責任といっているんだ。才能の有無だけで贔屓することは、良識があるとは言えないだろう」

ロザリア「あら、自分が才能で優遇されてこなかったとでも言うの?」

アルトリーズ「そう言われたら、返す言葉はないわね」

 ロザリアはふん、と鼻を鳴らし、周囲を見渡した。

 そして、ある三人組を見つける。

 金吾の元徒党――鳳条ライガ、天宮ルナ、エレイン・アーバレストの三名だった。

ロザリア「あっ、ルナ!! それにエレインとライガも!! こっち来なさいよ!!」

ライガ「おっ、なんだなんだ?」

 三人は近寄ってくる。

ヨルク「あなた達の元メンバーの、寄生虫の話ですよ」

ライガ「寄生虫……?」

ロザリア「クゼキンゴよ、クゼキンゴ!!」

 その名を聞いた瞬間、ルナとエレインの肩がビクリと震えた。

ライガ「ああ、あのおっさんか、嫌なことを思い出したぜ。まあ、今となっちゃ大した額でもなかったけどよ、一年も俺達を裏切っていたクソ野郎だ」

エレイン「……金吾さんが、どうかしたんですか?」

ロザリア「また、あなた達のような金の卵を見つけたってわけよ」

ライガ「ほお! どんなパーティに潜り込んだんだ?」

ルナ「あたしパスするわ」

 そう言うと、ルナはその場から離れた。

アルトリーズ「メディアリアと言う孤児院を出たばかりの魔道士だよ。実に素質のある子だ」

ライガ「ほかは?」

ロザリア「一人だけよ」

ライガ「ふーん、まあ正直ご愁傷さまだな」

エレイン「金吾さんは、その……無事に冒険者を続けているんでしょうか」

ロザリア「そんなこと、どうでもいいじゃない」

ヨルク「まともに生きていけるわけないじゃないでしょう! 我々の総力をあげて――おっとこれは失言でしたね!」

アルトリーズ「正直言って同情を禁じ得ないな。品物もろくに買えていないようだしね」

レイモン「……っち、趣味がわりい」

 そう言うと、レイモンはどこか別の席に移った。

エレイン「品物もろくに買えないって、どういう事ですか……?」

ヨルク「Sランク冒険者をコケにしたんですよ? 当然、まともな商人は相手にしないですよ! もちろん、私からも多少は手を回していますけどねえ!」

メリティア「正直錬金魔法を習得していなければ、とっくに廃業していますぅ」

ロザリア「あんたが余計な知識教えるからじゃない!! 全く!!」

 その言葉を聞いた瞬間、エレインの顔から血の気が引いた。

 ライガですら、わずかに引いた表情を見せる。

ライガ「それは、まあしょうがないよな。俺の金を盗っていたんだから、そうなるのもなあ」

 エレインは俯いたまま、動けなくなった。

ロザリア「もう、エレインはいい子なんだから、あまり気にしないほうが良いわよ。殺されていないだけ感謝して貰わないと!!」

ライガ「なんて言うか、複雑な気分だぜ。数少ない同郷の人間だからなあ。まあ、身から出たサビだ」

 その言葉に、耐えられなくなったエレインが、その場を後にした。

 その後は特段金吾の話もなく懇親会は終わりを告げる。

 エレインは自室に戻り、チェストの奥底にしまっていた一冊のノートを抱えて泣いていた

 ゴメンナサイ、そうつぶやきながら、いつまでも泣いていた。

これ辛いなあ一番書いていて辛いかも知れない

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