最後の準備
ワープ空間から抜けた輸送船から3機のアーマードスーツが放出される。
「オーディンとの接続確認、あそこに見える宇宙ステーションがレヴナントだ」
ハルヒがリンナに伝える。
「カイザーの戦艦は一隻、中型艦か。リンナのルベリオスで一撃だな」
バリーが指示を出す。
「ハルヒは輸送船の護衛だ。リンナは敵艦をぶち抜け。俺が援護する」
「了解!」
「分かった」
ハルヒが輸送船の側による。
リンナとバリーが敵の戦艦に全速力で飛んでいく。
⭐️⭐️⭐️
「リデル、敵がこちらに接近中!迎撃せよ!」
突如母艦から命令を下されたリデルは僚機を連れて敵の迎撃に向かった。
敵はわかりきっている。
「敵はピースコンパスかネオ・プライマルだ。確実に墜すぞ」
「了解」
僚機の3人が武装を長距離ライフルに切り替える。
「2機捕捉、内1機はバンカーバスターを装備しているぞ!」
僚機の1人が驚いて報告する。
「私が行く、援護は任せるぞ!」
リデルのアーマードスーツがリンナたちのところは全速力で飛んでいく。
それを察知したリンナがその方を向く。
「きた!撃ちます!」
バンカーバスターがリデルに向けて発射される。
「!」
リデルは間一髪の所でバンカーバスターを避けた。
「対人で使うのは反則だろ」
リデルが呟く。
「リンナは戦艦を!あいつは俺が相手する!」
バリーがリデルの元へ向かう。
「くっ」
リデルもエナジーブレードを抜き払ってバリーの一振りを防ぐ。
リンナは長距離ライフルを避けながら戦艦に近づいていく。
「くらえ!」
リンナが発射したバンカーバスターが戦艦を貫く。
「ちくしょう!」
リデルの僚機達がリンナに斬り掛かってくる。
「うわっ!」
リンナがルベリオスを撃ち込む。
掠った1機が爆発四散する。
「数的優位はこちらにある、懐に潜り込め」
「了解」
二手に別れたアーマードスーツがライフルとエナジーブレードを織り交ぜた連携攻撃を繰り出す。
「鬱陶しいな」
リンナがオーディンの全武装を解放、《ハイグレードロックオン》を発動する。
エリアルシャッターの全武装が火を吹く。
「ぐおっ!」
「ちくしょう!」
2機のアーマードスーツが爆散する。
「なっ、もうやられたのか?」
リデルが驚愕する。
『2人がかりで墜せないとは、あいつ何者だ?』
「よそ見してんなよ!」
バリーとリデルが激しく切り結ぶ。
「ぐっ、コイツ!」
リデルが呻く。
『何が壊滅状態だ、生き残ってるやつのレベルが桁違いじゃない!』
リデルが胸中で怒鳴る。
バリーがライフルをパージした。
「一騎打ちでもしようってのかしら?」
リデルは乗り気だったが、バリーは何故か逃げ出した。
「は?」
リデルはすぐに追いかける。
パージされたライフルの銃口がリデルのアーマードスーツと重なる。
ライフルが遠隔で発射される。
「えっ」
リデルの機体がビームに貫かれて爆発する。
「いやー、やってみるもんだな」
バリーが感心したように呟きながらライフルを回収する。
《終わったか?》
ハルヒから通信が入る。
《バッチリだよ。輸送船を宇宙ステーションに向かわせよう》
「ふう、あっちも終わったみたい」
リンナがほっと一息つく。
《リンナ、ついてこいよ》
バリーが笑いながら言う。
「はーい」
3機のアーマードスーツに護衛された輸送船がレヴナントに入港する。
レヴナントは無人の備蓄倉庫のようで、カイザークランの人間は誰一人いなかった。
「よし、詰められるだけ詰めてくれ」
アーマードスーツから降りたハルヒが輸送船のクルーに指示を出す。
バリーは念の為入り口で警備をしている。
リンナもエリアルシャッターから降りてハルヒの隣に立つ。
「バリーが褒めてたぞ」
「バリーさんがですか?」
「ああ。以前に比べて、見違えるほどに強くなったってな」
「わぁ」
リンナの顔が明るくなる。
「ふふ、リンナはこの戦争が終わったらどうするんだ?ピースコンパスには無理やり入ってもらったわけだが」
ハルヒが尋ねる。
「とりあえず録画してる分を全部編集しないとですね。どれだけ掛かるのやら」
「そうじゃなくて、ゲーム内での」
「え、あぁ。まだ悩んでます。ピースコンパスには成り行きで入りましたけど、悪い気はしてないですし、居心地も良いので」
リンナがにこやか笑顔を見せながら言う。
「っ、そうか」
ハルヒの口元が緩む。
「あれ、ちょっと嬉しそうですね」
リンナがハルヒの顔を覗き込んでニヤニヤする。
「べ、別に」
ハルヒがそっぽをむく。
「とりあえず使えそうな装備は全て積みました。早いとこ撤退しましょう」
クルーがハルヒに伝える。
「分かった」
ハルヒは頷いて自機に向かった。
リンナもエリアルシャッターに向かう。
