バーチャルらしいことがしたい(4)〜リリアちゃんを救いたい〜
バーチャルらしいことがしたい(3)を修正しました。
ジンが牢に来た理由を詳細に書きました。今話を読んでジンが牢へきた理由が気になった際は前の話を読んで下さい。
前回のあらすじ
牢獄に滞在することになった小野の元に同じプレイヤーであり魔人のジンがやってくる。なんで牢へ来たのかと問う小野。
モンスターを殴ったつもりが人間だったらしい。それで殺人未遂の容疑で収容中とのこと。
小野とジンが牢獄で手に入るスキルの話に盛り上がっていると……
小野とジンの二人はこの牢獄で手に入るスキルを考察していた。きっと強力なスキルが手に入るに違いないと期待を膨らませる二人。だがここで一つの疑問が発生する。
どうやってスキルを手に入れるんだ?
滞在した時間で手に入るのかそれともなにかイベントが発生しするのか。初めて参加した小野はもちろん三回目のジンも入手方法を知らなかった。入手方法・スキルの詳細共に不明であるが二人はどのように牢獄を攻略するのだろうか。
ジンは牢壁に耳をあて隣の部屋の声を盗み聞きしていた。
「小野、隣から泣き声が聞こえないか」
小野も聞き耳を立ててマネをする。
「鳴き声は聞こえないが、確かに女性の嗚咽は聞こえる、おそらく彼女は生き別れの弟と決別を済ませてきた後なのだろう」
「いいから! 考察しなくていいから! 感情移入しちゃってしんみりしちゃうよ」
隣の牢にいる女性は急に嗚咽まじりに自分語りを始めた。
「私はレリア王女の妹リリア、夕方に料理をしていたら急に背後から殴られたの! 私は思わず悲鳴をあげながら襲ってきた魔人をさしたのよ」
「同意見だよ」
看守の談話を盗み聞きしたときか、ジンとの会話かは思い出せない。はたまた両方か。
「そしたらその魔人は看守に連れてかれたわ。私は怖くなって父上に抱きついて泣きじゃくりって事の顛末を説明したのそしたら……」
察しのいい小野はジンに問う。
「この魔人ってジンじゃないのか?」
「俺じゃないよ、俺が殴った女はタコののように無数の足をスカートに仕立てた緑肌の化け物だよ。
リリアとは何回も会ったことがあるから後ろ姿でもモンスターとは間違えないよ」
「そしたら父上は怒り狂って私を牢へ放り込んだのよ、鯉にエサをやるようにね」
「看守の話がここで繋がるとは……」
小野が聞き耳を立てて収集した話の点と点が偶然にも線になった。もしや偶然ではないのか。
小野はリリアを殴ったのはジンなのではないかと推察していた。ジンを犯人だとすれば牢獄で聞いた三つの話の辻褄が合うジンの言葉を信じるのならジンではないのだが。
「私は許せないの、私を背後から襲った卑怯者と私を辱める父上を許さない。全員殺してやるんだから!」
リリアの狂気に満ちた魂の叫びは牢獄内にいる人々の産毛を震え立たせる。小野やジンだけではない、牢に収容されている百人余りの囚人がその殺気を肌で感じていた。
小野とジンの頭上にアラーム音と共に赤い画面が表示される。どうやらジンが話していたイベントのようだ。
【リリアの暴走を止めよ、手段はいとわない】と画面に表示されている。
リリアの緑色のタコ足が壁を突き破って二人を襲う。
牢壁がなくなりリリアの姿が露わになった。緑色の肌にスカートのように伸びる無数のタコ足、そして髪は蛇で形成されている。
「これがいわゆるメデューサってやつ?」
「メデューサなら今頃石像になってるよ、どちらかというとキメラの類なんじゃないかな」
ジンは「小野は初めての戦闘だろ? 痺れるしワクワクするよな」と言う。
「ワクワクより不安が勝るけど、素手で勝てんの?」
「え?」
ジンは腰に胸と体をポンポンと触り、身に着けている物を確認する。
そういえば看守に武器も鎧も没収されたのでした。
次回に続く。