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エピローグ

「眠れないの?」


 そう言ったルキウスの手にはホットミルクが入ったマグカップが二つ持たれていた。


「なんだか、目が冴えちゃって」

「考え事?」

「んー、回帰してから今日までのことを、少しね」


 バルコニーに設置されたソファに深く体を沈めた私は、月を眺めながら回帰してから今日までの事を振り返っていた。

 回帰前には切れなかった悪縁との決別に、新たな選択、ルキウスとの早まった出会いに加えて、彼が回帰者だったこと。そして、ルキウスの居場所をかけた試験のこと。


「僕が落ちると思ってた?」


 考え事のうちひとつを正確に読み取ったルキウスが私の前に座り込み上目遣いにこちらを見る。


「まさか! そういう訳じゃないけど……けど……」


 そうは言うものの、ことが終わるまで私は心のどこかで『もしも』を想像していた。

 色々と順番が狂ってしまったことで発生したあれやこれやに翻弄され、ルキウスのことも回帰前とは真逆なことが起こるかと考えてしまうのは必然だろう。


「だって、イレギュラーが起こりすぎなのよ……」


 隣に腰を下ろしたルキウスが私の腿にこてんと転げる。


「いいよ、撫でても」


 膝枕をご所望らしい。


「! あははっルカったら」


 感じた温もりは私へ無条件に安心感を与えた。


「あら? あらら?」


 涙が溢れ出して止まらない。

 晩餐会前にルキウスを撫でた時はこんなことはなかったのに。


「……どうしてかしら?」


 ルキウスが言葉なく私の頬を包み込んだ。親指で私の涙を拭った後、徐ろに体を持ち上げた彼は顔を私へ近づける。


「る、るか!?」


 何が起こったか、私は理解が出来なかった。

 柔らかい感触を覚えた額を手で隠して長いソファの端へ飛び退いた私にルキウスは悪びれもせず「口じゃない」なんて答える。


「額だよ?」


 それは分かっているが。

 顔から火が出るほど動揺した。

 驚きのあまり、涙も引っ込んだ。


「あはは、可愛い」


 未だ私を包み込んだままのルキウスの手が優しく頬を撫でる。

 心做しかその彼も目尻が赤く染っているようだった。


「これからはずっと傍にいるから」

「うん……」

「僕が護るから」

「うん……」

「もう離さないからね」

「うん――」


 また涙が溢れ出す。


「離れないで」


 月明かりに照らされた私たちの影がもう一度ゆっくりと重なった。


これにて第一部完結です。

ブクマや☆、よろしければお願いいたします _ _))


現在、作者の諸事情により第二部の執筆作業がストップしております。

書き上げ完了次第、第一部同様(木・日)にて投稿していきますので、その時はまたお越しいただければ幸いです。

(下手すると、半年以上空くかも知れません。少しでも早く届けられるよう尽力しますので、ブックマーク外さずお待ちいただけると嬉しいです……泣)


――では、また。第二部にて。

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