ラグナス戦線
「エンジェリニウムは確保した。後はエンジェル・ダストだけだ」
「アルバートはダメだな、俺が出る」
「じゃあ私も行く」
プレイヤー達がそんな会話をかわす。
「誰がダメだって?」
アルバートが肩を怒らせて尋ねる。
「あ、帰ってきた」
「帰ってきた、じゃねえぞ!コガラシ、説明しろよ」
「言ったとうりだ。エンジェリニウムは既に運び出されていて、我々はそれを確保した」
「なんで早く言わなかった」
「早くも何もついさっき入ってきた情報だからな」
「ちっ、にしてもよく輸送機にエンジェリニウムが積んであるって分かったな」
「一般プレイヤーからのタレコミだそうだ」
コガラシが肩をすくめる。
「みんなピースコンパスとネオ・プライマルへのヘイトが溜まってますからね」
「スペースウォーリャーズ2の中でも最大の資源採掘地帯だしな。そこを占領してしまうとな」
「我々にとって好都合なのは間違いない。このままエンジェル・ダストも確保してA.D.Fユニットを製造し、戦争を終結させるぞ」
「カイザークランの最終目標ですね」
4人が頷く。
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ラグナス宙域。
数多の戦艦、アーマードスーツがしのぎを削る、最終決戦の場。
《バルド3、後ろに敵機!》
《援護を!》
《ちっ、しつこい奴!》
敵味方の無線が入り乱れる。
戦場のあちこちで爆発が起きている。
そんな戦場にグランディオーサが到着した。
《随分派手にやってるわね、気合い入れてよ!》
《了解!》
ノーザン隊、ワルキューレ隊各員が了解する。
《ノーザン隊、出るぞ!》
火力支援装備を積んだハルヒ達がグランディオーサの格納庫から飛び出していく。
《隊長はいないが、やることは変わらない。ワルキューレ隊、発進!》
ワルキューレ隊もノーザン隊に続いて出撃して行った。
リンナが戦場を眺める。
そこかしこがレーザーや爆発の光に照らされている。
《あまり見惚れるな、集中だ》
ハルヒが忠告する。
「わかりました」
《よし、ノーザン隊各機、交戦判断は個人に任せる、好きに暴れろ!》
ノーザン隊が散開する。
「よーし、頑張るぞ!」
早速、複数の敵がリンナに狙いを定める。
「来た!」
ミサイルポッドを起動し、ミサイルを放つ。
敵機がミサイルを避けようと散開する。
それをリンナがライフルで狙い撃ちする。
2機ほど撃墜したが、相手も負けじと反撃してくる。
「おっと」
エリアルシャッターが俊敏な動きで避け、敵に迫る。
「とりゃー!」
エナジーブレードが敵の胴を一閃する。
《こいつ、強いぞ!》
敵のパイロットが警戒する。
「よし、戦えてる!」
リンナが不敵な笑みを浮かべる。
「今度は....」
エリアルシャッターから7基のファンネルが射出される。
「いっけー!」
7基のファンネルがあっという間に敵を全滅させる。
「すごーい!この調子で!」
エリアルシャッターが戦場をファンネルと共に駆け巡る。
《なっ!》
《敵にヤバいやつが!》
敵が焦り出す。
《あんまり調子に乗るなよ!》
バリーが忠告しながら遠距離射撃でリンナの後ろを取ったアーマードスーツを撃ち抜く。
「はい!」
リンナがエナジーブレードを振るって敵を両断する。
⭐️⭐️⭐️
「戦局は?」
エレンが艦橋から戦場を眺めながら副官に尋ねる。
「敵の戦力にノーザン隊、ワルキューレ隊を確認しました。しかし、エリアルククバーヤの姿は確認できていません」
「なんだ、やつがいると思ってわざわざここまで出向いたのに。まあ良い。艦砲射撃は続けろ、私も出る」
「了解しました」
エレンが格納庫に向かう。
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「これが私の新しいアーマードスーツ?」
ノアの方舟に到着したアテナが目の前にそびえ立つアーマードスーツを見上げる。
ラルが頷く。
「君が最高のパフォーマンスを披露できるように最新鋭のエンジン、駆動系を搭載している。武装もバーストマグナム二丁とエナジーソード、ファンネル5基のみだ」
「随分シンプルなんだね。まるであの人のアーマードスーツみたい」
アテナが呟く。
「心理効果も馬鹿にならないからな。さ、我々も行くぞ。時間がない」
ラルがアテナを促す。
「わかったわよ。到着次第出撃するわよ」
「うむ」
ラルは足早に去っていき、アテナも新しい自分のアーマードスーツに乗り込んだ。
艦橋に到着したラルが艦長席に座る。
「全艦隊、戦闘準備完了しています」
副官からの報告に頷いたラルが指示を出す。
「全艦隊、ラグナスへワープせよ!」
ピースコンパスの大艦隊がラグナスへワープしていく。
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ハルヒのアーマードスーツのレーダーに高速で飛翔する機体を確認した。
《エリアルフェンリルか!》
ハルヒがライフルを装備する。
