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始まり

「キャロルサイド」



ずっと夢見てた。


(はぁぁ、いい天気)


畑の草取りを終えたレオンは木陰に腰掛けお茶をあおる。枝のこすれあう音に、小鳥のさえずりーー静かだ。


「ふぅぅ」


風が心地いい。忙しかった今までと違って何も考えなくていい余裕のあるのんびりした日々。だからかずっとふたをしてきた記憶ーー後悔がよぎって、


(お母さん)


顔をのぞかせた。





「レオンサイド」



キャロルと一緒に過ごすようになってだいぶ経った。


「水切りはね。平たい石を平行に投げるの」


以前は永遠のように感じられた1日がキャロルと過ごしているとあっという間に過ぎ去っていく。


「こう?」


キャロルのことなら大体のことは知ってると思ってたけど全然だった。


「そうそう」


本当に知らないことばかりーー例えばキャロルは狩りが得意で、作物を育てるのは苦手、料理はすごく上手だけど片付けが大嫌い。


「うまいじゃん」


それに思っていたよりも素直で、思ってることが顔に出やすい。最近はそんなキャロルを見てると楽しくてつい笑ってしまう。


「ふっ」


「ん?どうかしたの?」


あとはものすごく負けず嫌い。キャロルが得意だという木登りを一回でぼくができるようになったら、対抗意識を燃やして日が暮れるまで付き合わされた。


「んん、なんでもない」


コロコロと表情を変えるキャロルは面白くて、愛おしい。でも、それだけじゃない気がする。だけどそれがなんなのかわからなくてこの前、魔王に相談に行った。


"お困りごとがあれば何なりとご相談ください!"


って別荘をもらった時に言ってたから頼ることにした。そうしたら


"そ、それは好きというやつではないでしょうか"


とぼくのキャロルに対する気持ちについて教えてくれた。キャロルを見てるとこう、たまに何かが溢れて


「え、ちょ、れ、レオン?!」


「はああ……落ち着く」


くっつきたくなる。毎日ではないけど、2日に一度くらいは抱きしめたくなって、今日は正々堂々と正面から。


「もう……えい!」


ぼくが抱きつくとはじめは抵抗するような言動をとるけど、最後は抱きしめ返してくれる。耳まで真っ赤に染めて照れてるけど。


「かわいい」


だからぼくはキャロルにだけ聞こえるように耳元でささやく。


「か、かわっ!」


知ってほしいから。もっとぼくのことを、気持ちを。だから隠したくない。


「もう……」


幸せだ。キャロルと一緒にいるのは。だけど最近、キャロルとのことで悩んでることがある。それは。


「はぁぁ」


このため息と、どこか遠くを寂しそうに見るときがあることだった。


(やりすぎたかな?)


しかも決まってぼくが抱きしめたりした時に。


(もしかして嫌われた?!)


ぼくばかりが好きすぎてしまって、キャロルはそこまでぼくのことを好きではないのではないかって不安になる。


(迷惑だったかな?)

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