バーチャルには変わり者が多い(完) 〜一位になるためなら手段は問いません〜〜なんだろうこの茶番は〜
小野は裏入口に周る。ハバネロマンこと天寺が観客に手を振る背中が見える。
小野が背を睨み乱入するタイミングを見計らっていると、またも肩を叩く者がいた。
「おい、勝手に中に入ろうとするな、下手なことをすれば殺されるやもしれん」
「俺の諭吉が3人殺されるよりマシだ、あとなんでついてきてるんだよ」
「別に?心配してついてきた訳じゃないぞ」と言いながらバナナを口に頬張る工藤。
ツンデレかと思ったけど本当に心配してないわ、これ。
小野と工藤が他愛もない会話をしていると馬たちがスタートの位置に着く。ハバネロマンも例外ではない。小野もそれに合わせてクラウチングスタートで乱入の準備をする。何故か工藤も頬を膨らませながら準備していた。小野はスタートの合図と共に走り出し、ハバネロマンに飛びかかり寝技をかける。
小野が天寺に寝技をかけると、とぅ!という掛け声と共に工藤が俺の首をロックし寝技をかけてきた。団子三兄弟のようになる。「なんでお前が俺に寝技かけてんだよ」
「このままではお前の命が危ない」
「今俺の命を脅かしてるのはお前だろ!」
天寺と小野が苦しいのはわかる。
「なんで工藤も泡ふきながら苦しんでんだよ」
小野がふと馬をみると馬の脚から腕が生えており、工藤の首を掴んでいる。
馬の足から手が生えてるわけがない、そうは思いながらもう一度馬を見る小野。
見れば見るほどこいつは馬じゃない。四足の足、それは人の足だった。
なんと男二人が獅子舞のように馬の着ぐるみの中に入っていたのだ。
なんで馬じゃないのにレース走っているんだ?そんな疑問が浮かんだけど、周囲を見渡せばそんな疑問は飛んでいってしまった。牛やキリン、馬かと思えばシマウマ。競馬とはいったいなんなのだ。
ハバネロマンが息苦しさに耐えかねて馬(人)の首を掴み、中からはもだえ苦しむ声が聞こえてくる。
「小野、どうやってレースに勝つつもりなんだ?」
レースは残り半周、順位はビリ。この危機的な状況を打開する術があるののか?!
「一つだけ策がある」
これしか方法はない。
小野は一滴の涙が頬を伝う。
「これを彼のお尻に……」
小野はハバネロマンの首元から片手を離し工藤にロケット渡す。
工藤もまた涙を流し「こんなものをさしてしまったら、彼の穴はもう使い物にならないわ」と言いながら躊躇なくけつにぶっさした。
感極まり女の一面が見えてしまう工藤だったが、慈悲はないようだ。ロケットは挿入されるとすぐに引火し凄まじい早さで順位を上げた。馬(人)は前方にいるキリンやシマウマを抜き遂には乗馬していた三人までも置き去りにした。
小野・工藤・ハバネロマンの三人は勢いのあまり地面にめり込んでしまう。小野がめり込んだ頭を引っこ抜くと青空と芝生、壁を突き破って進んだであろう穴のあいた壁が広がっていた。
小野は土を手で拭いやりきったような顔つきをしている。
「はぁ、どうやら一位は取れたみたい」
「これでよかったのか?」
工藤のツッコミに小野は一瞬考えたが、すぐに考えるのを止めて清々しい顔つきで答える。
「わからない!」
こうして無事レースは一位で終われたとさ、おしまい。
「ちょっと! 頭! 頭が抜けないんですけど。二人とも引っ張てくれー」
ハバネロマンの頭は抜くことができたのだろうか、それともそのまま土に帰ってしまったのだろうか。真相はハバネロマンが次に登場するまでわからずじまいだとさ。