《無茶するなよ!》
バリーからの通信が入る。
《やるだけやってみるさ》
エリアルフェンリルがファンネルを射出する。
予測困難な機動のファンネルがハルヒを翻弄する。
《ちっ!》
ファンネルが下がった直後、エナジーブレードを振り上げたエリアルフェンリルが猛スピードで突進してきた。
2機のエナジーブレードが激しくぶつかる。
《速いっ!》
ハルヒが反撃に転じようとしたが、すでに後ろにまわり込まれていた。
《なんて奴....》
《諦めるな!》
エリアルガスターがエリアルフェンリルの横薙ぎの一閃を間一髪受け止めた。
《ガスターか、さすが伝説的メンバーの一人だ》
エレンが笑みをこぼす。
《誰が伝説だって?》
ヨッシーが聞き返す。
両機からファンネルが射出される。
エリアルガスターとエリアルフェンリルが斬り合う。
ファンネル同士も互い撃墜せんとドッグファイトを繰り広げる。
《ハルヒ、お前はリンナをサポートしてやれ!》
ヨッシーの言葉にハルヒが了解する。
《分かった!無茶するなよ!》
ハルヒがリンナの元へ向かう。
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ピースコンパスの大艦隊がラグナスに到着した。
「遅れは取れんぞ!全アーマードスーツ発進!」
ラルがビシッと指令を出す。
《んじゃ、どんなもんか見せてもらおっか、エリアルワルキューレ》
エンジンを点火し、操縦桿をグッと押し込む。
《エリアルワルキューレ、行きます!》
エリアルワルキューレがとてつもないスピードで格納庫から飛び立つ。
《わっ、何これ!》
あまりの速度に目が追いつかない。
《新型機はどうだ?》
ラルが呑気そうに尋ねてくる。
《速すぎるよこれ。目が追いつかなかった》
《機動力のアドバンテージは大きいぞ》
《はいはい》
アテナが通信を切ってレーダーを確認する。
《見つけた、エリアルフェンリル!》
レーダーの位置に移動する。
《目も慣れてきた。どれだけ使いこなせるか....》
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エリアルガスターとエリアルフェンリルの戦闘はまだ続いていた。
だが、エリアルガスターのファンネルは全て破壊され、エリアルガスター自体もボロボロになっていた。
《ちっ、俺じゃこんなもんか》
ヨッシーが自嘲気味に笑う。
《お前にしてはよくやった方だろ、ハナサギが相手ならここまでもっていなかっただろうが》
《アイツは異次元すぎる、話になんねぇよ》
エリアルガスターのエナジーブレードが弾き飛ばされる。
《残念だったな!》
エリアルフェンリルがエナジーブレードを振り上げる。
そして振り下ろそうとした瞬間、どこからか撃たれたレーザーに弾き飛ばされた。
《なっ、誰だ!》
エレンが後ろを向く。
バーストマグナムを構えて、猛スピードでこちらに向かってくるアーマードスーツが見えた。
白い機体にクロス型のウィング、見覚えがある。
《ハ、ハナサギ!?》
エレンが動揺する。
ヨッシーも唖然とする。
《なんでアイツが?引退したはずじゃ》
エリアルワルキューレが装備をエナジーブレードに換装する。
《くっ、ファンネル!》
ファンネルが白い機体を墜とさんと襲いかかるが、エリアルワルキューレは華麗な動きでファンネルを切り裂き、一層スピードを上げた。
エレンがヒートアックスを装備する。
《引退したんじゃなかったのか!》
エリアルワルキューレとエリアルフェンリルが切り結ぶ。
《引退?あー、ハナサギさんと勘違いしてるのか。正体はまだ明かさないでおこう》
エリアルワルキューレがヒートアックスを振り払う。
《ちっ!舐めるな!》
振り払われた勢いを利用して回転切りを浴びせるが、軽々と避けられてしまう。
《上に》
エレンが上を見るが、エリアルワルキューレはいない。
《ど、どこに?》
エレンがレーダーを確認する。
エリアルワルキューレを示す光点とエリアルガスターを示す光点が一緒になって旗艦の方に向かっている。
《い、いつの間に....!》
エレンが全速力で追いかける。
「す、すごい人がいますね」
リンナが呆然とする。
一度戦ったからわかる。
あのピンク色のアーマードスーツはとんでもない化け物だと。
おそらくネオ・プライマル最強のプレイヤー。
そして突如現れた白いアーマードスーツはそれを翻弄していた。
《あれが、噂に聞くシンギュラリティ、ハナサギか》
ハルヒが上の空で呟く。
まるで時が止まったかのように戦場が動きを止める。
敵も味方も伝説のプレイヤーの帰還に驚いているようだ。
リンナはハッとする。
敵の動きが止まっている、大チャンスだ!
《全武装解放、ハイグレードロックオン》
機械音声が告げる。
「いっけー!」
エリアルシャッターに搭載されているあらゆる火器が敵に襲いかかる。
《よっしゃー!》
バリーも破壊的な攻撃を炸裂させている。
敵も戦闘を再開し始めた。
戦場にまた時間が流れ出した。




