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 龍神はそれに是と答え、その変わり彼らの身を差し出すようにと伝えて守護神となった。


 それ以来彼ら若者は龍神と一体となり、国を守り続けたが龍神と一体になり、寿命はかなり伸びたが元は人間。やがて来る寿命には抗えない。


 死期を悟った彼らは残される龍神に『自分たちのような勇気あり、国を守りたいと願う人たちの中から選びたいと思う』と言うが龍神たちは『自分たちには人間の区別など殆どつかん。分かりやすい目印を寄越せ』と言うので彼らは龍芳国の人たちにお願いするとあの災害を覚えてる人たちは快諾した。


 そうして龍神たちへの目印として額に蓮の花の形のアザが出来る子が生まれ、それが目印になった。


 そうして初代たちは生まれてきた子供たちに自分たちの龍を預けこの世を去って行った。


 その子供たちは龍神と一体となりこの国を悪しきものから守り国内を安定させ、恵み豊かな大地へと生まれ変わらせた。


 そうして何代も龍神と一体化し、国を守り続けてきた。


 今回集められた子供たちもそういった子たちだ。


 初代と違い、アザを持って生まれた子供たちは龍神と一体化するには数年掛けて慣らしていく必要がある。


 赤子の内は力が安定する前に死んでしまう上に親たちも我が子と過ごす時間が欲しいと願ったために7歳までは親元で育て龍神と一体化するまでは国の作った屋敷で龍の力に慣らすために訓練する。


 失敗して死ぬようなことがあればすぐにアザのある子が生まれるために彼らは時に消耗品のように扱われて嫌気が差すようなこともあるが、どうしようもないことだと皆諦めてその内そんなことを感じていたことも忘れてしまう。


「あの大きな屋敷でお前たちは暮らすんだ。湖のあっち側はお前らを守るための守衛がいる。会うことはないだろうが、覚えておけよ」


 その言葉にサキと優日と八尾は湖畔に目を向けたが、そこには鬱蒼と茂る森しか見えなかった。


「7人共連れて来たぞ」

「~~~~」

「ああ、全員大人しくしてくれてたから思ったより早く着いた」


 ふとサキが気付くとおじさんが誰かと喋っている。おじさんの方へと目を向けると浮島の屋敷の門の中の誰かとやり取りをしているらしいが相手の声は殆ど聞こえない。


 かろうじて女の声と分かるぐらいだ。


「ここから先はお前たちだけになる。くれぐれも粗相のないようにな」


 そう言っておじさんが中に入るように促すので子供たちはそろそろと中に入った。


「わっ!」

「何ここ……」

「どうなってんだ」

「綺麗」


 思い思いに口にするのは門の中の景色。


 そこには様々な季節の花が咲き乱れ暖かな空気が流れている。


 おじさんにどういうことか聞こうとして後ろを振り返ればいつの間にか門はぴったりと閉じられていた。


「こちらへ」


 子供たちがそのことに何か言うよりも先に女性の声が聞こえてびくりと反応したがそういえばおじさんとやり取りをしていたと思い出して声の主を見れば白い人がいた。


 長い髪も肌も着てる服でさえも白で統一され色があるのは赤い瞳と唇のみで本当に生きているのか疑わしい。


 本当にこの人が喋ったのかと恐る恐る子供たちが近寄って行くと女性は着いて来たと思ったのかくるりと背を向けて歩き出した。


 子供たちはお互いの顔を見合せた後1人また1人と女性の後を着いてった。


 四季咲きの森を抜け屋敷へと入る。


 湖の上から見た屋敷はこじんまりとしたものだったし、浮島に着いてから門までの短い距離でも同じような見た目だったはずなのに門の中から見る屋敷は広大でどうなってるんだと驚きを隠せない。


 白い女性に伴われやって来たのは広間。足元には畳が敷かれ今まで板の床で雑魚寝をしていた面々は居心地が悪そうだったが、トオルだけは広間の奥の御簾を真っ直ぐ見つめている。


