第5話 不死者の拠点
第5話 不死者の拠点
眠っていた少女がゆっくりと目を開けた。
「なんで私が面倒見なきゃいけないのよ!」
「『白』の指示だよ~」
傍らで誰かが言い争っていた。
彼女はソファから身を起こし、見知らぬ部屋を見回した。テーブルには乱雑に積まれたトランプの山。
灰色の髪の少女が黒髪の怪しげな男に文句を言っている。
その横では緑色の髪の少年がケーキを食べていた。
「あ、起きた!」彼女の横に突然もう一人の緑髪の少女が現れ、彼女を見つめた。
「ほんとだ!」ケーキを食べていた少年が飛び上がった。
二人は互いに近づき、手を繋ぐと、瞬く間に一つの個体に融合した。
「やあ、色欲完全体!」少年の姿になった彼は言った。
「僕の名前は『緑』。よろしくね!」元気よく挨拶すると、
「ケーキ食べる?」テーブルのケーキを手に取り、瞬時に別のケーキを出現させた。
まるで手品のように、両手にケーキを載せている。
能力:分裂(完全)
少女は彼を見つめたまま無言だった。
「もうっ、『白』に言いつけてやる!」灰色の髪の少女が怒りながら部屋を出ようとした。
「『白』の決定事項は覆らないんだから~」黒が付け加えるように言った。
突然、出ようとした少女がまっすぐ壁にぶつかった。
「うっ……これって……」手を上げようとしたはずが、なぜか足が上がってしまった。
「ああっ!」彼女は床に倒れ込んだ。
「さっさと諦めなさい」青い髪の女性が部屋に入ってきた。
能力:反転(完全)
「嫌ならトランプで決めてもいいわよ」結局変わらないけど。
部屋にいた黒髪の男性が言った。
「誰がトランプなんかやるかよ……早く私の体を元に戻して!」
灰色の髪の少女は床に倒れたまま起き上がれなかった。
「彼女が色欲か?」赤毛の女性が部屋に入ってきた。
コードネーム:『赤』(Red)、我々の組織『不死者』(The Undying)の指揮官。
「まだ若そうね」
「能力に関わるものに触れさせないよう早期に対処できればよかったのに」
彼女はそう言いながら少女の前に立った。
「そうすればこの能力も制御できたかもしれない」
少女の頬は知らないうちに赤らみ、目の前の赤毛の女性を見つめていた。
「私は『不死者』(The Undying)の指揮官、『赤』(Red)よ。よろしく」
彼女は少女の手を取った。
「彼女に触っても大丈夫なの?」緑の少年が興味深そうに見ていた。
「私には問題ないわ」彼女は少女の手を離した。
「私は組織で唯一の精神系能力者なの」
能力:闘志(完全)
「私たちは政府組織『不死者』(The Undying)。私の組織へようこそ」
「これからは私の命令に従うこと。さもなくば、お前を始末するわよ、『色欲』(Lust)」
彼女は目の前の少女を見た。色欲完全体、危険度S。
「灰(Gray)!」彼女が叫ぶと、部屋全体に声が響き渡った。
「は、はい!」灰色の髪の少女はすぐに姿勢を正した。
「彼女の面倒を見なさい。問題を起こさせないように」
「お前もだ!」
「事件の報告書、今日中に出しなさい!」
彼女は去り際に振り返った。
「で、でも無理です……」少女は慌てて言った。
「あら~」彼女は手を不自然に振りながら向き直った。
「私の能力を使わせて頂く?」
「い、いやです!」少女は恐れおののいて首を振った。
「彼女にこの施設を案内するのよ。じゃあ、私は仕事に戻るわ」
彼女は颯爽と部屋を出て行った。
「ううっ……くそ……」灰色の髪の少女は絶望的に床に膝をついた。
「私の能力なんてここじゃ虐められるためだけに使われる!」
能力:消去(対他)
「本気を出せばこの建物ごと消せるのに……」少女は呟いた。
「そんなことしたらまた『赤』に怒られるぞ」
「彼女は1日23.5時間働く女なんだから」
能力:闘志、あらゆる疲労を闘志に変換可能。
傍らで少女は握られた手と、どんどん上昇する体温を感じていた。
「はあ……」彼女は喘ぎ始め、部屋の中の全員を見回した。
(女でも男でも……違う、性別がない。能力が効かない。ただし……)
彼女は隅にいる灰色の髪の少女に目をやった。
そして立ち上がり、ドアの方へ歩き出した。
「どこ行くの?」緑の少年が彼女を遮り、不思議そうに見ていた。
「灰(Gray)、彼女を見ておきなさい」青い髪の女性が言った。
「わかってるよ……」彼女はしぶしぶ立ち上がった。
「とりあえず案内とか……?」
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「1階は共有スペース、2階は居住区、3階は指揮官のエリアで立ち入り禁止……」
私は彼女を連れて拠点内を歩き回った。彼女の頬が徐々に赤くなり、息が荒くなっていることに気づかなかった。
(1階はさっきの3人、2階は私と彼女、3階はあの赤毛の女、まだ会ってない人がもう1人……)彼女は考えていた。
色欲完全能力、周囲の生物の気配を感知可能。
(近くにいるのはこの数人だけ……)彼女は無意識に体を抱きしめた。
「ここが君の部屋だって」私はドアを開けた。
「ちなみに掃除は私の能力でやったよ!」
結局部屋掃除の任務も私に押し付けられたんだ。
「はあ……」思わずため息が出た。
私は部屋に入った。
「何か必要なものがあったら『赤』に言えば……」私が話している途中、彼女は突然私をベッドに押し倒した。
彼女は私の手を押さえつけ、上から見下ろしながら、頬を赤らめていた。
「私たち、××しよう」彼女は言った。
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「他の者を近づけるな!」金髪の女性が言った。
コードネーム『束縛』(Bind)、能力:対他、政府組織『執行者』(The Enforcers)所属。
彼女はそう言うと、教会堂の中へ入っていった。
中には多くの女性が集まっていた。
「何が起こったのかわからない。あの少女が目の前に現れた途端、理性が吹き飛んで、頭の中が○○××のことでいっぱいになって……」女性は言いながら、体をむずむずさせていた。
「これで10人目だ。全員同じ証言だ」傍らの執行官が言った。
「まったく……今回の処理事件、どうして『不死者』(The Undying)の管轄なんだ……」金髪の女性は嫌そうな顔をした。
「問題児ばっかりの組織め……」
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部屋の中で、私は彼女とベッドの上で見つめ合っていた。
「え!?」私は混乱しながら彼女を見た。
「あんたほんと純情ね……」彼女はため息をついた。
「何も知らないんだ」彼女は私を見ながら言った。
このセリフ……許せない!
「私は小さい頃から無理やりいろんなこと学ばされたんだぞ!」何も知らないだって!
「私の方がよっぽど物知りだよ!」物理も化学も生物も、たくさん勉強した。
私は手を必死に動かそうとしたが、彼女がしっかり押さえつけていた。
彼女は顔を近づけ、鼻を私の鼻に触れた。
「確かに○○××のことは知らないけど……」私は言った。
「でも教えてもらえばすぐ覚えられるよ!」
私は学習速度が驚異的だと褒められた天才なんだ。
もっとも壁抜けは長い訓練が必要だったけど……
重力消去とかも……
普通の人ってこんなこと習うの?
彼女は顔を上げた。
「もういい」彼女は私の手を離し、ベッドから降りた。
「出口はどこ?」彼女は尋ねた。
「1階だよ……」私は答えながら、起き上がって彼女を見た。
「何するつもり……?」私は探るように聞いた。
「外で女を探してセックスする」




