レオンサイド
キャロルーー君を一度失ったときに決めたんだ。何があっても絶対に守り抜くと。
「さようなら」
主神ーーノアの放ったブラックホールがキャロルへと迫る。
「キャロル!」
力を使い果たしたキャロルは気絶し、その場に倒れた。
「くっ!」
とっさに体が動いた。あんなにいろんなことを考えてばかりで、それにとらわれて動くのが遅すぎる僕が瞬時に動いた。
(絶対に守る!)
信じられなかった。あんなに全力を出すことを怖がられるからと嫌っていたのに。
「ホーリーライト!」
キャロルは大切な友人?は少し違う気がする。でも、もう2度と失うなんて嫌だ。だから僕は全魔力を込めて聖なる光を出現させ、主神の闇へとぶつけた。
「おっ、やるね」
「くっ」
すると対消滅した。魔力の残滓が霧散し、魔法の消滅から発生した風が吹き荒れた。
「はぁはぁはぁ」
余裕のあるのノアを前にぼくは全魔力を使い果たした。生まれて初めて。
「ぐっ」
その後遺症である魔力酔いもはじめての経験で戸惑った。
「君って思ってたよりも強いんだね。そこらの神じゃ君の相手にならないよ」
ノアが何か話しているがよく聞こえない。しかしそれよりも今は、
(キャロル)
キャロルの方にしか意識が向いていなかった。ぼくはキャロルに近寄り
(息は、してる)
怪我の有無などを確認した。
(はぁぁ、よかった)
無事だった。ただ気を失っているだけ。
「やっぱり君を失うのは惜しいな。その子は無理だけど君だけなら生かしてあげるよ」
ノアはぼくに迫った。
「その子と一緒に死ぬか、それとも自分だけ生き残るか……どうする?」
二択をーーしかしそんなの答えは決まってる。
「キャロルを守る」
「はぁぁ」
ぼくの答えにため息をこぼしたノアは、
「そですか」
それだけいうとぼくに向かって手をかざして
「なら消えていいよ。かわりはいるから」
ブラックホールを出現させた。
「く」
力を使い果たした。身体もまだ力が入らない。それでもどうにかしてキャロルだけは守りたかった。
(なにか、なにかあるはず)
頭をフル回転させた。
「それじゃ、さよなら」
その間にもブラックホールが迫りくる。僕たち2人を飲み込まんとして。
(僕が盾になって、いやそれでもその次で、転移は使えないし)
完全に詰んでいる状況だ。そうそう打開策なんて瞬時に浮かぶものでもなく容赦なくブラックホールが拡大し始める。
(くっ)
守ると言ったのに、誓ったのに。
(くそ)
何もできない。不甲斐ない自身に怒りが募り、悔しさがにじむ。
「……」
ブラックホールの先が服に触れた。抵抗しても無駄だとわかってはいても、飲み込まれまいと体に力を込めて近くのドアノブにしがみついた。
(絶対に諦めない)
しかし現実はいつだって思い通りにいかない。ブラックホールに引き寄せられ、身体が宙をまった。
(く、なにか、なにか打開策はっ)
と考えるが浮かばない。覆すことのできない現状に気持ちが折れかけた
「って、ええ!」
ときだった。ノアは大きな声をあげるとパッとブラックホールが消えた。
「なんで魔王が動き出してんだよ!まだそのときまで80年はあるはずでしょ!」
どうしよ、どうしよ。と慌てふためいていた。ぼくはチャンスだと思い、キャロルを抱えて歩き出した。
「……そうだ!」
ノアが何か閃いたというような反応が聞こえたけど、気にせずに小屋を出ようと扉を開いた。
「……」
でも、その先はいつもの森ではなかった。まがまがしい気配に覆われれた。
(ここって)
そのとき
「聞こえるかな?」
頭の中にノアの声がした。
「急で悪いけど君たち2人で魔王を懲らしめておいて。それが終わったらあとは自由に生きてもらっていいから」
まくし立てるように話すと
「あとレオンーー君の力は強すぎるから9割ほど封印したからね。無理に使おうとすれば契約で死ぬから。気につけるように。じゃ」
一方的に話を終えた。
「……ぇぇ」