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完全世界  作者: 若君
第一章 毎週金曜日更新。
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第十八話 二人だけの時間


第十八話 二人だけの時間


「やっとのことで他の連中を拠点から追い出した(任務の名目でな)。」(レッド)は言った。その口調にはかすかな安堵が混じっていた。彼女は手を伸ばし、優しく確実にベッドの上に横たわる(しろ)の細い体を抱き上げた。

「今、拠点には私たち二人だけだ」彼女はささやきながら、細心の注意を払って抱えた人を車椅子に移した。その動作は壊れやすい宝物を扱うかのように繊細だった。

そばで待機していたロボットが柔らかな毛布を差し出し、紅はそれを受け取ると、白の体に丁寧にかけ、痩せ細りすぎた両脚までしっかりと包み込んだ。

「さあ、行こう」紅は車椅子を押し、白をやや寂しげな部屋から連れ出した。


---

庭園に入ると、紅の視線は目の前の光景に釘付けになった。

彼女は葉を一枚もつけず、生気のない木々を見つめ、眉をひそめた。鮮明な怒りが潮のように押し寄せ、静かな湖面に巨石を投げ込んだ。

(グレイ)め、戻ってきたらただじゃおかんぞ」彼女は歯を食いしばるように低くうなる。

庭園の地面は異常なまでに「掃除」され、落ち葉一枚なかった。

さらに腹立たしいことに、木々の梢さえもが空っぽで、枯れた枝だけが微風の中で無意味にぶつかり合っている。


遠く離れた街中、墨緑色のショートヘアの少女を抱えたまま、屋根の上を飛ぶように移動している灰髪の少女が、突然身震いした。本能的な悪寒が一瞬で全身を駆け抜けた。

「この恐怖の感覚…」彼女は心臓をギュッと掴まれ、その骨の髄まで染みついた馴染み深さを即座に認識した。

後ろでは、狂ったように追いかけてくる女たちの群れが、悲鳴と罵声で空気を引き裂いていた。

「一体全体、どうなってるんだよ!」灰は思わず泣き声を上げ、足をさらに速めた。コンクリートジャングルの中を灰色の霞のようにかすんでいった。


「降ろして」抱かれている少女が冷静に指示した。

灰は彼女を一瞥し、すぐに後ろの執拗に追ってくる集団を振り返った。

(絶対にダメだ!)彼女は心の中で断固として否定した。

「どうしよう、そのまま拠点に戻るか…」彼女は頭をフル回転させ、リスクを測った。

「でもまだ何も買えてないんだぜ!」肝心の下着は一つも手に入っておらず、任務完全失敗の影が心を覆った。


ふと、一つの考えが稲妻のように脳裏を走った。

「そうだ、フルロボット運営の店に行けばいいんだ!」彼女の目が輝き、この妙案に奮い立った。

「よし、思いついたら即実行!」灰の口調は一気に高揚し、少女を抱えたまま体勢を変えると、分厚い壁をすり抜け、後ろの逆上した女たちを完全に振り切った。

()が色欲完全体の歴史事例を開放してくれたとはいえ…」危険を脱した後も、彼女は少し悔しそうに思い返していた。

(でも専門用語がさっぱりわからなかった!)あの難解な術語は今も彼女を悩ませていた。


「『束縛(バインダー)』が来たら、彼女に聞いてみよう!」灰は独り言のように決意を下した。

抱かれている少女は静かに彼女を見つめ、墨緑色の瞳は底知れぬ深さをたたえていた。


---

不死者(ジ・アンダイイング)の拠点内、庭園の空き地で、ロボットが柔らかなマットを丁寧に敷いていた。

紅は白を車椅子から優しく抱き上げ、その動作は慈しみに満ちていた。

「彼女が戻るまでまだ時間があるだろう」紅は見積もり、白を抱いて敷き詰められた温かいマットの方へと歩いた。

「外でくつろごう」彼女は周囲を見渡した。視界に入るのは、衣を剥ぎ取られ、わびしく気まずい姿を晒す葉を落とした木々ばかりだった。


「戻ってきたら、こっぴどく叱ってやる」紅は整った顔をしかめ、不満げな口調で言い、白を抱いたままマットの上にゆっくりと座った。白を自分の膝の上に安定して座らせた。