 そんなトオルにサキと雪路は見よう見まねで同じように座りカサネと白と優日と八尾はその後ろでどうしていいのか分からずに立ち尽くしている。


 白い女性はいつの間にか居なくなっている。


「な、なあ。トオル」

「みんなも座りなよ」

「でも、座って大丈夫なの?」


 八尾がトオルに声を掛けるとトオルはにこりと畳を指差して座るように促すも今度は優日が不安そうな声を上げる。


「ダメだったら僕たちが座った時点でさっきの人が戻って来るんじゃない?」

「さっきの人って龍神様なの?」

「あれは龍神ではない」


 子供たちの会話に突如降ってきた大人の男性の低く落ちついた声に子供たちはびくりと身を竦めた。


「これ、童たちが驚いているであろう。お主はもうちと気を使わぬか」


 今度は女性の声がする。


 そして子供たちの視線が御簾へと集まると御簾がするりと音も立てずに上がった。


 御簾の向こう側には七人の男女。


 五人が男性で二人が女性だ。


 皆一様に見目麗しく色素が薄いのか透き通ったような髪と目の色をしているが青や赤、緑などの髪色をした人もいる。瞳は普通の人と違い瞳孔が縦に細長い蛇のような目だが不思議と怖くない。


「ちこうよれ」 


 その中の一人の女性が子供たちに声を掛ける。


 子供たちはどうするかとお互いに目配せをしてトオルを先頭にそろそろと御簾が上がった辺りまで歩いて行った。


「ふむ、可愛い童たちだの」

「そうねぇ。色々教えがいがありそう」

「お前たちも怖がらせておるではないか」


 女性たちの値踏みするような視線と物言いにびくりと身を竦ませる子供たちを見た男性の薄い緑の髪をした男性が胡乱げな視線を向ける。


「……我々は今の龍神と一体化した者たちだ。お主たちに龍神の力を明け渡すためにここに呼んだがお主たちはまだ器が小さい。これから龍神の力を明け渡すに従ってお主たちには我々と過ごしてもらう」

「わらわは光龍と一体化した葉山じゃ。お主名は何と言う?」

「トオル」

「そうか。わらわの龍神もお主を気に入った。わらわはこのトオルにするぞ」

「好きにしろ」


 緑色の髪の男性が説明するといの一番に一番髪色の薄い女性がトオルを指名して連れて行ってしまった。


「じゃあ、次、俺な。俺は水龍と一体化した初って言う。俺はそこの橙色の髪の子! 名は?」

「優日! 優しい日って書いて優日です!」

「ふむ、じゃあよろしくな優日」


 初と名乗った薄い緑色の髪の男性はにかりと笑うと優日がこれから過ごす場所を案内すると言って連れて行った。


「次は俺でいいか? 俺は利光だ。んと、黒髪の男、名は?」

「白」

「白か。いい名前だな。俺は地龍でもある。行くぞ」


 利光はそう言うと残った面々にしっかりやれよと声を掛けて白を連れて行った。


「私はあの子がいいわ! あなたの名前は?」

「雪路です。あなたは何の龍ですか?」

「あら、この子他の子たちよりしっかりしてるかも私は月乃、龍は風よ。さ、いらっしゃい。案内してあげるわ」


 どんどん出て行く。残されたのはカサネとサキと八尾だ。


 三人の子供たちは次は誰だと不安そうな顔をしたりそわそわしたりしている。


「次は僕だね。えっと、僕ら雷龍の樹でそこの男の子にするよ。名前は?」

「八尾だ! よろしく!」

「はは 元気な子だね。よろしく、じゃあ、行こうか?」

「うん! 二人共頑張れよ」


 八尾は残されたカサネとサキに声を掛け樹と行ってしまった。


 そうして残された二人はどちらが次に呼ばれるんだろうと緊張していた。


「次はお主だぞ」

「ああ……、そこのおかっぱにする。名は?」

「……カサネ」


 中々声を掛けようとしないからなのか薄い赤の髪の男性がもう一人の男性に声を掛けるとゆったりと動き出しカサネに声を掛けた。


「カサネか善き名だ。我は闇龍の夕月。闇と付いて居るが闇は夜にも通ずる。夜がなければ人は眠る時間も分からずさ迷う。そなた夜は嫌いか?」

「いいえ。夜は落ち着きます」

「ならばよい。名は悪いかもしれぬが、闇龍とて世界に必要なものじゃ。そなたは闇龍を継いでくれるか?」

「いいよ」


 トオルが葉山、優日が初、白が利光と名乗る地龍の男性と、雪路は月乃と名乗る風龍の女性と、八尾は樹と名乗る雷龍の男性と、カサネはと夕月行ってしまった。


 一番最後に残ったのはサキ。


「ワシはお主か」


 その人は一番最初に葉山と月乃を嗜めた男性だった。


「お主の名は?」

「サ、サキ……」

「ワシは陽炎じゃ。炎龍と一体化しておる。お主は炎と言うにはちと頼りないが……ろうそくの灯りのような人をホッとさせるような炎になればいいか。着いてまいれ今日からお主が暮らす場所を案内しよう」


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