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第6話
機能を果たしてないかと思われた耳の片隅で石が転げ落ちる小さな音を捉えた。
音の方向に顔を向けると、微かに動く何かを目の奥に感じた。灼けるような喉の渇きを頭の後ろの方に感じながら、歩き始めた。
微かに人間の指が見えた。
指先が赤く染まってる指で、少しずつ瓦礫を掻き分けていった。手の指先部分がでて来たので、力無く掴み引っ張ろうとすると、スッと軽い感覚と共に手首から上の部分だけがスルリと現れた。
「うおああぁぁっ」
驚きとセットで吐き気が意識を追い越して行った。
瓦礫の山に倒れ込んで、朝に食べた物は全て口から溢れ出した。
「なんなんだよっ!?
どうなってんだぁこれぁあ!?」
涙目と痛い喉から吐きだす様に、言葉を漏らした。
倒れ込んだ膝が立ち上がる事を拒否しているように、細かく震えだした。
「くそぉ、くそぉ、くそおおぉ!」
痛みや体の感覚が現実を頭へと正確に伝えている。
それが今の生きている世界なんだと理屈抜きで本能で理解している。そんな世界を理性で嘘だと信じ続けるには限界があった。