第十六話 同衾
第十六話 同衾
朝の光が細かな金粉のように部屋に降り注ぎ、静寂の空間を温かな光の輪で縁取っていた。
ベッドの上で、灰髪の少女――灰――は深く眠りにつき、息は均等で長い。
彼女の細い指には、政府の秘密組織「不死者ジ・アンダイイング)」のメンバーであり、コードネーム『灰』、その能力はシステムによってA級危険存在と判定された『消去』(対外的)であることを示す金色の指輪がはめられていた。
今の彼女は、昨夜の徹夜の代償として、深い眠りの夢の中に落ちていた。
陽光が戯れるように跳ね、彼女の指の間の金属の環を掠め、細かくきらめく光の粒を放ち、繰り返し部屋の壁のあちこちを照らし出した。それは無言のダンスのようだった。
「うっ…」灰髪の少女は眠りの中で不安げに手足をもがき、唇を噛みしめ、濃いまつげを震わせながら、ゆっくりと目を開けた。
「ちょっと…暑いよ…」彼女の声はだらりとし、濃い眠気を帯び、ぼんやりと前方を見つめた。
目に飛び込んできたのは、あの墨緑色のショートヘアの少女――墨だった。
彼女は灰から三十センチも離れておらず、同じ枕に頭を乗せ、顔を灰に向けていた。彼女はまたもや深い眠りに落ちているようで、目は固く閉じているが、白い頬には不自然な微かな紅潮が浮かんでいた。
「ん…」灰は眉をひそめ、すぐ目の前にある寝顔を困惑した様子で見つめた。
「こいつ、熱でもあるんじゃないの?」彼女は心の中で思案し、墨の赤らんだ頬と布団の中から立ち上る温もりの間で視線を泳がせた。
彼女は一瞬躊躇い、手を伸ばし、掌をそっと墨の額に当て、そこにある熱を感じ取ろうとした。
続けて、同じ手を自分の額に当て、注意深く比較した。
「感じ…同じくらいか?」彼女は確信が持てない様子で呟いた。
(これ、無が教えてくれた原始的な体温測定法だ!)その考えが脳裏をよぎった。
「でもこんなんで正確なわけないだろ!」彼女は手を引っ込め、金色の指輪をはめた人差し指を墨に向けた。
「イヴ、体温測定」彼女は低い声で命じた。
指輪から柔らかな光線が放たれ、墨の体を素早くスキャンした。
続いて、半透明の光のスクリーンが空中に展開し、詳細な身体数値を表示した。
「体温少し高めだけど、正常範囲内だね…」灰はデータを見て、さらに困惑した。
(じゃあ熱はないってことか。)
彼女は再び墨の安らかな寝顔を見た。
「ってことはこいつは…」灰は結論を出し、少し呆れた口調だった。
「また寝戻りしたってことかよ!」(二度寝だ!)
「そうだ!」彼女はもっと大事なことを突然思い出した。
「イヴ、今の時間!」光のスクリーンに時間の数字がはっきりと表示された。
それを見た瞬間、灰の体は電流に打たれたかのように激しく震えた。
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「イヴ、三十分後に起こせって言っただろ!」灰はベッドの上に座り、指輪に興奮して叫んだ。眠気はすっかり慌てふためく気持ちに取って代わられた。
『システムリマインダー:健康維持には一日の睡眠を八時間確保する必要があります』
『深刻な睡眠不足を検知しました。ただちに睡眠を補完してください』指輪は無感情ながらも疑いを許さない電子音の警告を発した。
「いらないよ!」灰は即座に反論した。
(紅に寝坊して朝食も抜いたってバレたら…)彼女の頭には紅の厳しい顔と起こりうる結末が瞬時に浮かんだ。
【昨日徹夜したのか…よし、じゃあ一週間ずっと寝ずにいさせてやろう!】
紅が「命令」を象徴するその手を自分に向けて伸ばす恐ろしい光景が、鮮明に想像できた。
「絶対そうなる!」灰は恐れおののきながら呟き、両手で逆立った灰髪を掻きむしりながら、完璧な言い訳を考え出そうと頭を絞った。
その時、浴室の方から微かな足音が聞こえてきた。
