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キャロルサイド

2日前に雨が降ったことで畑の草がサクサクと抜けていく。まだ日差しは暑いけど、森の影で冷やされた風が冷たく心地よい。


(やっぱり汗をかくっていいわ)


レオンが出掛けてからも全然落ち着かなくて一度「レオンのこと」から離れるために、外へ出て畑の草抜きを始めた。やはり何かに夢中になると冷静になれた。


「ふぅぅ」


作業後に畑の横の木陰で涼みながら飲むお茶は格別で、


"これって、これって「好き」ってことだよね"


自然と向き合える。


(これまでに誰かを好きになることはなかったけど、なんとなくわかる。私のこのレオンへの想い)


お茶を傾け、ひたいに滲む汗を拭き取る。風が肌をなで体温を下げた。


(私はレオンのことが好き)


しかしひとたび落ち着いた体温も


"キャロル"


レオンの顔を思い出すと


(ひゃぁぁ)


ふっとうーー頭から蒸気が発生して空へと昇っていく。


(ふぅぅ……いったん落ち着こう)


幾度か深呼吸をして頭を空にした。


(はぁぁ。じゃあ好きって自覚して、私はレオンとどうなりたいの?)


木に寄りかかって瞳を閉じた。ドクンドクンとなる心臓が気になって集中できなかった。でも、次第に頭の中が空になって浮かんできた。


"おはよう"


"おはようレオン。ご飯できてるよ"


それはレオンと2人で暮らし


"トマトが大きくなったよ!"


"上手くできてよかった"


日常を過ごす。


"おやすみ"


"おやすみなさい"


今と変わらない姿だった。


(……そっか)


正直にいうとまだこの好きという感情とどう向き

合って良いかわからない。ただそれでも


(私は今のままがいいんだ)


私の「心」が望んでいることが知れた。それだけでもだいぶ迷いが晴れた。


「うん」


目を開けて立ち上がって雲が一つない快晴の空を見た。


「今日もいい天気」


どこまでも澄んでいて美しい青を見ていたら心も晴れやかになって自然と笑みが溢れた。


"婚約破棄だ"


でも、目の前の不安が消えたらまた新しい不安ーーそれは見て見ぬ振りをしてきたもの。


"そしてぼくはこのエリザベスと新たな婚約を結ぶ!"


何度か顔を合わせた程度だったけど、私は彼を幸せにできなかった。だから不要になった。


(レオンって私といて幸せなのかな)


わからない。ただ自分の気持ちに気づいてしまったのなら伝えないままなんて絶対に後悔する気がする。


"キャロル"


でも、不安。


"なんとなく。なんとなく悲しんでいるように見えて"


だけど、レオンとなら大丈夫な気がする。レオンはいつだって「私」という存在を認めてくれる。こんな私と一緒にいて笑ってくれる。


「ただいま」


だから帰って来たレオンに


「おかえり。レオン」


いきなりだったけど、ここで言わなくちゃずっと言えないまま言わなくなってしまいそうだったから


「ねえ、レオン。好きだよ」


勢いで伝えた。私の想いを言葉にのせて。

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