レオンサイド
このままではキャロルを助けることはできない。
「ダメ」
ずっとどうやれば封じられた力を使えるのかって確かめてきたからやり方は知っている。だからあとは解放するだけ。
「やめて!」
そうすればキャロルを助けられる。この場に来た時点で覚悟はとっくに決めていた。だというのに。
「ダメ!!」
もう少しキャロルと一緒に過ごしたかった。でも
「大丈夫」
キャロルには生きて幸せになってほしい。だからこんなところで死んでほしくない。
「絶対に助ける」
封印を強制的に抑え込むと同時に妖精王としての力が僕の全身を包む。
(タイムリミットは数秒ってところかな)
そして発動する主神との契約ーーこれにより妖精王としての力を1秒使うごとに寿命が1000年削られる。
「なっ」
本来の僕の力を前にした黒い女は、目を丸くし冷や汗を流す。
「っ!ダークネビュラ!」
命の危機を感じ取ったのか、瞬時に黒いナイフを数千出現させて僕を囲った。
「ホーリーランス」
が、僕も黒い女と同じように周囲に数千という光の槍を出現させた。
「いけ!」
互いの魔法が命を奪おうと動く。
「やれ」
それを互いに防ごうと障壁を展開。
「シールド!」
「障壁」
透明のバリアが身を包んだ瞬間、
「くっ」
それぞれの攻撃が
「……」
障壁へと激突した。互いに堅固な障壁により攻撃を防ぎ続ける。
「ぐっ!ぎゃあああ!」
しかし均衡はすぐに崩れ去り僕の光の槍が黒いやつの障壁を打ち破り、数百という槍に貫かれた。一方の僕は無傷。
「あああ!……」
しばらく叫んだあと黒いやつは地面へと倒れ伏し、そのまま動くことはなかった。
「……がは」
生体反応なしーー黒いやつが死んだことを確認した僕は力を解除した。
(3秒……3000年分の寿命が持ってかれたか)
その直後、力を使った反動が津波となって押し寄せ、剣で何度も何度もお腹を貫かれるような痛みに絶え間なく襲われた。
「っ!」
目や鼻、口や耳や爪の間などから血が流れ出た。
「きゃろ、る」
力を使ったのは3秒程度だけだったが、思ったよりも反動は大きく、震える足に力を込めて立ち上がりキャロルのもとへと向かった。
「はぁぁ……無事でよかった」
手足のナイフを抜いて助け出した。
「バカっ!私なんかのためにこんな……」
腕の中にキャロルがいる。
「っ!レオン!」
そのうちたってることも難しくなって
「こんな無茶して……ごめん。ごめんね。ありがとう」
キャロルに抱き抱えられて、そのまま膝を枕に下からキャロルを眺めた。
「よかった」
手足とか、身体の所々ケガを負っているけど、それでも生きてる。助けられた。
「本当に良かった」
意識が遠のいていく。
「レオン!」
僕を呼ぶキャロルの声も遠くなっていく。この感じ、体験したことはないけど、おそらく「死」なのかもしれない。
「ねぇ、返事してよ!レオン!!」
悔いはない。そう思ったとき
「まだ終わって、ない、わよ!」
薄れゆく視界のはしで黒い女が刃物を振り上げて
「死ね!」
キャロルへと振りおろす光景が映った。
「っ!」
不思議だった。あんなに眠くて身体に力も入らない状態だったのにキャロルの危機に身体が動いた。
「えっ」
キャロルを押し倒すと
「ぐっ」
黒いやつの刃物が僕の背中に突き立てられた。
「れお、ん」
一瞬の出来事にほおけるキャロルに
「く、無事で、よかった」
笑いかけたところで僕の視界は暗転した。




