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第20話
男はじっと目を見つめると暫く黙っていた。
男が再び口を開くと、少しだけ固まった時間を割れる様に動き出した。
「その顔は気付いたみたいだな?
もう一つの異変に」
ベッドのシーツを握り締めて昨日現れた心のしこりを口にだした。
「あまりにも生き残っている人間が少なすぎませんか?」
男はメガネを触り黙って聞いていた。
「人間に限らず、生き物の気配があまりにも無さ過ぎじゃないですか?
それに、外の世界は瓦礫ばかりの壊れた街並みだけで亡くなった人や生き物の痕跡がまるで残っていない。
死体の一つも見つからないってどういう事ですか?
他にも何か知ってるんですか?」
男は再び黒縁のメガネを触ると、細い目でこっちをじっと見つめた。
「お前、この世界は何の為にあると思う?」
真剣な目で語りかける男の声は低く頭にやけに響いた。