灰がその方を見ると、墨が裸足で出てくるのが見えた。彼女は全身びしょ濡れで、まるで水から引き上げられたばかりのようだった。髪も薄手の衣服も絶え間なく滴を垂らしている。
水滴が彼女の髪の先や服の裾から滴り落ち、足元で小さな水溜りを作っていた。
「わああっ…!」灰は唖然として目を見開き、全身濡れ鼠の光景と、濡れた床を見つめた。
「何やってんだよ!」灰は思わず叫んだ。
(顔を洗うだけって言ったのに!)彼女は昨日教会の地下室から救出されたばかりの「色欲」完全体を見つめ、頭を抱えそうになった。
「洗った…」墨は平静に答えた。自分が引き起こした混乱に全く気づいていないようだった。
「服がびしょ濡れじゃないか!」灰は彼女の滴る服を指さし、頭を悩ませた。
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「ずっと私の服を貸し続けるわけにもいかないしな…」灰は愚痴りながら、自分のクローゼットから清潔な服一式を引っ張り出した。服を抱えて墨の部屋のドア前に戻る。
「入るよ」彼女は形式的にドアをノックし、その後押して入った。
目の前の光景に彼女は足を止めた――墨はすでにびしょ濡れの服を脱ぎ捨て、全身裸で部屋の中央に立っていた。
窓から差し込む朝日が彼女の若い肢体を照らし、頬には相変わらず微かな紅潮を浮かべて、静かに待っていた。
灰は彼女を見つめ、言葉を失った。
「まさか…私の下着まで貸すのか?」彼女は深い葛藤に陥り、眉をひそめた。
(いやいや、さすがに…)下着まで他人に貸すなんて、普通なのか?
(でも、このままアウターを着させるのも…良くない気がする?)
「ねえ、イヴ、どう思う?」灰は万能システムに助けを求めることにした。彼女は習慣的に指輪をはめた手を上げた。
指輪は即座に光を放ち、目の前の裸の少女をスキャンした。
『発育期の少女は、適切でフィットした下着を着用することが推奨されます。理由は以下の通り:一、必要なサポートを提供…』
「ああ、理由はいいから!」灰は長ったらしい説明を慌てて遮り、とにかく着たほうがいいという結論を得た。
「でも私のを着せるのも変だしな…」彼女は適切な解決策を考え続け、頭を悩ませた。
部屋の中で、墨の視線はドア口で考え込む灰に注がれていた。何かを思案しているようだった。
彼女の両手は無意識に、ある種の探求心を帯びて、自らの裸の肌をそっと撫でていた。
その時、灰が突然頭を上げ、雷に打たれたかのように叫んだ。
「あっ!朝食がなくなる!」時間切れの危機感が、すべての葛藤を一瞬で圧倒した。
彼女は一歩前に踏み出し、何度も練習してきたかのように素早く動き、手に持った清潔な服を墨の体に直接かぶせた。
奇妙なことに、その衣服は無形の障壁をすり抜けるかのように、全く抵抗なく瞬時に墨を包み込み、元々着ていたかのように自然だった。
「急ごう!」灰は問答無用で、まだ微かに冷たい湿り気を帯びた墨の手を引っ張り、一陣の風のように部屋を飛び出した。
引っ張られて走る墨の視線は、慌ただしい灰の背中に注がれていた。彼女が眠っている間に彼女がしてきた様々なことを、静かに考えているようだった。
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「今日の朝食当番は紫だな…」灰は墨の手を引いて階段を急ぎ降りながら、低く呟いた。
後ろの墨緑髪の少女は静かについてきたが、足取りは少しよろめいていた。
「道理であの野郎、昨日必死に存在感を下げてたわけだ…」灰は紫の昨日の行動を思い返した。
(朝食当番をサボるためかよ!)よくもまあ能力をそんなことに使うものだ。
灰は食堂の重厚なドアを押し開けた。
「遅刻だ」紅はすでに主賓席に座り、優雅にナプキンで口元を拭いていた。その口調は淡々としていたが、無形の圧力を帯びていた。