微風がそよぎ、白銀の髪をなびかせ、かすかな涼しさを運んできた。

「彼女に厳しくしすぎないで」白は穏やかに諭した。手を上げて風に乱れた髪を優雅に耳の後ろに押しやった。

灰の名前に触れる時だけ、彼女の常に平然とした顔に珍しい柔らかさが浮かぶのだった。


「ちゃんと管理しなければいけない」紅は顔をこわばらせ、口調は断固としていた。

「ほんと、厄介者め」話の蓋が開くと、紅は灰の「偉業」を列挙し始め、怨念が実体化しそうだった。

「道端の彫像が気に食わないからって、丸ごと消去したり…」

「それに逃げた能力者が建物に隠れたからって、中を探すのが面倒だと、建物ごと消去したり、あとは…」彼女は一つ一つ挙げていき、その口調には諦めと頭痛が満ちていた。

白はただ彼女の胸に静かに座り、最も忠実な聴衆を務め、一言も発しなかった。


「あいつは歩くテロリストと変わらない」

「この街に刑務所さえあれば、とっくにぶち込んでるんだがな」紅は憤慨しながら愚痴を続けた。

庭園は異様に静かだった。葉擦れのサラサラという音はなく、風に揺れる枯れ枝がぶつかり合う単調なカチカチという音だけが、一層の寂寥感を添えていた。

数匹の大胆なリスが葉を落とした枝に飛び乗り、庭園にいる二人を好奇心旺盛に覗き込んだ。


ロボットが温かいお茶を運んできた。紅はとあるトラブルメーカーへの糾弾を一時中断し、繊細なティーカップを手に取って一口含んだ。

彼女の膝の上に座る白は、いつの間にかそっと目を開けていた。物を見るべきではないその純白で混濁した瞳孔で、遥か遠く――この場所の静けさとは真逆の喧騒と活気に満ちた街の輪郭を――「見つめ」ていた。

紅はカップを置き、複雑で測り知れない表情になり、二人の間に沈黙が流れた。


「白」紅は低く彼女の名を呼んだ。

白はゆっくりと顔を向け、目を閉じ、正確に顔を彼女に向けた。

「どうしたの、シフ」白の口元に優しい微笑みが浮かび、目は依然として固く閉じたままだ。

「お茶、飲むか?」紅の手は自然と白の細すぎて、折れそうにも見える腰に回った。この常人よりはるかに華奢な体躯はいつも彼女の胸を締めつけた。

「それとも、ロボットにお菓子を用意させる?」彼女は白を見つめ、口調をさらに柔らかくした。


「いいえ」白は断ったが、手を上げ、細く冷たい指先でそっと紅の頬に触れた。

「あなた、昨日眠ってないわね」彼女の触れ方はすべてを見透かすような悟りを帯びていた。

続けて、彼女は紅の手を導き、自分の痩せた太ももの上にそっと置いた。

「今のうちに…」彼女はわずかに身を乗り出し、紅の耳元に近づき、蘭の息を吐くように囁いた。

「誰もいないうちに」その言葉にはかすかな誘惑が込められていた。


紅はうつむき、白のスカートの下に隠れた、異常に細い太ももに視線を落とし、しばらく沈黙した。

「そうだな…」紅はついに口を開いた。その声には従順な疲労がにじんでいた。


---

白は一人、柔らかなマットの上に座っていた。葉を落とした木々が作る、美しさのかけらもないわびしい庭園の中に。

紅の体は伸びやかにマットの上に横たわり、頭をそっと白の太ももの上に預け、虚ろな目で灰色がかった空を仰ぎ見ていた。

「どう?」白は優しく尋ね、ついでに紅がさっきまで使っていたティーカップを手に取り、優雅に一口含んだ。

「眠れそう?」彼女はもう一方の手を上げ、指先で優しく紅の髪を梳かした。その動作には慰めの意味が込められていた。


「わからん」紅は認めた。顔には濃厚な疲労感が隠せなかったが、その真紅の瞳は相変わらず燃える炎のように鋭く輝いていた。

彼女は少し不快そうに体を動かし、横向きに姿勢を変え、そうすることで少しでも眠気を誘おうとしたが、無駄だった。

「昨日逮捕した能力者なら、あなたを眠らせてくれるかもしれない」白は提案した。いつの間にかカップのお茶を飲み干し、空になったカップをそばで待機するロボットにさっと手渡した。

