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完全世界  作者: 若君
第一章 毎週金曜日更新。
3/30

第3話 戦闘

第3話 戦闘


「完全体……」私は呟き、教会堂内の少女と視線を交わした。

「イヴ(システム)……どういうこと?」通信機に問いかける。

『支援を派遣済み。時間稼ぎを頼む』

――プッ。通信が切れた。


(冗談じゃない!)

最初の任務説明と全然違うじゃないか!

「あ、更新されてる……」

タスクウィンドウをちらりと見ると、『色欲完全体の足止めを要請』に変わっていた。

(この憎たらしいリアルタイム更新速度……)

歯を食いしばりながら教会堂の下を見下ろす。


「はっ……」能力:消去(対他)。

軽やかに跳び下り、体が屋根をすり抜け、しっかり着地して教会堂内に立つ。

「私は『完全』政府所属の監視員(Watcher)、コードネーム:消去(Erasure)」

自己紹介をしながら、場にいる数人を視線でなぞる。


「監視員だ!助かった……」神父の目に天使の降臨を見たような期待が浮かぶ。

だが次の瞬間、私の顔を見た彼はぐっと身を翻し、乾いた嘔吐を始めた。

「女か……それも幼女……」

声は低く、嫌悪に満ちていた。


(女じゃダメなのか……)私は彼を睨みつけた。

本当に神父なのか、この人?変な行動ばかりしてる。

(こっちも……)

少女の方を見ると、彼女は顔を赤らめ、奇妙な表情で私を見つめている。

(あ、あれも変だ!)

不審ではあるが、任務は任務だ。


「あなたはシステムによりS級危険対象と判定されました。監視対象となります」

私は彼女を指差して宣言した。

少女は首を傾げ、口元を緩ませた。

「どうやって私を監視するの?」

柔らかな声で問いかけてくる。


「と、とにかく教会から出るな」

(完全体……私の能力が効くかどうかもわからない……)

支援が来るまで時間稼ぎするしかない。

「それじゃあ……」少女は唇を尖らせ、頬を紅潮させながら囁くように言った。

「セックスしてくれない?」

曖昧な眼差しで私を見つめてくる。

「は……?」今何て言った?


―――

私は『完全』政府の監視員、コードネーム消去(Erasure)。

今目の前にいるのは、覚醒したばかりの色欲完全体。彼女は今、私にXXを提案してきた。


「XX……どういう意味?」戸惑いながら質問する。


3歳で能力が顕現し、システムからA級危険者と判定された。能力は消去(対他)。

それ以来、施設で育てられ、一人前の監視員として訓練を受けてきた。


教会堂内に一時の静寂が訪れた。


小さい頃から様々な生物、物理、化学の知識を学んできた。全ての既知の元素、材質、運動現象、生物構造……全て理解している。

だが――少女の口にした「XX」……聞いたことがない。

彼女は私を指差した指をゆっくり下ろした。

「処女なんだ……」

少しがっかりしたような口調だ。

(処女?また新しい単語……)頭の中で自動分類が始まる。

彼女は教会の入口の方へ歩き出した。


「待て、どこへ行く?」声を張り上げる。

「外で女の子とXXする」冷たい返事が返ってくる。

私は頭の中でその二文字を自動的に遮断した。

「出るな、さっき言っただろう」冷たく言い放つ。

――能力:消去(対他)。

瞬きのような速さで彼女の前に立ち塞がる。


(色欲……この種の精神系能力は不利だ)知らないものを消去することはできない。

彼女を見つめる。

(だが逆に言えば、この能力は私には効かない)

彼女が手を伸ばして触れてくる。避けようとするが、体が反応しない。

彼女の指先が私の頬に触れる。私は目を固く閉じる。


「やっぱり、処女には効かないんだ……」

低い呟き。

「さっきからいったい何を言ってるんだ……」片目を細めて彼女を盗み見る。


――色欲能力説明:処女/処男には無効。

能力は全市の性欲を喪失させ、百年間にわたり人口増加にマイナス成長をもたらす。

能力者が死亡しても効果は持続。


彼女は手を引っ込め、突然体に激変が起きる。

「わ、ちょっと!どうした!?」慌てて彼女を見つめる。

元の少女から、少年へと変化していく。

頬はより赤く、体温は明らかに上昇し、息遣いも乱れている。


彼は私に触れようと手を伸ばすが、空中で止まる。

「ダメか……」かすかな声で、指が震える。

「自分でやっても消えないのに……」全ての欲望が、性欲へと変換されている。

再び少女の姿に戻り、私を見つめる。


「どきなさい」

「いやだ」きっぱりと拒否する。

「そう」冷たい声。


その時、教会堂の奥から全裸の男三人がよろよろと現れる。ゾンビのように呆けた表情。

「こいつら……」神父の体が熱を帯び、顔に欲望の歪みが浮かび上がる。

「本当はこんなことしたくなかった……でももう考えるのが辛い……」少女は弱々しく私を見る。

三人の男が私に襲いかかってきた。


「重力消去!」跳び上がり、空中に浮遊して攻撃を回避。

指輪を起動させ、彼らに向ける。

『能力:電撃(自己)、危険度B』

『能力:嗅覚(自己)、危険度D』

『能力:弾性(自己)、危険度C』

弾性能力者の腕が鞭のように振り下ろされる。


「私は監視員だ。攻撃を止めない場合、反撃する」

攻撃をかわし、両足で着地。

「イヴ!」システムを呼び出す。

『システム判断中……』

一人が猛然と飛びかかってくる。


「電撃か……」手のひらを向ける――能力:消去(対他)。

手刀一閃で彼を倒す。

『気絶攻撃許可』

「残念、ハズレだ」システム通知をちらりと見る。


倒れた男が背後に現れる。――能力:電撃(自己)。

「重力消去!」瞬時に背後に移動し、後頭部に蹴りを入れる。

男はよろめくが、すぐに体勢を立て直す。

「気絶しない……彼女の能力の影響か?」

「でもこれは興奮状態とは違うようだ……」興奮能力説明:情緒が高揚し、気絶攻撃が効かず、闘志に満ちて休むことができない状態。

彼らは思考能力を失ったかのように、ただ私を捕まえようと手を伸ばし、なぜか息を切らしている。疲れているのだろう。


突然、彼らは目を閉じ、ばたばたと倒れた。

「何が起こった?」警戒しながら見渡す。

神父が震える手で彼らの体を撫でながら近づいてくる。

『能力:睡魔(対他)、危険度B』システム画面に表示される。

「ああ、彼の能力か……」

最初から助けてくれればいいのに、しかも今何してるんだ?


「違う!」はっと我に返り、教会堂内を見渡す。

「彼女は!?」男たちと戦っている間に、あの少女は既に教会堂から消えていた。

「イヴ!」再びシステムを呼ぶ。

応答なし。


「あらら、ターゲットから目を離しちゃダメだぞ」

「この声……」聞き覚えのある男の声が背後から響く。

ゆっくりと振り向く。

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