「遅刻!遅刻!」テーブルの端で、薄緑色の髪の少年と濃い緑色の髪の少女が二重唱のように声を揃え、二人を指さして叫んだ。
「何してたの?」青は手に持ったティーカップを置き、灰が墨を引っ張り、少々みすぼらしい様子を見て困惑した様子だった。
「俺たちはもう食べ終わったぜ」全身を黒に包んだ黒が簡潔に付け加えた。その口調からは感情が読み取れなかった。
「朝食、もうない!」灰は雷に打たれたように、肩が一気に落ち、がっくりと頭を垂れた。
「わ…私は一応、君たちの分も…作ったよ…」かすかでほとんど聞こえない声が隅から聞こえてきた。
存在感の希薄な紫髪の男――紫――が、自分の存在を証明しようとしていた。
「俺が食べたぜ!」反対側の無が即座に声を張り上げ、得意げで満足げな口調で宣言した。
彼一人で三人前の朝食を平らげたのだ。
「まあ、遅刻した者はな…」無は手のひらを上に向け、当然のことのように言った。
「他の者が食べてもいいってルールだ!」彼は不死者内部の不文律を引用した。
「お前が食わなきゃ済む話だろ!」灰はカンカンになって抗議し、彼女の朝食を奪った張本人を睨みつけた。
「遅刻した奴に言われる筋合いはないぜ」無は正義を主張するように反論し、さらには自分の腹をポンポンと叩いた。
「俺は腹が減りやすいんだ!」
「多分、胃に届く前に『消去』しちまってるんだろ…」灰は核心を突いて彼を暴いた。
「胃袋には全然入ってないくせに!」
「お腹壊したくないんだよ~」無は楽しげに笑いながら、まるでそれが正当な理由であるかのように言い、ついでにポケットから栄養カプセルを取り出して飲み込んだ。
灰は悔しさで歯ぎしりしたが、彼をどうすることもできなかった。
彼女はずっと握っていた墨の手を離した。
墨はその場に立ち、灰髪の少女のぷんぷんしている横顔を見つめ、何か言いたそうに、ゆっくりと手を上げ、指先を微かに動かした。
「これから任務を割り振る」紅が時宜を得て口を開き、エスカレートしそうな言い争いを遮り、墨が上げた手を宙に止めた。
「でも私、朝食食べてないよ…」灰は不満げに愚痴り、お腹がちょうどグーッと鳴った。
「まずは彼女を連れて朝食を済ませなさい」紅の視線が灰と墨を掠めた。
「その後、私のオフィスに来い」彼女の口調は疑いを許さず、すぐに他の者たちに向き直った。
「では次の任務だが…」議論は続いた。
灰は諦めたようにため息をつき、振り返って隣のキッチンへと歩き出した。
しかし墨はまだその場に立ち、灰の後ろ姿を見つめ、ついさっきまで握られていた手のひらに残る温もりを感じているようだった。
「何してるんだ、行くぞ」灰はキッチンの入り口まで来て、墨がついてこないことに気づき、振り返って急かした。
「墨」彼女は少女に昨日与えられた名前で呼びかけた。
すると少女はその声に反応して彼女を見たが、相変わらず無表情で、少しぼんやりとした表情のままで、自分の名前に何の反応も示さなかった。それは単なる無意味な音節であるかのように。
灰は不機嫌に引き返し、再び墨の手を掴んだ。
「せめて自分の名前には反応しろよ」彼女はぶつぶつ言い、少し不満げな口調で、いつも半歩遅れているこの相棒を引っ張り、食べ物の香りが漂うキッチンへと急いだ。
紅の目尻が二人のやり取りを捉えたが、口を挟むことはなく、ただ瞳の奥に微かに見える思案の色を掠め過ぎただけだった。
キッチンでは、一台のロボットが静かに作業台を守っていた。その上には、ロボットが手際よく調理した、栄養バランスが考慮された朝食が一つ、食欲をそそる湯気を立てて置かれていた。
紅は、在場の誰のものでもないこの朝食を一瞥し、一瞬考え込んだように見えたが、すぐにその日の任務割り振りの速度を上げた。
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