零時、さらなるショックを受ける
さて、アリスちゃんとのコラボから3日経った今日。
アリスちゃんはちょくちょくアパートに転移して遊びに来ると宣告してから【マホロバ】という会社に戻った。
彼女がいる【チーム飛鳥】を始めとしたダンジョンライバー達のための会社だそうだ。
なお、アリスちゃんは学校に通っており、基本は【マホロバ】内の寮から通学している。
「それにしても、企業所属になると拠点手続きにあんな補正機能があったなんてなぁ」
ただ、戻る際のアリスちゃんのスマホ経由で美波さんと通話した話では、個人勢の俺からしたら何とも羨ましい補正があったのだ。
俺は、新たなダンジョンへ向かう準備をしながら、美波さんとの通話を思い出していた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『企業所属の場合は、拠点を複数設定できるし、拠点から拠点への転移も可能なんよ』
「マジですか!?」
『大マジ。 企業の場合は、複数のパーティーと一緒になる事が多いから、いちいち移動して拠点を変えるという面倒を排除した形なんよ』
「羨ましい限りです。 企業所属だとそんなご都合主……、いや、メリットが……」
『うちの財閥が抱えるこの会社は基本的に自由がモットーなんやけど、他の企業やと制約が多いんよ。 例えば他社とのコラボ禁止とか』
「ああ、それがあるんですか……」
美波さんとの通話で、企業所属の場合の拠点設定と転移システムの補正を教えてもらった。
これは、国からの資料でもPDFで確認できるのだが、実際に利用している美波さんからの発言は確実に信頼できるだろう。
とはいえ、企業所属となるとその企業が抱える制約を受ける事となり、かえって不自由になる事もあるという。
他社や個人勢とのコラボ禁止とか、高レベルダンジョンの攻略配信の禁止とか、この後に挙げられた制約は企業で異なるみたいだ。
幸い、飛鳥財閥が運営するライバーの為の会社である【マホロバ】は、そんな不自由な制約は設けていない。
もし、俺が企業所属を望むとしたら、その会社なんだろうな。
副業もOKらしいし。
とまぁ、そんな通話を美波さんとしていたのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「そういや、アリスちゃんの学校は攻略者向けの一貫校だったな。 頑張ってるだろうか」
通話の件を思い出し終えた所で、アリスちゃんが通う学校の事を思い出していた。
国の資料によると、彼女が通う攻略者向けの一貫校は、午前中のみの登校となっており、午後は通信制となっている。
ただ、午後は自由な時間が組めるので、アリスちゃんは俺のアパートに遊びに来たり、【チーム飛鳥】の一員としてダンジョンの攻略配信したりできるようだ。
「さて、今日は京都市の……」
俺がこれから向かうダンジョンの目的地を確認しようとした時に、不意にプライベートスマホを見る。
そこには、OHTubeの動画が再生されていたのだが……。
「うそ……だろ……!?」
その動画の内容に、俺はショックを受けた。
その内容は、あるダンジョンで【超獣】のダークドラゴンを素手でワンパンで倒すと言う内容だった。
アーカイブによる再生なのだが、その様子が多くの視聴者に受けており、かなりバズっていた。
なお、アーカイブの再生数も他の攻略者チャンネルより100倍以上を誇っていた。
さらに例の煽り発言にも、多くの視聴者が賛同の意思を示しており、さらにショックを受ける。
「クソ兄貴……、余計な事を……!」
そのアーカイブの主は、俺にとってのクソ兄の一人、長兄の岡崎 哲男だった。
チャンネル名は【Ch.Tetsuo】。
そのアーカイブの光景を見て、劣等感が再び襲い掛かり、俺は暫く動けなかったのだ。
「兄様、ゼロ兄様!!」
「零時くん!? どうしたの!? アリスちゃんが来たのよ!!」
学校が終わって、こっちに転移したたアリスちゃんと大家さんである彩音さんのノックの音が聞こえない程に……。
俺が二人の存在に気付いたのは、彩音さんが予備の鍵でドアを開けた時だった。
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