レオンサイド
(やめろ)
"こいつはもらっていくわ"
(待て)
"助けたければ聖王国まで来ることね"
(キャロル)
"じゃあね。くそ妖精王"
(キャロル!)
連れ去られていくキャロルが見えているのに、わかっているのに身体が動かない。動けって命じても動いてくれない。
(だめだ)
守るって、もう戦わなくていいって約束したのにーー連れ去られていくキャロルが小さくなって
(頼む!動け!動いてくれ!)
しかし身体が動くことはなくキャロルは消えた。
………
……
…
「キャロル!」
連れ去られるキャロルに手を伸ばした。そうしたら目の前には
「うおっ!」
魔王がのぞき込んでいて伸ばしたぼくの手を慌てて避けて尻もちをついた。
「……え」
なんで魔王がいるのか。それに周囲を確認したら自室のベッドにいる。
(湖にいたはず)
なのに自室のベッドにいる。
「なん、で」
混乱。「なぜ」が頭に溢れる。
「ワシが助けたんじゃ」
そんなとき立ち上がった魔王が
「いきなり異常とも言えるほどの魔力が現れたからな」
何があったのかを説明してくれた。
「気になっていってみれば湖畔にお主が倒れておった」
いわくーー魔力のした場所へ着いたら僕が倒れていたから慌てて運んで回復魔法をかけたとのことだった。そしてベッドに寝かせたと。
「ありがとう」
ということはさっきまで見ていたのは夢じゃなくて現実。そしてキャロルを連れ去ったあれは
"助けたければ聖王国まで来ることね"
と言っていた。キャロルはそこにいる。だから僕は助けてくれた魔王にお礼を言うと
「……」
ベッドから立ち上がって歩き出した。
「え、ちょっ!まだ休んでおらんと!」
そんな僕を魔王は慌てて手を掴んで止めた。
「聖王国へ行く。そこにキャロルがいる」
「まだ怪我じゃって回復魔法で癒したばかりじゃのに!それにあの異常な魔力のやつが相手なんじゃろ。無謀じゃ!さすがのお主でも死ぬぞ!」
「そんなこと関係ない」
それでも僕は魔王の制止を振り切って行こうとしたら、魔王がドアの前に立った。
「いいから待て!」
確かに魔王のいうとおりだ。今の僕ではあの黒いやつには勝てない。行っても負けるだけだ。
(けど、そんなの行かない理由にならない)
"ねぇ、レオン。好きだよ"
僕はキャロルを守ると誓った。
"おはよう。レオン"
だから僕は行く。勝ち負けじゃない。何があっても絶対に助ける。
「そんなこと関係ないんだ」
それに失いたくないんだ。
"レオン"
死なせない。死なせたくない。
「絶対に守るって誓ったんだ。だから僕は行く」
「なっ」
僕は魔王を押し退けてドアを開き
「じゃあ」
聖王国へと飛びたった。
………
……
…
「よく来たわね」
そこは聖王国とは名ばかりで、何もない。廃墟と化した街だけがあった。全てが破壊された中心地にキャロルを連れ去った黒い女がいた。
「待ってたわ」
黒い女の後ろの壁にキャロルはいた。手足を魔力によるナイフに貫かれ縫い付けられていた。
「……絶対に助ける」
意識はなく目を閉じたまま下を向いていた。
「あらあら。聖なる妖精王ともあろう存在が殺気を向けるなんてーーいいわ」
僕は腰の剣を抜き放ち構えた。
「絶対に殺してあげる」
黒い女もナイフを逆手に持ち構えた。しばらくの睨み合い。互いの出方を伺う。
「……」
静寂が場を支配する中、どこかの崩落した建物の瓦礫が崩れた。
「ホーリーライト!」
戦闘開始の合図。口火を切ったのは僕。光魔法でめくらましをした直後に黒い女の懐へ飛び込んで切り掛かった。
「あはっ」
あと数センチで僕の剣が届くというのに余裕の笑みを浮かべた。
「その程度なの」
黒い女は僕の剣を避けた直後、僕との間に魔力による黒いナイフを10本出現させると
「今度は私ね」
僕へと放った。
「くっ」
ほとんど魔法発動からタイムラグがなく飛んできたので、反応が遅れて一撃が右肩に刺さった。
"さすがのお主でも死ぬぞ!"
僕の感じた通り、そして魔王の言う通りだった。
「あらあら。痛そうね」
僕と黒い女にはかなりの実力差があった。
(ふぅぅ)




