過去の傷①
僕は中学3年秋頃からいじめを受けていた。
いじめてた連中は、クラスのカーストトップ蓮上海のグループだ。
最初は些細なことだったと思う。
目が合ったとか肩が当たったとかで、僕の友達がよく絡まれるようになった。
その友達の名は杉村卓也。卓也はちょくちょく呼び出されるようになった。
最初は心配して声をかけた「大丈夫?」とか「力になれることはない?」と。
卓也は笑顔で「大丈夫だよ、別に何もされてないから」と答えていた。
その笑顔が無理してるように見えたので、僕ともう一人の友達、杉村雅広は心配していた...
それから日を追うごとに、卓也は元気を失っていき、僕たちとも絡まなくなった。
そんな日々が過ぎていって半月ほど経った頃、事件は起こった。
僕は普段置きべんをしている。
宿題のプリントも一緒に置いてきてしまったのを思い出し、教室まで取りに戻った時のことだ。
教室の後ろの方に連中はいた。
大財閥の後継者で成績優秀、運動神経抜群で表では人柄もよく、おまけに顔もいい、天が3物も4物与えたチート野郎、蓮上海。
その悪友で腕っ節が強く柄が悪い、喧嘩番長的な藤代リオン。
ヤンキーで暴走族に入ってる千堂さつき。
ギャルで巨乳、援交だオヤジ狩りだと黒い噂の絶えない竹下里香。
カーストトップ四人に卓也が囲まれていた。
僕はバレないように隠れて様子をみることにした。
「おい卓也、今日の分の上納金をさっさと納めたらどうだ」
「きゃははw上納金だってリオンがや○ざみたいで里香こわ~い」
「うっせえぞ里香!お前も少しは協力したらどうだ?」
「えーしょうがないなもう、卓ちゃんさー早く出したほうが身のためだよー。こわ~いお兄さん怒らせると、取り返しのつかないことになるからね!」
「ぼ、僕は手持ちの金や貯金もす、全て上納金として納めました。もうお金は持っていません...ゆ、許してください...もう勘弁してください」
「はぁ~おい海コイツどうするよ?もう金持ってないって言ってるけど」
「そうだなぁよっと」
海は座っていた机からおりて、卓也に近づき頭を踏みつける。
「ホントに卓也は無能だな。金がなければ作ればいいだけのことだろ?お前確かアニメやゲームが好きなオタクだったよな?そういったもの全部売り捌けばそれなりの金になるだろ」
「あーぁ海君冴えてるぅ里香ぁオタクとかいう気持ち悪い人種、生理的に受け付けないっていうかぁ卓君もオタ卒業できてお互いにウィンウィン的な?名案じゃん」
「確かにな!さすがは海だ、俺たちには金が入り、卓也はまっとうな人間になれる一石二鳥でいいじゃねぇか!なぁさつき」
「まぁな、てかそんな雑魚にこれ以上時間取られんの嫌なんだけど...さっさと金、巻き上げてカラオケでも行こうぜ」
「うんそうだね、ということだからさぁ、ほら財布だして」
無抵抗な卓也の頭を海はより一層強く踏みつける。
「ぐっ...か、海君は蓮上グループの後継者なんだよね?ぼ、僕みたいな貧乏人から取らなくてもお、お金をたくさん持っているんじゃ...」
「あぁ”てめぇこの俺に金出せって言ったのか?」
海は口調がいきなり変わり鬼の形相になる。
「卓君、勇気あるぅ里香でも怖くてそんなこと言えないよぉ」
「はぁ~バカなやつだぜ海に逆らって、おとなしく払っておけば痛い目に合わなかったものを第一てめぇはATMだろうが!無利子、無担保、無期限、無制限てのが唯一の売りだろ?」
「ホントバカな奴」
里香はシクシクと大げさに泣きまねを始め、リオンは威張り散らしてのたまう、さつきは心底軽蔑したような視線で一瞥して、興味をなくし携帯をいじる。
それぞれが思い思いに勝手な行動をとりだす。
海は頭を踏みつけてた足をおろしたあと、ゆっくり卓也の隣まで移動して、下から思いっ切り腹を蹴り上げた。
「ぐはっぁぁ...ごほっごほっ...ご、ごめんなさぃ許してぇ」
「うるせぇ!ゴミの分際で逆らいやがって、リオン二度とこいつが口答えしねぇように袋にするぞ」
「そうだなぁしっかりと体に恐怖を刻みつけてやらねぇとな!おらぁぁぁ」
「やっばぁ卓君リンチされてるじゃんww」
「情けない奴」
僕は震えていた...なんで同じ学校のクラスメイトに同じ人間にこんなことができるんだ...
まるで奴隷か家畜のようじゃないか...こんなこと人として、許されることじゃない...
僕は怒りのままに無我夢中で飛び出した。
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!」
このときは僕は深く考えていなかった...
この時の行動が後にどういった結果をもたらすのか...
この世がいかに理不尽で残酷な世界なのか...
どれだけ崇高な心や強い正義感を持っていても圧倒的な力!
そう暴力の前には何の意味もなさないことを...