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「くそくそ!あんな奴らに!」
リデルがブチギレながらコンソールをぶっ叩く。
「どうやらお前がやり合ったのはノーザン隊のようだ。ピースコンパスの次点だな」
コガラシが腕を組んで考え込む。
「厄介な奴らが生き残っていたか」
「ピースコンパスのトップエース部隊はワルキューレだったよな」
アルバートが尋ねる。
「そうだ。そいつらも生き残っているなら、しんどい戦いになるだろうな」
コガラシがため息をつく。
「ネオ・プライマルのエレンも逃げ仰たようだしな。ネオ・プライマルとピースコンパスが同盟を組んでこちらと対峙する可能性もある」
「ワルキューレに、ノーザン、エリアルフェンリルが徒党を組んで俺たちを潰しに来るのか」
アルバートが肩をすくめる。
「いくら数を集めても心許ないのヤバいだろ。それにハナサギとかも来るかもしれないし」
「ハナサギ?ああ、伝説のなんちゃら〜だっけ?人によって呼び方が違うから覚えにくいのよ」
「伝説の世代だな。ハナサギ、ミネー、カガリ、シンギュラリティに覚醒した者達。他にも腕利きのプレイヤーが数多くいたらしい」
「でも現役なのはエリアルガスターだけでしょ?アテナは違うし。そもそも『スペースウォーリャーズ2』にシンギュラリティっていう要素ないでしょ。だからハナサギとかが来ても大して変わらないわよ」
リデルがキッパリ言い切る。
「そうだと良いんだがな」
コガラシが窓の外に広がる宇宙を眺めながら答える。
⭐️⭐️⭐️
「うん、これだけあればA.D.Fユニット奪取作戦は問題なく進められるはずよ」
輸送船が持ち帰った装備を確認したユキノが頷く。
「ご苦労様、3人とも」
「えへへ」
ユキノの労いにリンナが気を良くする。
「どうかした?あ、そうだ」
「なんだ?」
ハルヒが尋ねる。
「A.D.Fユニット奪取作戦だけど、ネオ・プライマルとの連合作戦になるわ」
「はっ、当然だろうな」
バリーが鼻で笑う。
「作戦決行は明後日だな?」
ハルヒの発言にユキノは首を横に振った。
「明日よ。カンナギの情報筋からの情報よ。彼曰く、信頼できるそうよ」
「それを先に言えよ!」
バリーがツッコむ。
「まあ、遅くて3日ですもんね。覚悟は出来てますよ」
リンナが背筋を伸ばす。
「こちらの戦力は?」
「ノーザン隊、ワルキューレ隊、その他2部隊。総数23機よ。ネオ・プライマルからも40機くらい寄越してくれるらしいわ」
「対するカイザー達は軽く3000は超えてるだろ?A.D.F.ユニットを奪取出来なけりゃ全滅だな」
後ろからヨッシーが会話に割り込んでくる。
「ヘイトを集める囮も必要ですね」
ヨシオも提案する。
クラリスとベネットも後ろに控えている。
「ま、勝てば良いんでしょ?」
アテナも不敵な笑みを浮かべてリンナの隣に立つ。
《こちらも増援を取り付けた。決戦の準備はできている》
ラルから通信が入る。
「ありがと、ラル。でも協力してくれる人が誰なのかは教えてくれないのね」
《固く口止めされている。それが参戦の条件だ。まあ、すぐに忘れてそうだがな》
ラルが通信を切る。
「切っちゃった」
リンナが呆然とする。
「はあ、まあ良いわ」
そう言ってユキノが立ち上がる。
「この戦争は終着点を見失った。意味もない戦いがずっと続いて、第三勢力の介入によって今は『スペースウォーリャーズ2』全体が混乱に陥っているわ。もう、こんなことは終わりにしましょう。私たちから始まった戦争が引き起こした事態よ。明日、A.D.F.ユニット奪取作戦を成功させ、カイザークラン達を倒してこの戦争にケリをつけるわよ」
「了解」
皆がカッコつけて敬礼する。
⭐️⭐️⭐️
『ったく、カンナギも無茶言いやがる』
二徹目の守岡はまだ作業を進めていた。
『なんだって運営の俺がクラン同士の大規模戦闘に肩入れしなきゃいけないんだ?カイザークランの旗艦の弱点を探るのなんて俺の仕事じゃないだろ。自分のとこの奴に偵察させろや』
作業を進めれば進めるほど怒りが湧き上がってくる。
「クソッタレ」
心の声が漏れ出す。
⭐️⭐️⭐️
「A.D.Fユニット、明日完成らしいぞ」
アルバートがカンナギに報告する。
「知っている。つまり決戦は明日だ」
「あいつら、本当に来るのか?」
アルバートが訝しむ。
「当然だ。圧倒的な数的優位をくつがえすにはA.D.Fユニットを使うのが確実だからな」
カンナギが立ち上がる。
「明日、全勢力をもって奴らを迎え打つ!無論俺も出る」
「分かったよ。リデルにもそう伝えとく」
アルバートが艦橋を立ち去る。
⭐️⭐️⭐️
次の日、ログインしたリンナ達は準備を整え、ネオ・プライマルと合流して最終決戦の場、『サコトス』へと向かった。