「灰が昨日の任務で捕まえたあれか、神父ってやつか?」紅の口調はわざとらしく長く引き延ばされ、かすかに嘲笑と荒唐無稽さが混じっていた。まるで「神父」という言葉そのものが、ここにあるべきではない幻であるかのように。


「体が限界になれば、自然と眠りに落ちる」紅は白の温かく柔らかい太ももの上に横たわり、いつもの強情さと軽蔑を帯びた口調で言った。

「あんな能力は必要ない」紅は言い、口調は平穏ながらも疑いを許さぬ力があった。白は静かに彼女を見つめた。

「あなたは眠る必要があるのよ、シフ」白が彼女の髪を撫でる手は止まらなかったが、吐き出された言葉は異常に冷たかった。

「このまま気絶する形で睡眠を続けるなら…」その言葉には言い尽くされていない警告が潜んでいた。


「それでも死にはしない」紅は彼女の言葉を遮り、口調は断固としていた。

「俺の体はもう普通の人間の体じゃない」彼女は冷たい事実――この身体は想像を超えた治癒力を備え、死の脅威を受けず、人間の限界を突破した能力者を「イヴ」が『完全人間』と定義する存在である――を述べた。

(望めば、全人類を不死の存在にすることだってできる…)その考えが紅の脳裏をよぎり、彼女の視線は白に向けられた。

(でも、そう生きることを望まない者に出会ったら…)彼女はよく分かっていた。この「恩恵」は永遠の拷問となり、最終的には人を精神崩壊の淵へと追いやり、果てしない意識の深淵へと沈めると。

そして最後は、永遠の眠りにつく。


「でも白が言うなら…」紅は顔を白の柔らかい腹部にそっと埋め、慰めを求める子供のように、声はこもって聞こえた。

「試してみるよ」彼女はついに折れ、妥協の色を帯びて言った。

「うん」白の顔に優しい笑みが浮かび、彼女の頭を撫でる手はさらに優しくなった。


---

全身を深い闇色の装束に包んだ男が、白昼の街を沈黙して歩いていた。

彼は自分を完全に包み込み、肌の一片すら見せなかった。

彼が踏み出す一歩一歩に、足元を通り過ぎる若々しい植物は、目に見える速さで瞬時に枯れ、萎み、塵へと変じた。

不死者(ジ・アンダイイング)メンバー、コードネーム『(ブラック)』、その能力は「(デス)」(完全)。


「ここか…」彼の低い声はほとんど聞こえなかった。手を上げ、指輪が投影する光学地図と目の前の建物を照らし合わせ、繰り返し確認する。

彼は重厚な扉を押し開け、室内へと足を踏み入れた。中にいた筋骨隆々、凶悪な面構えの大男たちが即座に敵意を含んだ視線を向けてきた。

「お前は誰だ、外の見張りはどうした!」ボス格の男が脅しを含んで怒鳴った。

彼はまるで聞こえていないかのようで、ただ静かに指輪をはめた手を、室内の虎視眈々と狙う全員に向けた。


大男たちは罵声を浴びせながら彼を取り囲み、濃厚な殺意を帯びて迫ってきた。

(ブラック)はただその場に静かに立ち、磐石のごとく、指輪の最終的な裁決指令を待った。

『クレジットポイントがゼロに帰着。悔い改めの機会はこれ以上与えられない』

指輪は冷たく無感情な電子音を発した。

『現場での処刑を許可する』この最終宣告と共に、黒髪の男はフードの陰に隠した口元に、温もりのない弧を描いた。

すると、最前列にいて攻撃を仕掛けようとした者たちの体が急に硬直し、まるで魂が刹那のうちに無形の手によって完全に抜き取られたかのように、目を白黒させて、糸の切れた操り人形のようにがっくりと地面に倒れ、それきり動かなくなった。


「さて、早く戻っても仕方ない」黒は命を失った死体が転がるのを見つめ、淡々とした口調だった。まるで取るに足らない雑用を片付けただけのように。

「どう時間をつぶすかだな」彼は呟き、突然死の静寂に包まれたこの部屋を見渡し、次の行き先を考えた。


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