レオンサイド
「全然釣れない」
風に舞う木の葉が水面を揺らす。空の頂点に昇った太陽がたびたび雲に隠れつつも世界を照らす。
「……」
まだ夏の残暑が居座り続けているけど、空気は秋になって来ていて麦わら帽子をかぶっていれば涼しい。
「あっ!あそこに小魚がたくさんいる!」
そんな日に僕とキャロルは釣りに来ている。
"ねぇ。あのとき湖に行けなかったから今度こそ行こう"
キャロルに誘われ、夏野菜の収穫が落ち着いたタイミングでやって来た。
「むぅぅ……なんで釣れないの!」
互いに好き同士であると知ってからも僕とキャロルの関係は変わっていない。一緒に暮らして、ご飯を食べて、狩りに行って。
「釣れた」
待つということが苦手なキャロルは釣り針を投じては数分であげて別の場所に投げる。
「なんでレオンばっかり釣れるの!」
一方で一度投じてじっと待つこと30分、3匹目となる魚を釣り上げた僕を隣に座るキャロルがにらみつける。
「待ってるから」
ただ一つ変わったことがあるとするならば
「それだけ?もっと他に何かないの?」
2人で過ごすときにキャロルが隣に座ることが多くなった。そして手を握るようにもなった。
「何かって?」
「コツとか。魚を簡単に釣り上げる秘訣とか」
「ないよ」
「うそだー。絶対に何かあるよ」
変わったことがあるとするならばそれだけ。でも、なんだろう。以前よりもキャロルを近くに感じるし、手を握っていると
「ってレオン?」
愛おしくて、もっと近づきたい
「おーい。聞いてるー?」
って思いが込み上げてくる。でもキャロルを大切にしたいと思う僕もいて
「……あ、ああ。聞こえてるよ」
悩ましい。どうしたものか。
「もう。まだ寝るには早いよ」
最近の僕は欲張りになって来ている。キャロルと距離を縮めたと思ったら、すぐにそれ以上を望んでしまう。
「はは。本当だね」
でも、現状で満足している自分もいてーーよくわからない。悩ましい。だけど、キャロルとの「今」を楽しまないなんてもったいないので切り替える。答えが出ないことに悩んでいてもしょうがない。
「ふふ、もう」
幸せだ。こんなに幸せでいいのだろうかと怖くなるくらいに。ちょっと前までずっと1人で1000年以上も過ごしてきて「1人」が普通だったのに。
「よーし、絶対に釣るぞー!」
のんびりとキャロルと過ごす日々。
(こんな時がずっと続いてほしいな)
だけど
「ダークネビュラ!」
それは突然やってきて
「……えっ」
僕からキャロルを連れ去った。
「っ!キャロル!」
黒い魔力に包まれた女。
「こいつはもらっていくわ」
まて
「助けたければ聖王国まで来ることね」
キャロル
「それじゃあね。くそ妖精王」
キャロルが僕の前から消えた。
「きゃ、ろ……る」
手を伸ばすけど届かない。僕の意識は暗転した。




