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報告と報酬と出会い

「なるほど。 あの姪っ子は法を違反して墜ちたのね」


「はい。 幸い前科は付かないみたいですが、ライセンスは剥奪され、二度と攻略者には戻れないし、今まで稼いだ収益は全て罰金に消えますね」


「罰金は100万円以上よね? まぁ、自分は特別でだからって見下してたツケね」


 天橋立からアパートに転移し、役所に行く前にアパートの大家をしている叔母の彩音さんに、昨日の絵理奈のやらかしについて報告した。

 発覚したのは夜だし、ダンジョン攻略も控えていたから、親族の彩音さんへの報告が遅れたのは否定できないが。


 俺からの報告を受けた彩音さんは、絵理奈の事を嫌っている為に、反応は冷たかった。

 どうも俺だけでなく、彩音さんにも見下していたらしい。

 悪い意味での自業自得とは、この事か……。


「下手したら絵理奈がそっちに泣きつく可能性もあるかと思って、報告した次第です」


「なるほどね。 分かったわ。 こっちも断固とした対処をしていくから安心してね」


「はい」


 ひとまず、今回のライセンス剥奪によって、絵理奈が彩音さんに泣きつく可能性もあるが、彩音さんは断固断る形の対処をしていくようで、安心した。


「それじゃあ、役所に行ってきます」


「はい、いってらっしゃい」


 暗い話もここまでにして、俺はダンジョンクリア報酬を貰いに役所へ向かった。

 流石に報告と報酬は、役所に行かないとダメだしな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「お疲れ様です、岡崎 零時さん。 こちらが今回のクリア報酬となります」


 役所に到着し、今回の天橋立のダンジョンのクリア報酬を対策庁のスタッフさんから受けとる。

 正確には、受け取り明細書なのだが。


 明細書に書かれているのは、基本報酬額とそこから税金や国民年金控除額を引いた天引き額、さらには個人勢の場合に貰える非課税の手当て、そして実際に口座に振り込まれる受け取り金額だ。


 今回のダンジョンは、レベル1だったので、基本報酬額は3000円だった。

 そこから天引き額を引いた額がお金が口座に振り込まれるのだ。

 俺の場合は、個人なので非課税の手当ても2万円は加わってるが。


(レベル1だったから、報酬は安いが配信のサポーターの月額収入とお布施の収益がそこそこあるからな……。 あと、もう一つのイラストレーターとしての報酬もあるから)


 ダンジョンクリアの報酬は、ダンジョンのレベルによって違う。

 レベル1だと平均で基本額が3000円程度なので、攻略者単体では食っていけないだろう。

 なので、多数の攻略者は他にも別の仕事をしているようだ。


 俺の場合は、配信によるお布施とサポーターの月額収入もあるし、イラストレーターとデザイナーによる別の仕事の報酬もあるから、やっていけるのだ。


(さて、帰ったらお絵かき配信をしようかな。 対策庁は今のチャンネルでも雑談オンリーや他の配信もやっていいって言ってたし)


 報酬を貰って、ひとまずアパートに戻ってからお絵かき配信でもしようと考えていた。


「あら、アリスちゃん」


「久しぶりに来たのです。 他の人の配信を見た後で、アリスも宮津城跡に出現したダンジョンをクリアしたのです」


「まぁ、企業所属ながら今回はソロでクリアしたのね。 じゃあ、手続きしておきますね。 明細書は飛鳥財閥から貰って下さいね」


「はいなのです♪」


 そんな時に、金髪のセミロングで頭には赤いリボンを付けたカチューシャを装備していた幼い女の子が宮津市の役所に入って来た。

 スタッフさんがその子に向かって言った名前に俺はふと立ち止まってしまう。


(あの子……、アリスちゃんと言ったか? まさか……?)


 宮津に着く前に行ったゲリラ配信でのコメントの主がアリスという名前だったし、喋り方もコメントと同じ風味だったし……。

 気にはなったが、俺はお絵かき配信とイラストの仕事もしていくので、役所を出て行こうとしたら。


「そこのお兄さん!」


「はい?」


 後ろから呼び止められたので、不意に振り返ってしまう。

 そこには、さっきの金髪のセミロングの赤いリボンを付けたカチューシャを装備した女の子がいたのだ。

 よく見ると、服は赤基調のエプロンドレスだ。


 そして、その子は俺が振り向いたのを確認した途端、満面の笑顔を向けてこう言った。


「やっぱり、配信で見たゼロ兄様なのですっ♪」


 自信たっぷりにそういう女の子、もといスタッフさん曰くアリスちゃん。

 くそっ、笑顔が眩しすぎて可愛いぜ……!

 というか、俺をゼロだと知ってるって事と、先ほどのスタッフさんが言ってた飛鳥財閥と合わせて考えていると、まさかと思い声を掛ける。


「もしかして、あの時の配信で応援してくれてたアリスちゃん?」


「はいなのです♪ アリス・ハーミットなのです♪」


 正解を言って貰えた嬉しさでさらに可愛い笑顔を向けるアリスちゃん。

 まさか、あの有名な【チーム飛鳥】の一人とこうして顔を合わせることになろうとは思わなかったよ……。


 しかも、役所で……。



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