ろくろ首/抜け首
山田彩花は、静かな郊外のマンションに住んでいた。マンションは新しく、住人たちもみな親切で、特に問題なく生活していた。ある夏の夜、彩花はベッドに横たわりながら、窓の外を眺めていた。外は静かで、心地よい風がカーテンを揺らしていた。
その時、ふと感じた視線に気づき、彩花は窓の方を見た。そこには、暗闇の中からじっと彼女を見つめる目があった。驚きと恐怖で心臓が早鐘のように打ち始めたが、恐る恐るカーテンを開けてみると、そこには誰もいなかった。
「見間違い…だよね。」
彩花はそう自分に言い聞かせ、もう一度ベッドに戻った。しかし、その夜以降、毎晩のように同じ視線を感じるようになった。しかも、視線の持ち主は、いつも決まって二階の窓から彩花を見つめているようだった。
数日後、彩花は隣の住人である藤井さんに誰かに見られている気がすることを相談した。藤井さんは驚いた表情を浮かべながら、彩花の話を聞いてくれた。
「それは気味が悪いですね。でも、このマンションは新しいですし、誰かが悪戯しているのかもしれません。またもし女性の視線を感じたら教えてください。」
藤井さんはそう言ってくれたが、彩花の不安は消えなかった。
その夜、彩花は再び視線を感じた。今度はしっかりと確認しようと、窓に近づいた。その時、突然カーテンの向こうに女性の顔が現れた。彩花は驚愕し、悲鳴を上げて後ずさりし、部屋を飛び出して藤井さんの部屋に駆け込んだ。
「藤井さん!またあの顔が…!」
しかし、藤井さんは不在だった。彩花は震えながら自分の部屋に戻った。もう一度窓に近づいてみたがそこには何もなかった。
「ここ…二階よ…?どうやって…?」
彩花はもう見間違いとは思えなかった。確かに窓の向こうに女性の顔が映っていた。
そういえばあの顔、どこかで見覚えがある気がする…いやそんなまさか…そういえばあのとき…そう思った瞬間彩花の耳元で声が聞こえた。
「あなたのこと、ずっと見ていたのよ。」
次の日、彩花の失踪が発覚した。警察が捜査を進める中、マンションの住人たちは皆、彼女の失踪に戸惑っていた。
やがて、藤井さんが警察に証言をした。
「実は、あの部屋には以前も似たような事件があったんです。あの部屋には、女性の幽霊が出ると噂されていて…。」
その後、彩花の部屋には誰も近づかなくなった。しかし今度また新しい住人が来るらしい。藤井さんは隣の人がどんな人なのか気になって仕方がなかった。